Episode 21 組み合わせ
明日の試験は、英美里、ひな、雅、龍夜、そして最後に智咲の順で行われる
みんな緊張してか、少し顔が強張っている
「龍夜、今日の夜ちょっと時間あるか?」
「はい、大丈夫ですけど、どうしたんですか?」
「まあ、ちょっとな。じゃあ、また夜な」
聡は加えて疲れたから寝ると言い、宿泊所へと戻っていった
それに続けて、雅も本部を見て回ると言って訓練所を出ていく
龍夜と智咲とひなと英美里は、本部内にあるレストランで少し遅めのお昼にしようとの話になった
「いやぁー、ホントここはいつ来ても美味しそうなものばっかりだねー!」
「ですね!明日は試験ですし、沢山食べてしっかり合格しないと!」
「うん、頑張ろう」
「その感じなら、明日は緊張せずに試験に臨めそうだな!」
「おーーっす!お前らも昼飯かいな?」
龍夜たちが明日の試験の話をしていると、レストランに大我が入ってきた
そして、隣ええか?と言い、龍夜たちの席に座り料理を頼み出した
「あの、大我さんってなにわ連合の幹部なんですよね?」
「大我でええで、それに敬語も要らん」
「あ、じゃあ、大我はなにわ連合の幹部なのか?」
「せやで!幹部の中でも強いのが俺や!」
そう言って大我は自信満々に胸を張る
それを聞いていた智咲が大我に質問する
「なにわ連合、幹部多いですよね
何人くらいいるんですか?」
「あーーっと、俺とあかり、冬弥、それにきよっさんに、澪、美湖、お前らが会ってない奴らを合わせたら全部で10人や」
「そんなにですか!?」
予想以上に多い人数に英美里がご飯を吹き出す
英美里の背中を擦りながらひなが聞く
「私たちが会ってない人はあと4人もいるんだ
どんな人たちなんだろ?」
「うちの幹部連中はみんなクセが強いからなぁ
あんまり会うことはおすすめ出来へんで」
大我も結構なクセの強さだろうと、その場にいる大我以外の全員が思っていた
大我が言うには、龍夜たちがまだ会ったことがない幹部が本部に二人いて、残りの二人は東京に遠征に行っているらしい
掃討作戦にも参加出来ないみたいで、だからこそ戦力が多く欲しいという事だった
「それにしても、今日の試験は地味やったけど、明日は楽しみやなぁ!
俺の相手は誰やろな〜」
大我は、龍夜たちの顔を品定めするように見る
その視線に、全員に緊張が走る
「やっぱり大我も戦うんだな」
「そりゃそーやろ!
最近腕が鈍ってて仕方なかったんや
誰が相手でも負ける気はせんけど、楽しみにはしてるわ」
そう言って、大我は今来たはずの料理を一瞬で平らげ、仕事があるから行くわと言い、レストランから出ていった
「じゃあ、俺達もそろそろ行くか」
1番食べるのが遅い智咲がようやく食べ終わったので、龍夜たちもレストランを出る
その後は各々部屋に戻った
龍夜は、まだ疲れが取れていないのか、布団に横になると、いつの間にか寝てしまっていた
時刻は午後8時
龍夜は、聡との約束の時間になったので、宿泊所の食堂にいた
5分くらい待つと、聡がタバコに火をつけながら、歩いてきた
「聡さん、ここ禁煙ですよ」
「まじか、じゃあ、外で話すか」
聡の案で、街を歩きながら話すことになった
夜に避難所をぶらつくのは初めてで、昼間の様な賑やかさはなく、一つだけある酒場だけが賑わっていた
「こんな時にも酒場だけは賑やかでいいねぇ
一杯やってくか?」
「俺、未成年ですよ」
「こんな世の中になっちまったんだ、もう未成年とか関係ないだろ」
聡と冗談を言いながら、酒場をすぎる
少し歩くと、休憩スペースがあったので、そこで話をすることになった
タバコに火をつけながら、聡が話し出す
「明日は試験なのに、悪いな」
「全然大丈夫ですよ、昼寝しちゃって寝れなかったですし」
そうか、とだけ言い、二人に少しの沈黙が訪れる
「俺は、ちっせぇ頃にあのジジイ、蓮見さんに拾われたんだ
親に捨てられちまって、どうしたらいいか分からなくなっていた時、教会の前にいた俺をあの人が拾ってくれて育ててくれた」
聡の話を静かに聞く龍夜
「今回の掃討作戦、あの人が辞退したことが気に食わなかった
あの人のスキルはみんなを強化する
だから、守られてでも戦場に立つべきだと、隣で戦いたかったと思った」
暗い空を見上げながら、聡は空に煙を吐く
「でも、内心ホッとしてる自分がいたんだ
あの人には世話になった、恩返しがしてぇって思ってるんだ
だから、あの人が戦場から遠ざかり、命の危険に脅かされないって分かって、安心したんだ」
悲しそうに優しく微笑む聡
そんな聡の目をじっと見つめ、龍夜は黙って聞いている
「でも、本当にそれで良かったのか分からなくてな
お前たちのことを考えると、俺がジジイを守ってでも戦場に立たせなければならなかったのかとも思ってる
こんなことをお前に話しても、何も変わらねぇんだけどな」
聡は、龍夜たち年下が必死で強くなり、この世界を生き抜こうとしている中で、自身は自分のことばかり考えてる、と話した
龍夜は聡の目を見てしっかり話す
「俺はこれでよかったと思いますよ?
