第一章 モンスターが溢れた世界
Episode 1 こんにちは異世界
ジリリリリリリリ
頭をかち割るかのように鳴り響く目覚まし時計を
止めようと、寝ぼけながらに探す。
ジリリリリリリリ
「あーもう、うるさい。」
手探りで頭の上にある時計を探すが、なかなか見つからない
こういうのは、寝覚めが悪いやつへのテンプレって奴なのかもしれない
カチッ
「ねむい...学校だるい...」
窓から刺す日差しが自分に向かないようにカーテンを閉め直していると、下の階から母の声が聞こえてくる。
「龍夜ー!!早く起きなさい!遅刻するわよー!」
まだ寝ぼけている自分を、声で叩き起しに来ている母に少しの苛立ちを覚える。
いつも同じような起こし方じゃなくて、もうちょっと優しく、すぐ目が覚めるような楽しい起こし方はないもんかね
「はいはい、朝から元気ですね、うちの母は。」
まだ重たい体を起こして、フラフラと下の階に向かう
あぁ、そうそう、自己紹介がまだだったね。
俺の名前は、【加藤龍夜(かとうりゅうや)】
くだらない毎日をダラダラと生きている17歳だ
え?誰に自己紹介かって?
一応テンプレに乗ったのさ
――――――――――――――――――――
【加藤龍夜(かとうりゅうや)】
(年齢)17歳
(好きな食べ物)フライドポテト
(特技)ゲーム
黒髪で前髪が目にかかる位の長さ
瞳の色は黒
顔は美形、性格は常に脱力気味
勉強は出来るが、やる気を出さない
所謂、本気を出していないだけ系男子
友達は少ない方だが、嫌われている訳では無く、寧ろ、人気は高い方だ
勉強は中の上で、所謂器用貧乏
なんでもそつ無くこなすが、これといって突出したものはない
1つ下に妹がいて、その妹のことを病的なまでに溺愛している
この物語の主人公
――――――――――――――――――――
居間から漂う、味噌汁の匂いにお腹が反応する
味噌汁は、やっぱり朝ごはんの定番だよね
寝起きであの塩っ気を体に取り入れると染みるんだよな〜
「もう!毎日毎日遅刻ギリギリに起きて!
たまには早起きしたらいいんじゃない?」
この人は俺の母、【加藤亜月(かとうあずき)】
毎日飽きずに俺を起こしてくれるおかげで、遅刻はしたことは無い。
父親が蒸発してから女手一つで俺と妹のことを養ってくれている尊敬できる母親だ
――――――――――――――――――――
【加藤亜月(かとうあずき)】
(年齢)38歳
(好きな食べ物)もつ鍋
(特技)料理
長い黒髪をポニーテールに結んでいる
瞳の色は黒
実年齢より15歳下に見えるくらいの美人
若い頃から姿が何も変わっていないとか
子供たちとは友達のように仲が良い優しいお母さん
夫に蒸発されてから、子供2人を養うために、パートと飲食業を掛け持ちしていたが、過労になり倒れたことがある
今は、その時に助けてもらった恩人の会社で働いている
――――――――――――――――――――
「そういう母さんも毎日同じ起こし方で飽きないね」
朝から口うるさい母に嫌味を込めて言葉を返す
「お兄ちゃんまーた寝癖やばいよ」
この子は【加藤智咲(かとうちさ)】
容姿端麗才色兼備、なにをやらしても天才
大人しいけど、誰からも好かれる
俺の一個下の愛してやまない可愛い妹だ
――――――――――――――――――――
【加藤智咲(かとうちさ)】
(年齢)16歳
(好きな食べ物)甘いもの全般
(特技)暗記
黒髪のセミロングで、前髪ぱっつん
前髪には兄から貰ったピンをいつも付けている
瞳の色は黒
大人しい性格だが、少しふわふわしていて、そのおかげで誰からも好かれている。
小さい頃から龍夜に引っ付いて遊び回っていたおかげで、兄に兄妹以上の愛がある
そのせいで、兄のことになると異常な反応を見せる
――――――――――――――――――――
「おはよう妹よ。今日もすこぶる可愛くて
お兄ちゃんは学校に行きたくなくなってきたよ」
「まーたそんなこといって
早く準備してね、一緒に学校いこ」
妹からの愛らしいお誘いに気分が上がり、学校へ行く気力がみなぎってきてしまった
