Episode 5 レベルアップ
雅がゴブリンを倒してくれて、みんなは、安心感でその場に倒れ込む
俺は、急いで智咲の所に向かい、安否を確認する
「大丈夫か!?どっか怪我してないか!?」
心配で、智咲の体を隅々見ようとしていた俺を、智咲が止める
「だ、大丈夫だから、見すぎ」
智咲は少し赤くなり、俺の体を離す
智咲が無事だと分かった途端に涙がこぼれそうになる
「よかった、よかったぁ、俺が近くにいたのに
危ない目に合わせてごめん。本当にごめん。」
そんな俺を宥めながら、智咲が雅の方に顔を向ける
「雅さん、本当にありがとうございました」
さすがにあれほどのスキルを使って、疲れたのか、地面に座っている雅は智咲に笑顔を向けた
「助けれらてよかったわ、学校での恩返し」
本当に雅には感謝しきれない
雅がいなければ、今頃智咲はゴブリンに殺されていた
智咲のバリアに頼ってしまって、智咲を守れなかった俺の失態だ
智咲を守れなかった自分に対しての怒りから、下を向き落ち込んでいる龍夜に対して鈴音が話しかける
「あ、あの、龍夜くん、
さっきのゴブリンとの戦いで、スキルが出てきたんだけど」
鈴音の言葉で、みんなが反応する
先程のゴブリン戦で蓮見以外は何かしたらの反応を見せていた
つまり、龍夜、智咲、ひな、雅、鈴音、その5人に加えて、聡が何かしらの声を聞いているはずだ
「私はスキルの提供で《剣技》を選んだ。それで智咲ちゃんを助けられた。
その反応だと、他のみんなも何かあったんじゃない?」
雅の言葉に対して、聡が、タバコに火をつけながら返す
「俺もスキルの提供がなんとかって頭の中で聞こえた。お前たちのその超能力となにか関係があるんだよな?」
龍夜の予想通りに、鈴音、雅、聡にスキルの提供が行われた
蓮見はパーティーメンバーとは認識されず、周りの話についていけずに困惑している
「みなさん!一体何のはなしをしているのですか?それに先程の神の力はなんなのですか!?」
俺たちがどんどん話を進めていくからか、
蓮見さんが置いてけぼりになってしまい、アタフタしながら、聞いている
「説明はひなに任せるよ、とりあえず、聡さんは
なんてスキルが出たんですか?」
ひなが、「え!?わたし?!」と言いつつ蓮見さんにスキルを取得した時のことを説明してくれているすまない、ひな
俺は聡さんにスキルについて聞かなければならないんだ
「なんか、3つから選べって出たんだ、お前らもそうなのか?」
やはり、聡さんも俺たちと同じだったので、その問いに頷いて答える
「じゃあ、一緒なんだな。俺は《透過》、《念力》、《回転》だな。最後の1つだけ使えなさそうなのはわかる」
透過、念力、回転、
聡さんの言う通り回転以外は凄そうな能力だ
それにしても、透過って、
この人が持ったらなにか良くないことに使いそうな気がする...
「おい、顔に出てんぞガキ。」
考えてることがバレて、慌てて否定をするが、ため息で流される
怒った顔怖いなこの人
「まあいい、俺は念力を選ぶことにするわ。色々使い勝手良さそうだし」
「ですね。回転はよくわかんないですし」
と、聡さんの選択に同意する
念力は、その名の通り、色々なものを動かすことが出来る。だが、聡自身が手に持てる重さのものに限る
「あの!!私も!!私もスキルどうしよう!」
はいはいはいと言い、飛びながら勢いよく手を上げる鈴音、その勢いにみんなが注目する
「鈴音はなんのスキルが出たんだ?」
「えっとね、私は《治癒》と、《光》と、《移動》だったね、治癒はわかるけど、光と移動ってなんなのかな?」
鈴音のスキルは思ったより便利なものが多いな
ランダムで表示されるって言ってたから
たまたま良い奴が当たったのか?
治癒は、回復系のスキルと見ていいだろう
光は、漫画みたいな感じなら、キラキラ光るレーザーとか出すのか?
それに、移動って...早くなるとかそんなもんか?