聡さんの気持ちも大事ですけど、なにより蓮見さんの気持ちです
多分、あの人は自分が戦場にいて守ってもらったら、聡さんが自分の命より、蓮見さんの命を優先してしまうと思って、今回の作戦の辞退をしたんじゃないですかね?」
龍夜の言葉に、聡は何も答えない
何も答えないことが答えなのだ
蓮見に危険が及ぶと、必ず聡は命を賭して守る
それが蓮見は嫌だったのだろう
黙って俯く聡に、龍夜が再び話し出す
「聡さんは、蓮見さんを守ってやるって思いすぎなんです
そう思っている聡さんに気づいて、蓮見さんは自分が戦場から離れることで守ったんだと思いますよ
守って守られる、です」
龍夜は、自分で聡に話しながら、気づいた
あかりが言っていた、守って守られるとは、こういう事だったのだと
お互いが、お互いの意志を読み取り、支え合うことで、強くなれるのだと
「守って守られる、か
いい言葉だな」
「受け売りですけどね」
笑い合う二人は、椅子から立ち上がる
「明日、絶対合格しろよ」
「もちろんです」
それだけ言葉を交わし、二人は宿泊所へと戻った
部屋に戻ると、風呂から上がったばかりの智咲が出迎える
「智咲!!ちゃんと着替えてからお風呂から出てきなさい!」
「いいじゃん、お兄ちゃんに、私も成長してるってところ見せないと」
「そーゆー成長はあんまり見せなくてよろしい!!」
しょんぼりする智咲に、龍夜は言う
「明日がんばろうな」
「うん、」
その言葉に智咲は静かに頷き返事をした
その後は、智咲の髪を乾かしてあげて、横になるとすぐに寝ていた
時刻午前8時
龍夜たちは、昨日と同じ時間に本部前にきていた
「おーう!みんな揃ってるなー!」
そう言って、あかりが本部から出てきた
後ろには冬弥と大我、それに見たことの無い人が二人いた
「おはようあかり、後ろの二人は?」
「おはよーさん!
紹介するわ!本部にいる残りの幹部の二人
【竜胆渚(りんどうなぎさ)】と、【松原楓子(まつばらふうこ)】や!」
紹介された二人は、一人は深々とお辞儀をし、もう一人は、軽く手を振っている
どちらも、同い年くらいの女の子だった
――――――――――――――――――――
【竜胆渚(りんどうなぎさ)】
(年齢)16歳
(好きな食べ物)和菓子
(特技)三味線
ギルド《なにわ連合》の幹部
腰まで伸びた桜色の髪
瞳の色は髪の色と同じ
着物を着ていて、お淑やかな雰囲気がある大和撫子美人
あかりの高校の後輩で、あかりを慕ってずっと付いてきている
スキル
《桜鬼(チリエモネ)》
桜の花びらの形をした魔力を操り攻撃をする
花びらに当たった物に毒を付与する
【松原楓子(まつばらふうこ)】
(年齢)18歳
(好きな食べ物)牡蠣
(特技)ダンス
ギルド《なにわ連合》の幹部
色黒で、金髪のお団子頭のギャル
普段はパーカーに短いスカートのラフな格好をしている
あかりのクラスメイトで、あかりとファッションについて語り合う仲
オシャレなものには目がなく、可愛い物も人も好き
スキル
《着替人形(ベスティーラバンボラ)》
ぬいぐるみを自在に操る
ぬいぐるみが着ている服で属性が変わる
――――――――――――――――――――
「本日は何卒よろしくお願い致します」
「渚声ちっちゃ!!!
ハキハキ喋らんと聞こえへんよ!!!
よろしくなぁーー!はい!こうやって喋るんやで?」
ギリギリで聞こえる程の声量で挨拶をした方が渚で、声が大きく早口な方が楓子と言うらしい
二人に会釈をしていると、あかりが大声を上げて笑っていた
「あははは!!この二人おもろいやろ〜?
仲良くしてあげてや!」
まだ笑いが収まらないのか、半笑いで今日の試験の説明をしだすあかり
昨日説明した通りの順に試験を行っていく
そして、龍夜たちの試験の相手をする組み合わせが試合形式に発表された
第1試合 英美里 VS 楓子
第2試合 ひな VS 冬弥
第3試合 雅 VS 大我
第4試合 龍夜 VS あかり
第5試合 智咲 VS 渚
この組み合わせで、試験が行われる
それぞれが、それぞれの対戦相手を見る
お互い、準備は万端らしい
「(俺の相手はあかりか...リーダー対決といったところか
あかりのスキルの対策も考えないとな)」
あかりのスキルは、あかり本人から説明はされているが、実際に見たことがない
想像だけで対策を練らないといけないということに、多少の不安が芽生える
「じゃ、そろそろ訓練所いこかー!」
そう言って歩き出すあかりの背中を
龍夜は、じっと見つめ、静かに闘志を燃やしていた
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