Episode 8 世界の変化

 世界中にモンスターが現れ始めてから、1ヶ月が経った。母さんとはまだ連絡が取れない

 11月。外もかなり肌寒くなってきている

 この1ヶ月の間に、モンスターとの戦闘にも慣れてきて、俺たちはレベルも、スキルの能力も大幅に上がっていた

 長くなるが、説明しとく


 龍夜▶︎Lv28、小さな家くらいの大きさまでなら変化可能になった


 智咲▶︎Lv27、自身と別に、智咲が頭の中で指定した者の周りにもバリアを展開できるようになった


 ひな▶︎Lv27、雷を複数落とすことができるようになった。上限は5つまで


 鈴音▶︎Lv25、切断された部分を結合できるほどの治癒力を身につけた


 雅▶︎Lv29、刀を2本扱えるようになり、その場から消えたように切り抜く、瞬歩を会得した


 鈴音父▶︎Lv17、《分析(アナリージ)》のスキルを得た

 機械の中に意識を移し、情報を探る。ただし、その間本人は眠ったようになる


 鈴音母▶︎Lv15、《裁縫(クチーレ)》のスキルを得た

 針に糸を通し、念じるだけで服を作れる。その服はモンスターの攻撃を和らげる効果がある。ただし、1着を作るのに半日かかる


 聡▶︎Lv26、車ほどの大きさなら動かせることができるようになった


 蓮見▶︎Lv13、《祈り(プリガーレ)》のスキルを得た

 祈ることで対象の身体能力を向上させる


 英美里▶︎Lv21、《槍技(ランチャー)》のスキルを得た

 自身から2mほどの槍を生み出す

 英美里自身、まだ槍の扱いになれていない


 広樹▶︎Lv20、《念話(テレパティア)》のスキルを得た

 広樹から半径1kmにいる自身と面識のある人物に念話を送ることが出来る


 以上が、俺たちの成長だ

 この1ヶ月で、ゴブリン以外のモンスターとも遭遇した

 スライムに、ワーウルフ、スケルトンの3体だ

 幸い、大型のモンスターはこの近くにはいないみたいで、この3体にゴブリンも含めて、計4種類のモンスターを倒しながらレベルを上げている


 そうそう、この1ヶ月で大きく変わったことがある

 10日前に、あるニュースが流れたんだ


 それは、確認されてる中で、日本で最初にレベル30を達成した【獅子山渡(ししやまわたる)】って人の頭の中で、《ギルド機能が解放されました》と、流れたということだ


 なんでも、獅子山がギルドと認定した建物は、外観に変化はないんだが、その建物の入口にドット絵の茶色いドアが出現し、内装も大きく変わってしまうみたいだ


 そして、ギルドメンバーと認めた者はその建物に出入りできるが、それ以外は入れなくなるらしい

 もちろん、モンスターもだ


 獅子山は、「ギルドの内情は知られたくない」と言って、中の様子までは見せてくれなかったみたいだけど、そんな効果があるのなら、レベルを上げるに越したことはない


 その情報を聞いてから、俺たちはレベル上げにも物凄く積極的になり、1ヶ月でここまでレベルを上げることが出来た


 そういえば、獅子山は、自衛隊でも無く、普通の一般の高校生だったって言ってたっけ

 俺たちと変わらない高校生が「我々のギルド《砂漠の銀サンビアアルジェント》は、モンスターに奪われたこの世界を取り戻す」

 って言ってるんだ、俺なんかよりよっぽど凄いリーダーなんだろうなと思う


 それと、獅子山のニュースを見てから、ものすごいスピードで日本中に多くのギルドができていっているらしい

 有名所だと、東京にある獅子山の《砂漠の銀サンビアアルジェント》、大阪にある【橘あかり(たちばなあかり)】率いる《なにわ連合》、そして、ギルドリーダー不明の《月と太陽ルナソレイユ》の3つだな