と、鈴音のスキルを分析していると
「鈴音さんは前に出て戦うみたいな感じじゃないし、治癒の方が向いてそう」
と、智咲が鈴音の見た目のままの感想を述べる
確かに、鈴音はみんなを癒すヒーラーポジションぽいな。異世界風に言うとだけど
「んーー、そうかなぁ。智咲ちゃんがそういうなら治癒にしよっかな!」
そんな簡単に決めていいものだろうかと思いながらも、即決で治癒に決定したらしい
この時、龍夜たちには、鈴音が簡単そうにスキルを選んだように見えたが、鈴音は学校の時から、何も出来ていない無力な自分に腹を立てていた
助けたかった人も助けれない、周りに助けられてばかりな自分が悔しかった
本当はこのスキルを見た時に、治癒に決めていたが、みんながどう思うのかを知りたくて聞いたのである
これで自分もみんなの助けになれる、と嬉しく思っていた
俺たちがそんなやり取りをしていると、蓮見さんが口を開いた
「ひなちゃんの説明で少し理解はしましたが、こんな現象、あまりにも現実からかけ離れていて...」
それもそうだろう。俺たちだって未だに理解出来ていないし、スキルのことだって、ゴブリンのことだって、訳が分からないことばかりだ
蓮見さんの言っていることも分かるが、理解出来ないから行動しないは、確実に死に繋がってしまう
今は理解できなくても、やれることはやらないと
「スキルの話はこれで終わったな。別の話なんだがゴブリンを倒した時に俺はレベルアップって表示が出たんだ。たぶん、ひなも智咲もそうだろう?」
スキルの話もひと段落したので、次は龍夜と智咲とひなに表示された『レベルアップ』についての話を始める
「うん、出た」
「私も出たよ」
2人がほぼ同時に答える
このレベルアップというのは、ゲームや漫画の世界のそれと考えていいんだろう
だとしても、レベルが上がったけど、これといって変わったことは無いんだが...
龍夜、智咲、ひなの画面にはこのように表示されていた
┌──────────────────┐
Lv up
1 ⇒ 2
スキル能力が上がりました
└──────────────────┘
かなり質素な感じで表示されているが、スキル能力が上がったことが気になる
威力が上がったとかか?それなら、俺の能力はどんな感じになっているんだ?
そう思いながら、画面に手を伸ばす
ピコンッ
また頭の中でゲーム音が聞こえた
画面を見ると、そこには、所謂ステータス画面が表示されていた
┌──────────┐
加藤龍夜
Lv 2
スキル 《変化》
《変化》物質を変化
させる
討伐モンスター
ゴブリン
└──────────┘
こんな感じだ
レベルとスキルが表示されて、その下にスキルの説明まで書いている。あったんだな、説明。
本当にゲームの世界みたいな表し方だ
それにしても、説明も大雑把に書かれていて
能力が上がったって言われても、いまいちピンと来ない
またゴブリンたちに出くわすことがあるかもしれないから、自分の能力は把握しておきたかったが、地道に探っていくしかないか
それに、この討伐モンスターって、まさかゴブリン以外にもいるのか?
だとしたら、今のままじゃジリ貧だぞ
くそっ!分からないことが多すぎる。
とりあえず智咲たちにも確認をしないとな
「智咲、ひな、2人もレベルは2に上がったか?」
「うん、お兄ちゃんも?」
「私も2!」
智咲と、ひなは最初のゴブリン戦からパーティーを組んでいることになっているから、一緒のタイミングでレベルが上がったのか、そう考えていると
「私もレベル2になってるわよ」
雅が口を開いた
なぜだ?雅はあの時はパーティーメンバーには入ってなかったはず...
今回の戦いで、ゴブリンを1人で倒したからか?
そうなると、レベルアップにも差が出てくるのか?
あーーもう、わけが分からない
頭を抱えている俺に近づいてきた智咲が声をかけた
「お兄ちゃん、考えすぎ。難しいことはよく分からないけど、みんな無事だった」
俺を落ち着かせようとしてくれていたのだろう
おかげで頭が少し冷静になった
「ごめん、智咲。そうだな!今は無事にみんな生きてる!それで十分だ!」
俺がそう言うと、心配そうに見ていたんだろう
みんなが、ほっとした顔でその場に座る
考え込みすぎて変に心配させてしまったか、気をつけないと
「本当になんなのよ、あのゴブリンたち」
落ち着いてから口を開いたのはひなだった
床に座り込み、溜息に怒りを混ぜて言う
「ガキ共の学校にも居たってことは、あのバケモンは、もう町中にいるんじゃねぇか?」
聡さんがそう言葉にすると、
「お父さん、お母さん。無事でいて。お願い。」
鈴音が震えた声で呟いた
学校での騒動、その後の教会での出来事
今やっと落ち着けるからこそ、不安の言葉が次々と込み上げてくる。
「お母さん...だいずさん...」
智咲も悲しげな声で呟いた
俺も同じで母さんが心配だ
「大丈夫、大丈夫だ。きっと無事だ」
なんの根拠もない言葉で、落ち着かせようとするが
あまり意味は無いだろう
そんなことを思っていると
「みんな!ちょっとこれみて!!!」
