第3話 焼肉と毎月義妹の話
突如ポンコツお父さんから告げられた、義妹ができるのはこれで終わらないというセリフに耳を疑っていた。
「家族ができるたびに焼肉食べるのそんなにいやだったのか?確かに、胃もたれするもんな」
「そこじゃねえよ。後それは父さんが年取ってるだけだ」
「うっ!!心にグサっときたのでちょっとトイレに......」
説明するのが面倒なのかトイレの逃げ込もうとする父さんの服をつかみ、止める。すると父さんの口から「逃げさせろ卑怯者ーー!!」という叫び声が庭に響く。
というかなんで心にグサっと来たらトイレに行くんだよ。
「そうですよ父上!!これは大事な問題です!!」
「俺は!!子供たちを助けたいと思っただけなの~!!うぅ~」
と、父さんは子供のような声色で言う。
「キッツ......じゃなくて、ちなみにあと何人くらい?」
「......ひ、一人です......」
「ほうほう、ほんとは?」
全く自信がない声色で言うので、追撃をかけてみると、
「三人くらい?あと、数か月に一回の頻度で来るよ」
と案の定、ふざけるように軽いように真実を明かしてくる。
「はぁ。まぁ大丈夫だと信じよう。悪いのはその子たちじゃなくて父さんだし」
「うぅ。返す言葉もございません」
見るからにシュンとなり、上目づかいで俺のことを見て来る父親を見て、ぶん殴りたくなるが、泉菜の前なのでやめておこう。
「じゃあ、皆乾杯するからジュース入れるね?」
母さんが言うので、俺と泉菜、そして遠慮をしながら暖翔さんはオレンジジュースをコップに注いでもらう。父さんは懐に隠してあったビールをきょろきょろしながら取り出した。
いつもなら注意するところだが、まぁ今日くらいはいいだろう。
「じゃあ、神沢暖翔さん改め、木戸暖翔さんとの新たな出会いに、乾杯!!」
■ ■ ■
「ふぅ、なんだかドッと疲れたな」
新しい家族ができたり、焼肉をしたりと、今日はなんだかいつもの数十倍は疲れてしまった。今思えば、楽しみにしていたラノベも手につかないどころか思考から一切なくなっていた。それほど楽しむことができたのだろう。
父さんに俺のアイスを食った罰として買いに行かせたアイスを取ろうと、冷蔵庫を覗くとなんとアイスが二つも入っていた。しかもどちらも
「綾鷹さん、その、今日はいろいろとありがとうございました」
気づいたら横に暖翔さんがいたようで、声をかけてくれた。
横に並んでみてみることが少なかったので、改めて見てみると背は俺よりも頭一つ分くらい小さく、非常に可愛らしく目に映った。
俺は人の目を見て話すのは少し苦手なのだが、この人の目はきれいで、いつまでも見ていたいような魅力が心を刺激した。
「いえいえ、楽しんでもらえたようで何よりです。何か俺に用が?」
「いえ、泉菜ちゃんがお友達と電話をするらしくて。ベランダに出てくださったのですが、部屋を離れた方が話しやすいかと思ってこちらに」
泉菜は俺のことを兄者と言っていたりするが外では普通なので、友達が多く幼いころからの親友もいるので、よく夜に恋バナなどの電話をすることがあるのだ。
そうなると、暖翔さんは行くところがないのでリビングに来るのは当然だろう。
「あ、そうだ。暖翔さん、ちょっといいですか?」
アイスを持ち、暖翔さんをリビングのソファに連れ影木、暖翔さんをソファに座らせる。さすがに俺が隣に座るのはいたたまれないので、新しい小さめの椅子を小机を挟んで置き、そこに座る。
「はい、どうぞ」
そう言って、俺は手元の二つの
「え?そ、そこまで甘えることはできません。それにご自身のものなのであれば、綾鷹さんが召し上がって下さい」
「いや、泉菜は友達と、両親はその二人で二次会をしていて、ちょっと寂しいなと思ってたので。よかったら一緒してくれませんか?」
父さんはすでに酒が入っているはずだが「まだ足りない!!もっと!!」と母さんを連れて行った。泉菜は友達と夜の景色を堪能しながら話し、楽しんでいる。
なので、一人ぽっちで小説を読むのは少し寂しかったのだ。
「ほ、本当に皆様に良くしてもらって、申し訳ないです。綾鷹さんも本当に何でも言ってくださいね?なんでもしますから」
なんだか美少女になんでもします、と言わせてしまい、いけない気持ちになってしまうが、断られなくてよかったと安堵する気持ちが強い。
「では、これからも仲良くしてくださいと言いたいところですが、それほど俺は無欲ではないので、あ~んをしてもらう、とか、大丈夫ですか?」
「は、はい!!お安い御用です」
よっっしゃ!!!と心の中でガッツポーズをする。正直に言うと、俺ではなく父さんや母さんがBBQも計画してくれたので、俺が何かもらうのはどうなのかと思うが、今日限りは甘えてみるのもいいかもしれない。
暖翔さんはスプーンである程度のバニラアイスを掬い取り、手を添えて俺の口元まで持ってきてくれる。
「では、はい、あ~ん」
持ってきてくれたアイスをぱくりと食べる。暖翔さんがあ~んしてくれたからか、はたまたこれが
でも、とんでもなく甘くさわやかな風味が口の中を撫でるように包み込んだ。
「ありがとうございます!!今年分の幸福を味わった気が......」
「ど、どうしました?何か私の髪についてますか?」
そう言って枝毛ひとつもないサラサラな髪をくるくると指でいじる。
いや、そうじゃなくて後ろに......
「もう!!暖翔ちゃんだけずるいです!!それに、兄者はどれだけイチャイチャすれば気が済むんですか!!」
暖翔さんがすわるソファの後ろからヒョコッと泉菜が出現した。
「いや、イチャイチャなんてしてな......」
「気持ちよさそうにあ~んされておいて何を言うんですか!!私も兄者にあ~んします!!」
そういうと、泉菜は放心状態になっている暖翔さんからスプーンを奪い、驚くべき速度でアイスをすくって俺の口にぶち込んできた。
「いや、待てって、ごっ!!ちょ、スプーンは食べられないって!!」
「家族思いなら、スプーンとついでに私も食べてください!!」
「ちょっと、今危ういこと言ってなかった?!」
そんな喧嘩声と、あ~んを見られたことに照れながらも笑ってくれる暖翔さんの声で幸せな夜は終わりましたとさ。
■ ■ ■
......知らない天井だ。いや、泉菜の部屋の天井だ。......なんで?
顔を横にすると、暖翔さんの寝顔が見える。
左を見ると、泉菜が満面の笑みでこちらを覗いていた。俺は泉菜に向かってこしょこしょを開始した。
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