 どちらも30人以上いる大きなギルドらしい


 でも、こんだけ多くの人数が集まってても、まだ門の破壊は出来ていないらしく、モンスターの数は増えていくばかりらしい

 もちろん、俺達も門を発見すら出来ていない


 おお、そうだ、今日は、智咲と英美里と一緒に少し遠くのデパートに食料を調達に行かなければならなかった

 そろそろ近場では食料が無くなってきたから、教会からの移動も考えないとな


 龍夜は、みんなに今日の一日の流れを軽く説明する


 3班に別れて、やるべき事をやってもらうことにした

 龍夜、雅、聡を班のリーダーとして行動をしてもらう


 龍夜班は、智咲、英美里で食料調達

 雅班は、ひな、広樹、鈴音、鈴音父でレベル上げ

 聡班は、蓮見、鈴音母で教会に残り、見張りをしてもらう

 と、朝の集合で伝え、各自動き始める


 龍夜は、智咲と英美里を呼び、デパートまでのルート確認をスマホで行う


「龍夜さん、龍夜さん、こっちから行った方が近いんじゃないですか?」


 説明をしている龍夜に英美里が言う

 ここに来たばっかりの時は、人見知りをしていたが、冗談を言い合えるくらいには打ち解けた

 特に、智咲と龍夜に懐いている。聡が少し苦手


「英美里、ここはモンスターが集まりやすい場所なの。だから、ここを避けてここから向かう」


 英美里は最近までレベル上げだけに専念してもらっていたので、食料調達は今回が初めてなのだ

 モンスターの集まりやすい位置も把握してきている智咲が、優しく教えている

 それに「あぁ、なるほどです」と英美里が返す

 納得してくれたようで良かった


「じゃ、このルートで10分後に出発だ!2人ともリュックの確認もしておいてね」


 2人にそう声をかけ、龍夜も自分のリュックを確認する

 電気系統が壊れているところもあるので、懐中電灯と、怪我をした時用の応急処置用の包帯も入れる

 後は携帯食料に水を入れたらとりあえず準備完了だ


 一通り確認し終わった頃に、2人も終わったと報告しに来た


「もし、見たことないモンスターと遭遇したら、なるべく戦闘は避けること。いいな?」


 龍夜は、「これだけは絶対な?」と真剣に2人の顔を見て言う、それに笑顔で頷く2人

 戦闘に慣れてきているのか、余裕が見える表情だ


 雅たちは既にレベル上げに向かったみたいだ

 教会に残る聡に声をかけ、龍夜たちは教会を出る




 歩いて30分、デパートが見えてきた


「はぁ、はぁ、けっこー遠いんですね...」


「大丈夫?はい、お水」


 水筒に水を入れて持ってきていた智咲は、疲れて息切れしている英美里にそれを渡す

 こっから見ると姉妹みたいだな、と2人を見ながら思っていた龍夜は路地の奥にある物を見つける


「なんだ?これ」


 それは見るからに、ダンジョンにあるような宝箱だった

 明らかに何かしらの罠だろうなと周りを見ながらだれもいないことを確認し、智咲と英美里を呼ぶ


「絶対怪しい...」


「わかりやすすぎて、逆に気になります」


 おかしいとじーっと宝箱を睨む智咲、その横で少し目を輝かせている英美里


 龍夜は、「ミミックっていうモンスターがいてな?」と自分が異世界漫画で得た知識を伝える


 英美里が「お宝だと思ったのに...」としょぼくれているが、こんな堂々としたお宝があってたまるかと思う


「だめよ、英美里。こんなのに引っかかるのはバカだけなんだから」


 智咲がそう言い切ると同時に、龍夜たちの横をものすごい速さで人影が通り過ぎる


「もらったぁぁあああ!!!!」


 勢いよく宝箱に飛び込んでいくそれは、やはりミミックであった宝箱に飲み込まれそうになる

 辛うじて、足だけ出ており「た、たすけてくれぇええ!!」と叫んでいる


 龍夜たちは、何が起こったか分からず、その光景をぼーっと見つめていたが、我に返って、ミミックに攻撃を始める


「智咲!英美里ちゃん!いくぞ!」


 龍夜の声掛けで、2人も戦闘態勢を整える

 この1ヶ月で、雅と龍夜で考案した陣形をとる

 いつもみんなで行動するわけではないし、そのメンバーでの戦い方も考えた方がいい、と雅が言い出したのがきっかけで生み出された

 龍夜が前で敵を引き付け、その隙に英美里が横から槍で刺す。そして智咲は相手が攻撃してきた人にバリアを展開して防御する、という陣形だ


 初めて対峙したミミックも、この1ヶ月で培った龍夜たちのコンビネーションには手も足も出ず、呆気なく倒された

 飲み込まれそうになっていた人は怪我はなかったが、ミミックの血で真っ赤に染っていた


「いやぁー!たすかった!!まさかモンスターだったとはな!!礼を言うぜお前ら!」


 ニット帽を被り、漫画のような太い眉毛でどっしりと腕を組んでお礼を言っているその人は、頼んでもいないのに自己紹介を始めた


「オイラは、高橋信之(たかはしのぶゆき)!みんなはノブって呼ぶぜ!ちなみに、高1だ!」


 ――――――――――――――――――――

【高橋信之(たかはしのぶゆき)】

(年齢)16歳

(好きな食べ物)おにぎり(具はなんでも可)

(特技)大きな声を出すこと

 龍夜たちが行ったデパートの近くにある、田所たどころ高校の1年生

 常に元気とやる気で生きている

 声が大きすぎて、同級生には避けられているが、持ち前のポジティブさで、構わず話しかけて、更に印象が悪くなっている

 この世界になって、モンスターに襲われているところをある人に助けられ、その人のギルドで熱心に働いている

 

スキル

《硬化(インドゥリメント)》

 自分自身と、触れている物を硬くすることが可能

 ただし、地面など、自然のものは不可能

 スキルのおかげでミミックに噛まれても平気だった

 ――――――――――――――――――――


 突然の自己紹介に戸惑っている龍夜たちに、信之はいきなり、ある提案をした


「お前ら!俺たちのギルドに入れよ!!強いやつは大歓迎だぜ!!」


「お前らは〜」と、あーだこーだと話している

 信之の怒涛の話し具合に龍夜と英美里がぽかーんとしている中、智咲が驚きの一言を発した


「は?なに、あんた?」



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