第23話 ピース・ラヴ・アンド・アンダースタンディング
相手のひとは大学生なんだろう。しかも、その大学の先生の先生がへれんのおじいさんで、と、そういうことだ。
わたしにはついて行けない。
へれんは、中学校三年生のときから大学生のお姉さんたちと気
たぶん、もっと大きい市の名門の高校に行って。
わたしを置いて、どんどん行っちゃうんだろうな。
おじいさんも、お父さんも学者さんで。
わたしはというと、たぶん、うちの会社を継ぐ。いや、継ぐかどうか知らないけど、ともかく、自動車整備工場というのをやっているうちの会社に入社する。
わたしが二十歳とかになるころまでつぶれずにいてくれたら、だけど。
だから、地元の高校にしか行く気はないし、大学なんか行くかどうかもわからない。
いや、でも、へれん!
いま、大学生の人たちとそんなお話をしに来たんじゃなかったんじゃない?
あ、でも。
何をしに来たんだっけ?
何をしに……。
「あれ?」
なんか、涙が出そうになった。
いや、目の中までなら、出た。へれんの顔も、その向かいのお姉さんも、屋台の照明も、あの黒と赤と明るい黄色の飾りも、にじんで見える。
でも、小学生のたね
え?
あ!
そうだ。
詩織ちゃんのために、
こんなところでおしゃべりしてちゃいけないんだよ!
それで、最大限の力をこめて
「へれん!」
と声をかけようとするのより一瞬早く、空のほうからはっきりした声が流れた。
「はい。お待たせしました。サン・トワ・マ・ミーのみなさんです!」
はい?
なにマミーだって?
いや……。
それ、だれ?
というか、お待たせって、どこの話?
その「?」でことばを出すのが止まる。というより忘れる。
そこに、ドラムをタタタタタタとたたく軽い音が入る。さっきとは別の女の人の声が早口で言う。
「最初の曲は、「ホワッツ・ソー・ファニー・アバウト・ピース・ラヴ・アンド・アンダースタンディング」」
うわっ!
英語の単語をそんなに早く言われたらわかるものもわからないよっ!
……っていうか、英語だよね、それ?
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