19話「カルト」

「やっと抜け出せた」


 あの模擬戦の後、他の冒険者達に詰め寄られ抜け出すのに時間が掛かった

 抜け出すのを手助けしてくれたギルド職員の皆様には本当に感謝してもしてきれない


「鍛冶屋に行くんだったな……何処にあるんだ?」


 マップ……のような便利アイテムなんてあるはずがない


「情報収集は聞き込みか……」


 変なところで現実的というかなんというか……


「あの、すいません」


 近くを歩いていたケープマントコートを被った人に声を掛ける

 軽く見た感じでは綺麗に整えられた服と、十字架に関連するようなアクセサリーをつけている

 このことから職業は、宗教関係の仕事だろう、と結論付ける


「鍛冶屋って何処にあるかご存じありませんか?」

「あそこ」


 指の指す方向を見ると煙突と看板のついた一軒家が見える


「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 感謝の言葉を述べてから瞬きした瞬間フードを被った人は居なくなっていた


「……警戒しとくか」


 あの人は何者なのかはわからないが特に害がないことを祈りたい

 そんな起こるかもしれない未来を心配しながら教えてもらった家へと歩を進める

 看板に書かれていた文字は『シュタール』

 どうやら鍛冶屋で合っていたらしい


「武器と防具が買えればいいかな」


 そうしてボクは扉を開ける


「いらっしゃいませ!!」

「わ……」


 扉を開けると獣人の少女が大きい声で挨拶をしてくれる


 子供なのだから元気なのは良いことだ

 ただいきなり大声を出すのは駄目だろう

 びっくりする人もいるかも知れないし……勿論この話に意味はない

 断じて自分がちょっと驚いたとか、そんなんではない


「えっと、お父さんかお母さんは居るかな?ボクは装備を買いに来たんだ」

「お父さん呼んでくるからちょっと待ってて!!」


 そんな言葉を残し少女は階段を駆け上がって行った


「元気だな〜」


 さて、少しだけ店内を回ろう

 どんなものがあるか分かっていたほうが良いだらう


「ほぇ~、色々あるんだな」


 武器、防具、装飾品、魔術具まで様々な商品が置いてあることが確認できる


「ナイフはあるからいいとして、刀の練習したいし刀系の何かは買いたいな」


 手持ちは605000通貨、これで足りなきゃ困るな


「お金どう稼ごうかな、やっぱり王道のギルド依頼で稼ぐか?でも他のも……ん?」


 お金のことで悩みながら店内を回っていると、ふと一本の刀が目に付く


「これは?」


 不思議な魅力を感じて思わず手を出そうとしたが……


「……やめといたほうがいいぞ」


 人の声を聞き自らの手が止まる

 声の見たほうが

「あなたは?」

「俺は『シュタール』の店主シュミットだ」

「……始めまして眠り人スリーパーのフユです」

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