#22.5 先駆者・斎条霖の見解
「お前、最近学校楽しいか?」
「……何、藪から棒に」
莉樹から情報を聞いた三日後。この日の夜も霧也はうじうじ考えながら出てこない解決策に頭を悩ませていた。おかげさまか、眼前に広げた課題も一向に進む気配はなく、解答欄は空白しかなかった。
そんな中、ソファに座りながらアイスをほおばる姉、
「まぁ、ぼちぼち?友達は出来てるし、みんないい子だし。不満はない」
「ふ~ん、そ」
「……それだけ?本当に急だな。どうしたんだよ」
霧也からの抗議の声に、霖は腰を上げて霧也の目を見る。その目は何かを眺めているかのような目で、霧也の懐疑はますます深まるばかりだった。何を見透かされているのかと考えている最中、霖は口を開く。
「いや、なんか最近難しい顔してたから。なんか悩んでるのかなぁって思っただけ」
「……まぁ、最近色々あって」
「女絡み?」
「別にそんなんじゃ」
「ごまかしきれてない。顔に書いてるよ」
「うえっ!?」
さらりと言う姉の言葉に従うように顔をペタペタと触る霧也。残った棒を捨てた霖は、「ホントに書いてあるわけないでしょ」と霧也の前に座る。それから頬杖をついて、斎条霖。
「で、何があったの?ちょっとだけなら聞いてあげなくもないけど」
「なんで自分から聞いといて上からなんだよ……」
姉の謎スタンスに溜息をついて、霧也は渋々話し始めた。
「その……悩みを抱えてる女の子がいて、俺も事情は詳しく知らないんだけど、結構長い間悩んでるらしくて。それでその子の友達が色々頑張ってるから、俺も力になりたいなぁ、と」
「へぇ……霧也もそういうこと考えるようになったか」
「……どういうことだよ、それ」
「成長を噛み締めてるんだよ。……なるほどね」
俯いて少しばかり考えてから、霖が顔を上げて目線を向けた先は霧也ではなく、窓の外だった。物思い、ノスタルジーにふけるような霖を見て、霧也は何となく思春期の中学生を見るような気分になった。
「多分ね、今の霧也が考えても答えは出ないと思うんだよね」
「は?どういうことだよそれ」
「今の霧也が答えを出すには経験が少なすぎる。多分相当長く悩んでるなら、ちょっと考えただけで解決策は出ないだろうね」
「そうか……やっぱりか」
悩んでいる自分が馬鹿馬鹿しく思えてきて、気を落として俯いた。そんな霧也を見かねたのか、霖は「でも」と続ける。
「もしかしたらその子、独りぼっちかもね」
「独りぼっち?クラスでも人気あるって聞くけど」
「そういうことじゃなくて、心の中ってこと。……長い間悩んでると、孤独感ってのがどんどん大きくなっていくもんなんだよ。特に女の子は」
「孤独感か……。ちょっと、考え直してみる」
「う~い、がんば~」
軽い応援にひらりと手を振ってリビングを出る霧也。大きな壁を前に気圧された様子のない弟を見て、霖は改めて成長を思い知らされた。
「そっか……お前ももう、前に進んでるのか……」
霖は勝手に一人取り残されたような気分になりそうで、髪を払うように首を降ってその気を追い払った。
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