第3話 号泣

 アルベットの部屋というより服が多くあり散乱している。まるで、服の倉庫のようだ。


「ここは、私の衣装部屋よ」

「倉庫じゃなく?」

「違うわ。それより、だいぶ体が小さくなったからズボンが脱げて上の服だけになってるじゃない」


 衣装部屋には、体全体が写る鏡があったので、鏡を見てみるとシャツだけになっていた。魔王様に急に女性の体にされ慌ただしく全くて気づかなかった。


 とは言っても全身が隠れているし、自分の部屋には子供用服がないのでこれで過ごすしかない。


 僕の服は、四天王が集まった会議室のところに落ちていると思う。あとで、自分の部屋に戻しておこう。


「じゃあ、色々と見て行こっか。これとかどうかな?私の古着だけど?」


 僕に持ってきたのは、フリフリした女性用の服。アルベットは、昔は破壊神とか呼ばれていたのだが、子供の頃はこんな可愛い服を着ていたのか。


 まあ、今ではアイドルとして筋力を落とし細く可愛らしい服を着てアイドルをやっているがな。

 まあ、僕も今の立場では言えたもんじゃない。


 一応試着はしたが男としてのプライドが許さないのか、とても恥ずかった。


 それに、何故かアルベットが僕の事をマジマジと見てくるのだが。


「恥ずかしいから嫌だ」

「ええ〜可愛いのに」

「男用の服とかないのか?」

「無いよ」


 それはそうか。僕のサイズに合うサイズの服を持っている事自体が奇跡みたいな物だからな。


 仕方がない。僕は、自分の服を着て過ごすしかないな。


「じゃあ、僕は自分の部屋の服を着る。まあ、このシャツだけでも全体が隠れるから良いと思うからな」

「それだと、痴女よ?」

「いやいや、僕は元男だよ。元男にそんなふうな目で見てこないだろう」

「いい?エルクちゃんは可愛いのよ。自覚を持ちなさい。もし、そのまま廊下を歩いてみさない。即刻、連れ去られるわよ!!」

「そ、そうなのか?」


 すごい圧力で、僕を説得してきた。今の非力な身体では確かに襲われては抵抗する事が出来ない。

 なので、服を着て武装しろと言っているのだろうか?


 まあ、確かにこれでは少し寒いと感じている。ここは、恥ずかしさを我慢してこの服を着るしかあるまい...



「わかった」

「はぁああ〜可愛い〜」

「?」

「今日は、私と寝る?」

「嫌だけど」


 なんだ?急に寝るとか誘ってきたのだが?怖すぎる。

 僕は、咄嗟にアルベットの衣装部屋から急いで飛び出し誰かにぶつかった。


「お、エルクちゃんじゃないか。可愛い服を着て似合ってるぞ〜」


 バッファルに見下ろされている屈辱でしかない。僕の姿を見てどうせ心の中で笑っているのであろう。

 早く自分の部屋に帰ろう。


「なんだ、バッファルか。僕は、これから自分の部屋に戻るんだ。だから、そこをどいてくれないか?」

「姿形は変わったのに、生意気な態度は変わらんな〜」

「や、やめろ!!離せ!!」


 僕は、抵抗するが抵抗虚しくバッファルにお姫様抱っこという屈辱的な持ち方をされて、どこかに連れて行かれた。

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