第5話 生徒会長の可愛いところ


「お邪魔しま~す」


 生徒会室の扉を開けてからそう言う。思い返してみれば、普通は扉を開ける前に言った方がいいのだろうか。


 朝のホームルームが終わり休み時間に入ると、案の定暖翔さんの周りには人が集まっていた。外見がまんま外国人系美少女なので、皆の目に留まるのも納得だ。


 どこ出身かを聞いたり、髪の手入れの仕方を教えてもらったりと、質問攻めに会っていたが、暖翔さんはまんざらでもなかったようで嬉しそうに頬をほころばせていた。

 横に知人がいると暖翔さんは話しにくいかなと思い、俺は生徒会室まで足を運んだ。


「木戸先輩、久しぶりだね」


「ああ、甘田さんは変わらずだな」


「それ、身長伸びてないってけなしてる?」


 甘田会長が俺のことを睨んでくる。会長は身長が低いことを気にしておられるので、身長関連の話をすると、すぐにムーと不機嫌になる。

 俺的には相変わらず元気でよかったですという意味だったのだが。


「冗談だ。生徒会室に来たってことは何か用があるんじゃない?」


「あぁ、今日転校生が来て、この高校のパンフレットもらいたいなって」


「はいは~い、そこの棚の上から二段目にいろいろと入ってるよ」


 会長は生徒会室の壁に敷き詰められている棚の中の一つを指差す。

 この高校は様々な地域から生徒が登校してくるため、転校生もかなり多い。なので、転校生に向けた学校説明のパンフレットを生徒会が作成しているのだ。


「サンキュー、というか本当にずっと生徒会室いるよな」


「まぁ、激務だしね。それ言うなら書記の木戸先輩にも手伝ってほしいんだけど」


「書記って言うけど、会長が俺のこと指名したんだろ?」


「まぁね」


 なんでか分からないが、今年の生徒会は書記の立候補がいなかった。しかし、書記をなくすわけにもいかないので、生徒会長が指名するのだ。

 それで選ばれたのが俺である。なんで?


「しっかし、全然、授業受けないで学年一位ずっとキープしてるのは頭おかしいわ」


「勉強は怠ってませんので」


 甘田莉子あまたりこさんは生徒会の激務ゆえに授業を受けられない状態が続いているのだ。教師たちはそこまでしなくていいというが、会長が大丈夫と突っぱねているらしい。

 このお方、授業を受けずに定期テスト五教科500点なんて取ることもあり、まさしく天才児なのである。


 そんなことから俺の後輩にあたる一年生なのに、尊敬の念をこめて甘田さんと呼んでいる。


「これから行事も増えると思うから木戸先輩もしっかり生徒会手伝ってよ?」


「善処する」


 パンフレットを手にとり、教室へ帰ろうとドアへと足を運んでいく。

 すると、ダダダダダと廊下を全力疾走で駆ける音が生徒会室まで響いてきて......


「莉子ちゃああぁあぁあぁあぁあんんん!!」


「げっ」


 生徒会室の前まで来ると、90度急回転し、そのまま一気に直進して甘田さんとの距離を詰める。

 そして、パクッと優しく飲み込むかのように抱きかかえる。


「莉子ちゃん莉子ちゃん誰かに襲われたりしなかったしなかった?綾鷹くんとかよく莉子ちゃん襲いそうだから」


「あの~、俺そんなに影薄い?」


 俺に気づいていない様子で、甘田さんに襲われてないか確認をし始める。


「あ、綾鷹くんお久しぶりです。元気でしたか?莉子ちゃん襲ってませんか?」


「そんな当たり前のように聞かれても......。ただ話してただけだぞ」


 こいつは指折りの甘田さん大好きウーマンの霧島愛莉好きりしまありす

 俺と同じ二年生で、副会長を務めている。こんなやつが副会長で大丈夫か?と思うが、意外と仕事はできるらしい。


 甘田さんは現在進行形で撫で繰り回されて「うぅ......」と苦しそうに声を上げ、小さい体を精一杯動かして逃げ出そうとしている。

 

「木戸先輩......助けて......」


「俺にどうしろと」


「ほら、綾鷹くん!!莉子ちゃんが助けを求めてるんです!!助けないと!!」


「いや、霧島先輩がやってるんですよ?」


「あ!!確かに!!」


 霧島は甘田さんにそう指摘され、大きく納得したようでピキーンと効果音を鳴らし、甘田さんを解放する。


 解放された甘田さんはなんだか魂が抜けたように疲れ切っており、髪も撫でられまくった結果ボサボサになっている。

 そして、甘田さんはヘラヘラとしながら、ソファに座り込む。そして、当然かのように霧島が隣に座る。


「相変わらず大好きだな」


「はい!!莉子ちゃんが言うならよだれも飲みますし、足も舐めますし、膝にも乗せてあげます!!」


「最後のは霧島がやりたいだけでは?」


「はい、そうです!!ほら莉子ちゃん!!私の膝が空いてますよ!!」


 霧島は鼻から息をフンスフンスと吐きながら、膝をポンポンと叩く。そうしたら甘田さんはよろよろと霧島の膝の上へと到達し、座る。


「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!い゛い゛に゛お゛い゛た゛な゛~!!」


「ぎゃ~~!!!だずげで~!!」


 霧島は甘田さんを膝に乗せ、においを嗅がないと落ち着かない体質らしく、思いっきり吸っている。

 おそらく、これをしないと霧島が正常に戻らないと甘田さんは知っているようで、膝の上に行ったのだろう。


 甘田さんは短い両足をバタバタさせて必死にもがいており、後ろでは「髪ちょっとくらいなら持って帰ってもいいよね?いいよね?」と変態染みたことを言い出している。


「はぁ~小っちゃくてかわいい~!!」


「そ、そうだもんね。私小っちゃいもんね。む~」


「何言ってるんですか!!そこが『か・わ・い・い』んですよ!!」


 小さいと言われ、一瞬ムーとしたが、あふれるほどべた褒めされた結果、案外嬉しそうに頬を膨らませている。


「甘田さん大変だね?」


「あはは......愛してくれる証拠なんだろうけどね......」


 俺はそう、甘田さんに声をかける。


「......はっ!!」


 ☆霧島愛莉好の脳内☆


莉子ちゃん →♡→  綾鷹君

 綾鷹君  →♡×→ 莉子ちゃん

  ↑

けしからん⇒好きにさせるべき

     ⇒莉子ちゃんが選んだ人ならOK


 ☆終了☆



「ウワー!!ヨウジヲオモイダシター!!」


「うひゃぁ!!」


 膝に乗せていた甘田さんを軽々と投げ飛ばすので、俺がキャッチする。重量はほとんど感じないほど軽いので、これなら投げられるかもしれない。

 ※人を投げてはいけません。


「アー、ソウイエバ、コ●ドームはリコチャンのツクエニアッタナ~。ソレと、ココハメッタニヒトキマセンカラ!!」


 カタコト台詞を吐くと、そのまま来た時と同じスピードで生徒会室から離れていった。



「・・・木戸先輩......する?」


「しません」


 そう即答する紳士な綾鷹くんなのであった。



 ■次の休み時間


「綾鷹くん!!会長とのアレどうでした?!」


「※してません」




 ◆ ◆ ◆


 ご清読ありがとうございました!!


 自分で書いてて、霧島さんが出てきたあたりから、僕は頭がおかしくなったのか?と自分に疑問を持ちながら書いてました。

 少しでも面白いと思ってもらえたのでしたら、フォロー、応援してくれるとうれしいです!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る