スマホを見ていたひなが、それをみんなに見せる
ニュースのようだ
「臨時ニュースです。ただいま日本各地で
モンスターが目撃されています。」
それは、俺たちの心を抉るには十分な内容だった
日本各地で、突如、大小関係なく、門のようなものが出現して、その中からモンスターが現れて、人間を襲っているという内容だった
死傷者もとんでもない数出ていた
ニュースの映像には、自衛隊がモンスターと戦っている姿が映されていた
映像には、異世界漫画を見たことがある人なら必ずは知っているであろう、
オーク、ハーピィ、ゴーレム、サイクロプスなど、様々な種類のモンスターが映っていた
やはり、ゴブリン以外のモンスターも存在しているんだ。
先程のステータスに討伐モンスターと書かれていたことへの疑問が確信に変わる
「なに...これ...」
鈴音が喉の奥から言葉を絞り出す
無理もないだろう、さっきのゴブリンなんて可愛く見えるくらいの巨大さに、俺だって体が震えている
「やはり、ここだけではありませんでしたか」
蓮見さんが青ざめた表情で画面を見つめる
「こりゃ、どこもやばそうだ」
「門からモンスターが出てくるってことは
ここら辺にも門があるんじゃない?」
智咲がそう言うが、ニュースの説明だと、門の数も場所も把握しきれていないみたいだ
それに、門の近くにはモンスターがかなりの数いた
門を破壊するにしても、確実に奴らとの戦闘は避けられないだろうし、明らかに無理ゲーだ
「.....」
全員に沈黙が訪れる
映像を見て、恐怖しない者は居なかった
戦う自衛隊、殺されていく人達の断末魔
それらが龍夜たちの心を折るのは簡単だった
しかし、何かを決心したのか、龍夜は沈黙を破ろうとその場に立ち上がる
「みんな!とりあえずは自分たちの家族の安否を確認しに行こう!幸い、ここに居るのは蓮見さん以外スキル持ちだ、みんなで手分けして回れば
モンスターと遭遇しても対処出来るはずだ」
ここで折れてしまったら、みんなを守ることは出来ないと、自分に喝を入れ、今、目の前にある課題から解決していくことを決めた
「そうね!じゃあ、みんなで家族と合流して
どこか、避難できそうな場所に集まりましょ!」
龍夜の喝の入った言葉に、みんなに少しだけ元気が戻り、折れていた心を元に戻していく
そして、ひなの一言で、みんなが意見を出していく
「じゃあ、ルート的にもここから近いのは私たちとひなだね」
「避難所は良ければここを使ってください。大人数入れるスペースはあります」
「ガキ共の家族以外にも、逃げ遅れている人がいるかもしれねぇ。ネットでここを避難所にするって拡散しておくわ」
「私の両親は出張で飛び回っているから大丈夫よ。みんなのお手伝いをするわ」
「そうと決まれば!!龍夜くん!早く行こ!」
みんなが各々に意見を出してくれるおかげで、ずっと暗い顔をしていた鈴音にも元気が戻り、張り切っている
しかし、いまはこんな状況だけど、無事を祈ることしかできない
すぐに出たい気持ちもわかるが、さっきの戦闘で
スキルを使った人達は少し疲れが見える
「鈴音、落ち着け。急ぎたい気持ちも分かるが
みんなスキルの反動で少し疲労が溜まってる
もう少し休憩してからいこう」
早く行かないとと慌てている鈴音を落ち着かせようと言葉をかけたが、鈴音はその場に立ち上がって
私のスキルに任せなさいと言わんばかりに、手を上げる
「じゃあ、みんなこっち来て!私のスキル《治癒ギュアリーレ》で癒してあげる!」
鈴音がそう言った途端に、俺たちの周りに
真っ白の光が射し込む
とても暖かく、ぽかぽかしてきて眠気まで押し寄せてくる
すると、見る見るうちに疲労が取れていった
「はい!これでばっちりだね!」
驚いているみんなを他所に、1人でドヤ顔をかましている彼女は、実は大物なのかもしれん
鈴音のスキル、《治癒》は、癒したい対象を鈴音自身が決め、その対象の人の周りに光のベールを生み出す
対象が多いほど、癒しの効果に時間が掛かる
鈴音のおかげで、予定より早く出発できるようになったので、みんなで慌てて準備を始める
準備をしている時に、智咲と一緒に母さんに連絡をしたが、電話も繋がらないし、メッセも返ってこない。なんともないといいんだが...
「じゃ、俺はじじいと教会で待ってるからよ。
ここを誰かが守らないといかないしな」
じじいと呼ばれてショックな顔をする蓮見さんを後ろに、聡さんが言う
「助かります。何かあったらまた連絡してください」
そう言い、お互いの電話番号を交換して、教会の外に向かう
周りを見て、モンスターが居ないことを確認したら
みんなを連れて外に出る
今回は、みんなで一人一人の家に行き、家族の安否を確認し、必要な物資なども持っていき、教会まで戻らないといけない
長い道のりになるから、少しの油断も許されない
「よし、いくぞ」
龍夜の言葉で、全員が頷き教会を出る
長い長い一日はまだ終わりを迎えていない
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