だってそうだろう?こんなに可愛い妹が、何も面白味のない学校に一緒に行ってくれるというだけで、学校への意識も180度変わるに決まっている
校長に直談判して同じクラスにしてもらえないだろうか
「智咲ももう高校生なんだし、お兄ちゃんと一緒に学校行くとか大丈夫なのかー?」
こんなに俺に懐いてくれているが、妹ももう16歳の年頃の女の子だ
それに、1歳しか変わらないってなると、年子の妹からは嫌われるのが兄のテンプレなのだ
うちの妹はどうなのかと心配で聞いてみる
「いいのいいのー、お兄ちゃんうちのクラスの子からめっちゃモテてるし、逆に自慢したい」
「ゔっ!そ、そんな可愛いことを言わないでくれ!兄は死ぬぞ!」
妹のまさかの返しに俺のハートが砕ける寸前だった
自分が妹のクラスの女子からモテているという情報より、自慢したいと妹が思ってくれているという事がなにより破壊力が凄かった
「もう、朝からイチャイチャしないで早く行きなさい!」
母がお怒りなので、そろそろ学校へ行く準備をしなくては
部屋に戻り、ぴっしりとアイロンが掛けられた制服に着替える。
うちの高校は黒色のブレザーに白色のネクタイと、中々厨二心を擽られるくらいの白黒さだ
そして、このネクタイが本当に煩わしい
今では珍しい、ちゃんと結ぶタイプのネクタイだ。
なぜ、こんな旧時代的な制服をまだ使っているのだろう、ボタンで付けれるやつでいいだろうボタンで
「ネクタイ結ぶのくらい可愛い嫁さんにでもしてもらいたいな〜」
そんな、男が必ず1度は妄想したことがあるであろう切実な願望を呟いていると
コンコンッ
「お兄ちゃん、早く行くよー」
可愛い可愛い妹のお迎えだ
「悪い悪い、待たせちゃったな」
まだ真新しい制服を身につけている妹
上のデザインは男子の制服と余り変わらないが、重要なところが違う
黒のブレザーに、なんと、白のリボンだ
男が着たら厨二感満載だった制服が、リボンに変わるだけでここまで清楚感が出るだろうか
極めつけは、膝上のスカート、けしからん
黒髪黒目の妹が着ると清楚パラメータが振り切れるほどの素晴らしい制服だ
「お兄ちゃん、見すぎ」
「ああ、ごめんごめん。つい」
見つめすぎていたか、つっこまれてしまった
しかたないだろう、可愛いは正義。これ日本の摂理
気のせいか、少し赤くなっている妹と一緒に玄関へと向かう
猫のだいずさんがいつも、家を出る時、玄関まで見送ってくれる
だいずさんは、俺が中学に上がってすぐ、まだ小6だった妹と一緒に家に帰っていた時に出会った
台風間近で大雨だった日に、俺たちの家から少し離れた交差点の電柱の近くに捨てられていて、このままでは危ないと思い家に連れ帰ったのだ
当時は、母から反対されたが、妹が押し切って家で飼うことになった
今では、母より早く見送ってくれる大事な家族だ
「だいずさんいってきます」
「帰ったらチュールあげるからな〜」
そういうと、だいずさんは嬉しそうにニャーと鳴いて、キッチンに戻っていく
今日も綺麗な鯖とら柄と大きなおしりが輝いているよだいずさん
「母さーん!行ってきまーす!」
「いってきまーす」
キッチンにいる母からの元気な行ってらっしゃいを聞いて家を出る
学校は家から意外と近いから、いつも歩きで行っている
「はぁーー、こんな暑い中学校とかやだやだ
自転車でかっ飛ばしたいなー智咲ー」
「うちの学校は人が多いから近い人は自転車だめだもんね、仕方ないよ」
俺たちが通っている学校は上野部かみのべ高校という
生徒数が、全学年合わせて1000人超えの、近所ではとても大きい高校だ
偏差値はそこまで高くないけど、全国模試でTOP3に入るほどの頭脳を持つ人を2人も抱えている
まあ、俺たちみたいなやる気のないヤツらばかりなので、偏差値は一向に上がらないけど
人数が多いからか、駐輪場を使える人が限られていて、3年生と家が遠い人に限る
3年生はいま修学旅行中なんだから少しくらい使わせてくれてもいいのにな
「そうはいってもなー、智咲だって自転車がいいだろー?」
「私は歩きの方がいい」
「なして?」
「自転車だと足が太くなるからね」
我が妹はついにそんなことまで気にするようになったか...いまでもとんでもない美少女なのに...
