第4話 義妹と転校生
「ひゃっ、ちょっ、そこっ......ぁっ.....お兄ちゃぁん......」
「卑猥な声出すな」
しまったカーテンの隙間から流れ出る太陽の光を感じながら、清々しい朝を迎えたかったのだが、妹系連行犯にいつの間にか連れていかれたため、こしょこしょから朝が始まる。
妹とは思えないほど不埒な声を発するので、こしょこしょをやめることを余儀なくされる。
「もっと、していいんですよ?」と上目遣いを駆使する泉菜の事を一旦無視しておこう。
「とりあえず、何で俺が泉菜の部屋にいるんだ?」
「......昨日、兄者が暖翔さんとイチャコラしてたじゃないですか......」
「まぁ、してたのか......?」
まぁ、はたから見たら出会って初日であ~んしてる良からぬ者に見えるのかもしれない。
泉菜は両手の人差し指を合わせて、微弱に体をくねらせながら、もじもじして話を続ける。
「それで、ずるい......と思ったので......。父上と協力して兄者を私のベットに寝かせました」
「なるほど。......なるほど?」
最初は一回聞き流したが、よくよく考えると、結構まずいことしている。それに父さんが協力してるのは、かなり意味がわからない。
まとめると、泉菜は俺と同伴を希望していたことになるのだろうか。
「でもなぜか、部屋に戻ったら、暖翔ちゃんが先に兄者が寝てるベットで寝ていたんです......」
「つまり。暖翔さんが悪いと?」
「悪いってわけじゃ、ないですけど......泉菜も兄者に甘えたかったです......」
クソォ、可愛い。可愛いは世界のすべてを許し、また許される運命にある。よって、これは注意だけをし、許さなければならないのだろう。
俺は、甘えたい申す泉菜の頭に向かって手を伸ばし、本当に久しぶりに頭を撫でる。
泉菜の髪は寝起きなのに驚くほどサラサラで、光を薄く反射する真っ黒な髪は赤ちゃんのような幼さと、聖母のような穏やかな包容力を感じさせる。
「泉菜も我慢したんですよ......」
「度が過ぎてるけど、俺を慕ってくれてる証拠だ。ありがとな」
「はい......」と小動物のように声を漏らす。泉菜の顔はうっすらと朱色に染められていた。
■ ■ ■
「綾鷹~、この英語の問題教えて~」
「雄二、俺英語苦手なんだが」
「知ってる、だから聞いたのだ」
こいつは
今はホームルーム前の空いた時間であり、どうやら雄二が英語の問題を持ってきたようだ。
俺は英語以外はある程度できるのだが、英語はめっぽう弱いので教えるとかほとんどできない。まぁ、問題演習の経験を積めるだけありがたい思おう。
「というかここ、昨日の英語の授業でちょうどやったところじゃないか。授業聞け」
「ふふっ、英語なんて使わないんだから聞かなくてもいいのだよ」
「You're not smart enough to do that.」(そんなんだから頭悪いんだよ)
「Oh!! I may be a refrigerator!!」(ああ!俺、冷蔵庫になったかも!)
と、こいつはこんな感じで返してくるほど勉強に弱いのだ。というか、雄二が冷蔵庫かもしれない状況ってどんなだよ。
ちなみに、
「はぁ、雄二よくこの高校入れたよな」
「よく言われます。気にしてるのでやめてください」
この学校はある程度の進学校だと思っている。中学時代、中学一年生の頃から受験期の事を考えて勉強していたら、余裕というほどでもないが偏差値の高い高校に入学することができた。
どんな高校にもどうやって入ったんだと思うほどの生徒はいるものだ。
しかし、雄二は定期テスト五教科最低点数18点の補修授業代表者であり、高校受験時に高校側に賄賂でもしたのかと疑われている。
「そういえば、もうすぐ夏祭りあるな。一緒に行こうぜ」
「英語の問題はいいのか?」
「たまには妥協も大切だよな」
「あ、はい」
この高校は夏休み前から校庭は部活で使われるのため、夏祭りがなく、昔通っていた中学校の夏祭りに行くことができる。毎年、雄二と行ったり泉菜と行ったりしていた。
「泉菜と行くかもしれないからあとでラインするわ」
「いいよな~、仲のいい妹ちゃんがいるのは」
「それはそうだな」
雄二は俺が高校を休んだ時とかにプリントを届けに来てくれるので、そのプリントを受け取ってくれる泉菜と面識があるのだ。
俺は体調を崩しやすく、よく学校を休むので、雄二と泉菜は軽い世間話ができるほどの仲になっているらしい。
「でも、雄二も妹いるだろ」
「いるけど、昔喧嘩しちゃってそれっきり」
儚く目を地に落としたままそう吐き出すので、まずいことを聞いてしまったと反省する。
キーンコーンカーンコーン
「じゃ、そういうことで」
朝のホームルームの始まりを知らせるチャイムが鳴るので、雄二は自分の席へと戻っていく。と言っても俺の一つ前の席なんだけどな。
そういえば、暖翔さんはどこのクラスになるのだろう。
暖翔さんは妹と言っても、俺と同じ高校二年生で同級生である。
俺たちの家に来る前の病院にいる時に、父さんとある程度の話はつけていたらしく、転入試験もすでに受けていた。
なので、今日から学校に転校してくるはずなのだ。さすがに俺と同じクラスなんて運のいいことはないだろう。
「突然だが、転校生を紹介する」
先ほどまで陽キャ女子と話していた担任の先生が教卓に立ち、生徒たちにそう宣言する。
ガラガラと教室の扉をあけ、入ってくるのは茶髪と金色の瞳を持った穏やかで温もりのある美少女。しかし、俺は見たことのある人であり、
「神沢暖翔です。よろしくお願いします」
■ ■ ■
軽い自己紹介が終わった後「可愛くない?」とか「俺、告白しよっかな」などわちゃわちゃした雰囲気になる。
先生も、高校生が転校生にロマンがあるのを知っているようで、生暖かい目で生徒たちを見ていた。
それが落ち着いてくると先生が話し始める。
「初日で何もわからないと思うから、助けてやってくれよ。......席は後で用意するが、今は空いている席に座ってくれ。あ、そうそうあの冴えない木戸ってやつの隣だ」
なんやと?まぁ冴えないは自覚しているんだけども。
暖翔さは上品に歩いて俺の隣の席にチョコンと座る。顔を見ると、やはり美人で、クラスメイトの特に男子生徒は見惚れている。
俺は一日一緒に過ごした結果、暖翔さんの美人オーラ耐性を獲得しているのでまだ平常を保てている。
「あ、あの、木戸さん」
「ど、どうしました?」
暖翔さんが「ちょっと......」とこちらへ手招きするので少し耳を暖翔さんの方へむける。
「えっと、面倒なことになるかもしれないので、ここでは他人のフリしてもらえますか?」
「あ、はい。了解しました」
そう話したあと前を見ると、にやにやしながら「へぇ~」と言い、俺のことを見る雄二に羞恥心を覚え、俺は目をそらすのであった。
「へぇ~、ふぅ~ん、はぁ~ん」
「黙れ蘇我氏」
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