第9話 怒ってる
僕は、怒っている。
僕の身に危険が迫っていることを知っているにも関わらずバッファルはゼーフの元に連れてこられた。
そんな、張本人が目の前に現れた。
「おい、バッファル」
「お、エルクじゃないか。可愛い服着てどこかにお出かけするのか〜」
「違う。僕は、お前のせいでゼーフに身包み剥がされて無理矢理に女の服にされたり、なんやかんやで僕の服が全部没収されたり色々合ったんだからな!!」
僕は、昨日のことを思い出し涙目になりながら訴えかけた。
「ごめんって。俺も、ゼーフに借金してるんだよ〜お金借りている身分として逆らえなくてな〜」
この男、思った以上に最低だ。四天王になると魔王様に直接給料をいただくことができた。給料は、魔界で3ヶ月ほど贅沢して暮らせるほどの給料をもらえる。だいたい、金貨10枚ほど貰えるのにも関わらずゼーフから借金!?
やばすぎるだろ。
「何に使っているんだ」
「アイドルの推し活にかなりお金を使ったんだよ。まあ、エルクが心配することがないよ。たまたま、アイドルのライブとかが重なって一時的に借りただけだから。心配すんなよ」
「そう....じゃなくて。たとえ、逆らえないとはいえ、僕を巻き込む通りがないだろ!!」
「ん〜そうかな〜」
うざい。昔から、能天気だった。こいつは、何を考えているかわからない。だから、嫌いだ。
今も、とぼけた顔をしている。
「じゃあ、お詫びとして人間界のアイドルに連れていくよ」
「別に連れて行かなくていい。謝って欲しいだけだ」
「いいから、いいから」
っと、僕は、再びバッファルにタルを持つように抱えられ人間界のアイドルを見ることになった。人間界と魔界は扉で繋がっている。
なので、数分あれば目的の場所に着くことができる。この扉を人間界で攻めるために活用できないか?っと、昔考えてみたものだ。
まあ、いっぺんに運べる人数が限られているので無理なのだがな。
「よ〜し、着いたぞ〜」
人混みが多い場所に連れてこられた。人々は、なぜ集まりアイドルを待っていられるのだろうか?
それほど、いい物なのだろうか?
「よっし」
僕は、バッファルにアイドルが見えるように肩車された。ふむ、最近は見下ろされてばかりだったからな、偶には僕が見下ろすのもいいな。
っと、余韻に慕っていると、奥の方から大きな音と共にアイドルがステージに上がってきた。すると、集まった人たちは大声で喜んだ。
下にいるバッファルも『アキにゃん!!』っと叫んでいる。あれの何がいいの?ただ、顔が整って可愛いだけでは無いか?それだけで、何がいいと言うのだ?
すると、片手に持っていたマイクを口元に当て喋り始めた。三人グループの真ん中にいる子がリーダーなのだろう。一番しゃべっている。
「こんにちは〜今日は昼にライブをします〜いつもは、配信でしか会えない私ですが、今回は生で歌う私の歌う姿や生の歌声を楽しんで行ってください!!」
「「「よろしくお願いします」」」
そういい、大きな音量の音楽と歌い始めた。歌いながら、体を動かしている。あれが、ダンスなのだろうか....
*****
歌のライブが終わった。こう、言葉では表すことができない。なんか、高揚感に僕は包まれている感じがする。
最高に楽しかった。
少しだけ、バッファルや魔王様達がアイドルにハマる理由が少しわかった気がする。
こんな、人々が心を一つにしてグループを応援や楽しそうにしている。これは、実質的に人を操っている一種の催眠にかけていると言ってもいいのではないか?
だから、魔王様は僕にアイドルをやるように僕の体を変えたのか。
「どうだった〜アイドル最高っしょ」
「うん、最高だった。なんで、魔王様が僕にアイドルをやるように言ったのか少しわかったよ」
「そうか〜俺も役に立てたか。じゃあ、ゼーフの部屋に無理矢理連れていったことはちゃらな」
「ま、まあ、満足できたからいいよ」
「俺も、なんか今日ややたらアキにゃんに目が合った気がして嬉しかったな〜」
「アキにゃんって、誰なの?」
「胸の大きな子」
僕とバッファルは満足そうな顔をして魔界に帰った。
******
「ねえ、ねえ、肩車されてた子可愛くなかった?」
「うんうん。わかる。可愛すぎて、あの子のことずっと見てた」
「絶対に、アイドルとかやった方がいい可愛さ」
「お兄ちゃんと、来てたのかな〜」
「満足そうな顔してて、私まで嬉しくなっちゃた」
「だね。次の活力になる」
三人のアイドルグループ『にゃんずっち』アキ・サラ・アオ達がライブ終わり楽屋でやたら可愛い白髪の幼女について盛り上がっていた。
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