彼氏なんて許さないぞ、お兄ちゃんは。
もし、自分の妹に彼氏なんて出来たらなんて考えるだけで目から血の涙が出そうだ
そんなくだらないことを考えていると
後ろの方から声が聞こえる
「おーーーい!龍夜ー!智咲ー!おはよー!」
あぁ、朝からやつに会うとは...
「おはようひなちゃん」
「ひな、お前はほんと朝から元気だな」
「龍夜こそ、ほんと朝からだらしないわね」
この、元気しか取り柄の無さそうな子は【日高ひな(ひだかひな)】
智咲と同い年で、家が近く、母親同士が仲良くて、小さい頃から一緒に育った幼なじみ
こんな子と智咲が合うのかとたまに心配になるが、2人はすごい仲良しだ
あと、年上の俺には敬語使いなさい、君は
――――――――――――――――――――
【日高ひな(ひだかひな)】
(年齢)16歳
(好きな食べ物)寿司
(特技)スポーツ全般
薄い金髪のサイドテール
瞳の色は暗い青色
ギャル系の美少女
スポーツ全般出来るが、勉強は絶望的にダメ
智咲とは小さい頃からずっと一緒にいて
お互いに心を許しあっている親友
龍夜と同い年の兄、琥太がいて、幼い頃から4人で遊んでいた
俗に言う元気っ子で、周囲からの好感も高く、友達が多いが、いつも智咲と一緒にいる
――――――――――――――――――――
「ひな、今日はあいつは一緒じゃないのか?」
「ん? ああ、琥太兄なら今日は行かないってさ」
「琥太くん、学校休みすぎじゃない?」
「あいつ!俺だってサボりたかった!」
「お兄ちゃんはダメだよ、私がいるから
サボりは絶対させない」
ひなちゃんには、琥太こと、俺の親友【日高琥太(ひだかこうた)】という兄がいる
小さい頃から4人で育ってきたが、琥太は少しヤンチャな面があり、学校も多くて週3くらいしか来ない
しかし、家族を大事にしていて、中学の頃、ひなが周りの男子から虐められていた事があったが、その時にはその男子数人をボコボコに殴り謹慎になってしまったことがある
まあ、その男子たちは、ひなのことが好きで虐めていたけど、エスカレートしてしまった、みたいな感じだったんだが...
その男子たちは琥太が怖くて、それから一切近づけなかったみたいだけど
琥太の話や、最近寒くなってきたねなど、たわいもない会話をして歩いているとあっという間に学校に着いてしまった。
「じゃ、私たちはこっちだから、お兄ちゃん、ちゃんと勉強してね」
「おう!智咲もがんばれよ!ひなは寝るんじゃねぇぞ」
「寝ないわよ!龍夜じゃあるまいし!」
何を言っているんだひな君、俺は授業中寝たことはないぞ
軽く2人と話して、妹と離れる寂しさを抑えて自分の教室へと向かう
ガラガラッ
「おはよう龍夜くん!」
「おーおはよー鈴音」
教室に入る俺に勢いよく挨拶してきたのは
同じクラスの【佐渡鈴音(さわたりすずね)】
誰とも気兼ねなく会話出来る可愛らしい子だ
所謂、愛されキャラってやつだ
――――――――――――――――――――
【佐渡鈴音(さわたりすずね)】
(年齢)17歳
(好きな食べ物)オムライス
(特技)裁縫
茶髪で下目に結んだツインテールのゆるふわ系女子
瞳の色は髪と同じブラウン
誰とでもフレンドリーに話し、周りへの気配りも上手いので、みんなからの人気も高い
学校内にファンクラブがあると噂があるほどの美少女
高校1年生の時にある事件が起き、その時に助けてくれた主人公に好意を寄せている
――――――――――――――――――――
「龍夜くん、今日も遅刻ギリギリだね!」
「間に合ってるから大丈夫大丈夫」
