第14話 この葉室知佳未様って、何者?
その屋台を見ると、りんご飴とかいちご飴とかのほかに「
「凍らせる」と「焼く」とが正反対だ。
それって何だろう? それで
「ね? 凍らせ焼きりんごって何かな?」
と思わず言って、言ったとたんに後悔した。
「あ、じゃ、買ってみようか」
さっきも「ベーコンなんとか」って何かな、と言ったら、それでへれんがあのベーコンのかたまりを買ってきて、たしかにおいしかったけど、それで制服にべとっとしみを作ってしまった。
だいたい、なぜわたしが制服を着ているかというと。
寝そべってマンガを読んでたときはかなりアラレもないタンクトップを着ていた。アラレがないってどういう状態だろうと疑問になるけれど、でもたしかに胸の上半分までロシュツした赤いタンクトップという、確実に半端でなくかなりアラレもない姿だった。そのまま出て来ようかと思ったのだけど、お祭りだから先生とかも来てるかも知れないと思って、やっぱりアラレもないのはやめようと思って制服にしたんだけど。
大きい脂のしみを作って、あとでお母さんに怒られる。
怒られなくても、あきれられる……。
でも、今度は、さっきより食べてみたかった。
「凍らせ焼きりんご」もりんごには違いないだろう。りんごならば制服に落としてもあんなしみはできない。
「凍らせる」と「焼き」がどう重なっているかも見てみたい。
「じゃ、それ」
「わたしが買ってくるよ」
へれんがさささっとまた小さい駆け足でその屋台まで行く。
おうおう。絶世の美女の王妃様を使いっ走りに使うとは、この
ちかみー。
ちかみぃ……?
……何それ?
ま、りんご飴の屋台がへれんに近い側にあったって、それだけのこと。
へれんがその屋台の人に声をかけると、屋台の人は何か言い返していて、しばらくへれんと屋台の人とで何か話している。なんだろうと思っていると、こんどは、片手に収まるくらいの小さい袋を二つもらって、へれんがまた早足で戻って来た。
「あ、いくら?」
「一個百円。あとでね」
りんごなんとかって百円なのか。ベーコンより安い。
でも、一般民の葉室知佳未、へれん王妃様からの借金がかさんでいく。
「はい」
へれんが袋を渡してくれる。あんまりりんごっぽくはない。
でも、この感じ……。
知ってる!
袋に入って、透明な袋の中は端のほうが細かな氷で白くなってて、そしてこの手にすぽっと収まってひんやりな感じ……。
「あ!」
と顔を上げたら、へれんもわたしを見ていた。
わたしが顔を上げたらちょうど目が合うように。
わたしが続けて言う。
「これって」
「うん!」
へれんがうなずく。
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