SS 春谷渚乃は考える。
霧也や妃貴が図ったような青春を謳歌する中、春谷渚乃は悩める少女であった。周囲の人間に溶け込めているかという不安と、友人を見て感じる自分との差で覚える焦燥と、その他諸々。減速すれば今に自分だけが置いて行かれて良そうな重圧を感じる日常は、少しばかり退屈だった。
今日もベッドに仰向けになって視界に映る白い天井を見ては、物思いにふける。学校での自分のキャラと、周囲からの目線。基本的に人間関係についてを深く考える渚乃は、自宅にいる時は普段の生活しか目を向けていない者には別人のように明るみを失った顔をしていた。
(私は、上手くやれているんだろうか……)
渚乃はクラス内の男子からは入学当初から「なんかめっちゃかわいい女子がいる」とトップクラスの人気を獲得しているが、人気である理由は容姿だけにとどまらず、性格の良さにも結び付くものがある。
愛想が良く、優しく、人当たりが良い。人気に胡坐をかくような真似はせず、普段からおしとやかで凛としている。そんな中で時折見せる童心に還ったようなリアクションが、渚乃の人気の最たる要因であった。
だがこれはあくまで
社交的仮面を被る理由も、そのせいであれこれ悩む現状も、すべて幼いころに言われた賞賛の結果である。賞賛され、定義され、失望された過去が生み出したのが今の『春谷渚乃』であった。そしてそれを自覚しても尚前進する気の起きない自分を、渚乃は酷く嫌悪していた。
(なんでこうなっちゃったかな……なんて考えてもどうせ、治らないんだろうなぁ、これは)
考えることを諦め、部屋の電気をつけて後味の悪い眠りにつく。この悩みのスパイラルから抜け出せるのだろうかと、そんなことを考えながら。
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