第8話 没収

 目を覚ました。急に眠くなり、ゼーフに持ち上げられた所までは覚えている。

 目を覚ましたら、ベットの上だった。


「ふぁあ〜」


 ....隣には、ゼーフが眠っていた。何時だろう?っと、スマホを見てみると朝の6時だった。


「あ、お兄ちゃんおはよ〜」

「なんで、急に僕のことをお兄ちゃんって言うんだよ」

「だって〜お兄ちゃんが四天王に選ばれて威厳の為って言って、私に『お兄ちゃん』って、言うの禁止にしたから。だけど、今は女の子になって四天王を辞めさせられたでしょ〜仕方ないじゃん〜反動だもん。あ、でも、今は妹だからエルクちゃん?お姉ちゃんって呼んでもいいよ?」


 全く。実は、ゼーフは俺の妹である。だけど、妹よりも後に四天王に入る事になった。

 ゼーフにお兄ちゃんとか言われたら、妹の方が早くに四天王に選ばれたんだ〜とか思われてしまう。


 だから、嫌だった。嫌だったから、ゼーフには、僕のことをお兄ちゃんではなくエルクと呼び捨てで呼ぶよう言い聞かせていた。


 この事を知っているのは、バッファルやアルベット・魔王様だけだ。


「別に、四天王を一時的に辞めさせられただけ。もし、アイドル活動が成功すれば戻れるって言ってから」

「そうなんだ〜」

「それより、アイドルまであと6日しか無いんだが?アイドルって何をすれば良いと思う?」

「それは、歌って踊ってとか?最近は、配信するとかもあるよ〜お兄ちゃんって、ほんと人間界の事については全く知らないな〜」


 当たり前だ。敵のことを深くまで知る意味がない。今は、こんな身体ではあるが僕は人間界の征服を諦めている訳ではない。


「それより、なんで僕を拘束して無理矢理下着を着けたりしてきたんだよ」

「だって〜お兄ちゃんが目の前でか弱い幼女になったんだもん〜魔王様の前だし、抑えて抑えて抑えてたらその欲求が破裂しっちゃて〜つい」

「その欲求を自分の部屋で発散する為にバッファルに無理矢理連れて行くように言ったのか」

「そうそう。お兄ちゃんさすが〜」

「お兄ちゃんって言うの辞めてくれない?」

「じゃあ、エルクちゃん?それとも、妹ちゃん?お兄ちゃんも私のことお姉ちゃんって呼ばないとダメ」

「分かった。お兄ちゃんでいい」


 流石に、僕が妹にお姉ちゃん?そんな事は言いたくない。なら、お兄ちゃんと呼ばれるこに我慢しよう。

 それより、バッファル。僕がどんな危険な事になっていたのか、分かっていたのに、ゼーフの部屋に無理矢理連れて行くとかクズ野郎か。


 今度合ったら、説教してやる。


「それより、お兄ちゃん。私が作った服着てくれて嬉しいよ〜」

「それは、アルベットが僕のことを心配してか布団から無理矢理出して、風呂に連れて行かれたんだよ。その時に部屋にある服を持って行ったから着る物無いし、仕方なく着てる感じだよ」

「え?お兄ちゃん。アルベットさんとお風呂入ったの?良いな〜今度一緒に入ろ。それより、お兄ちゃん。私が作った服着なかったんだ〜」


 ゼーフの顔が怖い。もし、ここで僕が着なかった。っと、言ったら何をされるか分からない。

 

「き、着てるよ」

「はい、嘘。お兄ちゃんが寝ている間に私はお兄ちゃんのお部屋に行きました。すると、どうでしょ〜私が作った服が綺麗でした」

「そ、それは、洗ったから....」

「はい、また嘘です。洗った感じもありませんでした〜私は裁縫のプロです。なので、着ているのか着ていないか分かるんです〜」

「お、おい」


 ゼーフが僕の方に段々と近づいてくる。僕はベットの一番奥まで追い詰められた。


「は〜い。なんで、私の作った服を着なかったんですか〜?」

「それは、なんかフリフリが付いていたり女の子っぽかったりとかしてたし....そんなの、恥ずかしい」

「今のお兄ちゃんは女の子じゃん。なので、私はお兄ちゃんの服を全部持って来ました」


 宝箱の方を指をさした。宝箱の中には、クローゼットの中にあるにあるはずの服が全部入れられていた。

 

「え?」

「はい。お兄ちゃんの服全部没収です。お兄ちゃんのクローゼットの中には、私が作った服を入れて置きました」

「か、返してよ....ゼーフ...」

「だ〜め。もう直ぐ、お兄ちゃんアイドル活動するんでしょ。なら、男物の服を着てたらおかしいじゃん。お兄ちゃん練習だよ〜♡」


 僕は、妹にマウントを取られた。僕は、妹より弱くなってしまった。

 そう実感せざるにはいられない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る