7話 「帰宅」

「ちょっとまって、尻尾は辞めて!!」


 右手側には尻尾に飛びついて撫でてくるかわいい弟と、それを爆笑している両親。

 あ〜もうめちゃくちゃだよ


「どうしてこうなった……」


 巻き戻ると、3時間前、病院から帰ってきたときのこと。


「あら、また雨が降り出したわね。」

「早く家に入ろうよ。あんま濡れたくないし」


 病院から帰る途中、スーパーに寄った後帰ってきた時には再び激しい雨が地面に降りつけている。


「ん?」

「どうしたのお母さん?」

「携帯電話に連絡が来たみたい。」


 見るとスマホには連絡が来たことを告げる点滅が行われている。


「誰から?」

「え〜と、ああ、颯さんとゆうちゃんが起きたんですって。」

「ボクの体のことは話したの?」

「まだ話してないわよ。サプライズ、サプライズ」


 まあサプライズにはなると思うが…

 まあただお父さんがどんな驚き方するかは気になる。


「で、どうしてたらいいの?」

「手洗いうがいした後、普通に行きなさい。」

「分かった」


 ああ、白にも連絡しないといけないじゃん。

 後でしよう。スマホ自室に忘れたし。

 そんなことを考えながら玄関の扉を開ける。

 少し濡れてしまったのはもう良しとしよう。


「猫さん?」


 その瞬間、後ろから声が聞こえた。


「悠?ギャァ!?」


 いきなり尻尾を掴まれて変な声が出てしまう。

 くっ、地味に力があって抜け出せない!?


「影?変な声が聞こえたけど大丈…ふふ、二人共何やってるの?」

「あ、ママ猫さん捕まえた!!」

「お母さん。助けてそろそろ限界。いったぁ、尻尾引っ張んないで!」

「悠。そろそろ辞めましょうね。お姉ちゃん困っているよ」

「ん、分かった!!」


 うう、尻尾が痛い。

 猫が尻尾に触られるのが嫌う理由がよく分かってしまう。


「お前たちそこで何をしているんだ?」

「ああ、颯さんいいところに来た。実は……」

「いや待て待てどんな状況だ?そこの嬢ちゃんはとこからひろってきたんだ?」


 やばい、お父さんに嬢ちゃんって呼ばれると普通に鳥肌立つ。


「それと影はどうしたんだ?何故か病院行ってたそうじゃないか。いや待てよ?病院から帰ってきたのにいない。つまり影に何かあったということ。ここから導き出される答えは……」

「めんどくさい、ボクが影だよ」

「は?」


 いや、そこまで言ってなぜ気づかないんだよ。

 いや普通は気が付かないか。

 ……なんか聞いてるだけで疲れた。

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