30話「寝れない夜と抱き枕」

 あれからボクたちは部屋に戻ってきていた

 そうしてボクはいつも寝ているベットに座る


「立ってるの疲れるでしょ……座っていいよ」


「ん」


 場所を指定するように隣のベットを叩くと短い返事とともに白が隣に座る

 気まずさと緊張、この2つのせいでボクたちの間には気まずい沈黙が流れる

 だがボクにはこの沈黙を破るような勇気がない。そんな自分自身に嫌気が差してくる


「……枕、一緒に使うでいい?」


 沈黙を破ったのは白だった


「……ボクが使わないから大丈夫だよ」


「さすがに悪い」


「いや、大丈夫だから」


 再び沈黙が訪れる

 先程の空気がまだ残っているようで居心地の悪さを感じる

 スマホの画面を見ると時間は23時を過ぎていた


「もう23時だ。そろそろ寝ようか」


「ん、私は壁側で寝ればいい?」


「それじゃあボクは反対側に横になるね」


 この空気から逃げるようにボク達はベットに横になる


「おやすみ、白」


「おやすみ、影」


 ボクは部屋の電気を消す

 暗い中で横になってもまだ眠気が来ないでいた


「くぅ〜」


 体感で数十分経った頃、静かな白の寝息が聞こえてくる


 明日の朝は寝不足かな?

 それでも早起きはしないといけないけど……


 ボクは寝返りを打ってボクは部屋の方面が見えるようにした

 こうしているほうが白のことを意識せずにいいと思ったから

 そうしてボクは瞼をつぶって……


「っ!?」


 瞬間、ボクの体が引き寄せられた


「どうしようかな。抜け出すのは無理だよな」


 思わず小声で言葉が出てしまう

 ボクは白に抱きしめられた

 ただ眠っている様子を見るに無意識の行動なのだろう。さしずめボクは抱き枕といったところか

 これ抜けだせるかな?


「……ぐぐぐ」


 試しに寝返りを打とうとしても全く動けない

 せいぜい体の向きを変えるのがやっとだろう


 ……先にしたのは向こうなのだから少しぐらい仕返ししてもいいだろう


「よっと」


 短い掛け声と共にボクは体の向きを変える

 そうしてボクも……白を抱きしめた


 たださっきより近づいたせいで香りやら、柔らかい感触だとか感じてしまい少し顔が熱くなる


 それでも安心感を感じてさっきまで感じなかった眠気が来て、ゆっくりとゆっくりと瞼が落ちる


「おやすみ、白」


 ゆっくり髪を撫でる

 ただ撫でいた手も動かなくなって……

 そうしてボクの意識は完全に落ちて眠った

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