「もうちょっと早く来てくれたら、もっと話せるのに...」
朝からそんなに話したいことがあるなんて
鈴音は元気だな〜
俺にもその元気を分けて欲しい
なんて眠くて止まりかけの頭で思っていると、鈴音の後ろから、冷たい声が聞こえた
「コイツは何言ってもだめよ、鈴音」
「げっ、雅。」
「おはよう龍夜。げってなに?私がいたらだめなのかしら?」
たった今不機嫌になってしまったこの美人は
鈴音の友達の【伊集院雅(いじゅういんみやび)】
文武両道で、ドがつくほどの真面目
トゲトゲしさを少しでも抜いたらもっとモテるだろうに
おっと、今のはここだけの話で
――――――――――――――――――――
【伊集院雅(いじゅういんみやび)】
(年齢)17歳
(好きな食べ物)刺身 貝は苦手
(特技)全ての教科
黒髪ロングでクール系美人
瞳の色は薄い紫
大手企業のお嬢様で、この学校の生徒会長もしているほどの完璧超人
真面目な性格だが、鈴音とはウマが合うのか、常に一緒にいる
剣道部の主将をしているが、彼女の厳しさから辞める人が続出しているとか
龍夜に対して冷たいが龍夜のことを嫌っているわけではなく、鈴音の好意に気づいていない龍夜に厳しい目を向けているだけ
――――――――――――――――――――
「いいえ、全然ダメじゃないですよ、雅様」
「様ってなによ、様って」
いいだろう?様くらい
だって、お嬢様じゃん。お金持ちじゃん。
俺みたいな一般家庭の息子からすると羨ましい限りだ。少しくらい毒吐いても許されるだろう
「2人とも〜朝から喧嘩しちゃだめだよ〜」
少し涙目になっている鈴音に仲裁してもらっている途中で先生が教室に入ってきた
「おーい、席に着けー、ホームルーム始めるぞー」
先生も朝から大変だよなー
俺だったら、こんな大勢の元気真っ只中の高校生の面倒なんて見たくないし、その歳になってまで勉強とかもしたくないわい
そんなことを思っている俺に
隣の席でモジモジしている鈴音が話しかけてきた
「龍夜くん、今日のお昼一緒に食べない?」
「んぁ?あ、あぁ、わかった」
突然の美少女からのお誘いに、陰キャ丸出しの反応で返してしまった
当然だろう、隣の席の美少女が、少し顔を赤らめて上目遣いでモジモジしながら「今日のお昼一緒にたべない?」とか、俺だったから無事だったものの他の男子なら、鼻血出しまくって、登校して直ぐなのに速攻で保健室か病院行きだぞこれ
「やった!授業がんばれるよ〜」
そう言ってニコニコしている鈴音を見て、俺も笑顔で返す
よかった、さっきの陰キャ丸出しの返しはバレていないみたいだ
そんな俺の心配を他所に、先生が出欠確認をして何事もなくホームルームも終わって、だらだらと午前の授業を受けていたらあっという間にお昼休みになった
「龍夜くーん!お昼たーべよ!」
「あぁ、そういえば約束してたな」
「もう!忘れちゃってたの?ひどいよ!」
「ごめんごめん、って、雅も?」
鈴音に謝りつつ、後ろから冷たい視線を感じたので、彼女も同行するのかと、聞いてみる
「なによ?私がいたら不都合でもあるのかしら?」
また怒らせてしまったようだ
最近母さんに言われたなー、「あんたは人を怒らせるのが上手」って、なんだよその特技、いらねぇよ
「全然!!そんなことはありません!!」
土下座までは、男のプライドが邪魔して出来なかったが、これでもか!っというくらいに雅に謝る
「仲良くしよーよーー!ねっ!ねっ!」
ありがとう、鈴音。俺はお前がいるおかげで、雅に殺されていないのかもしれない
おっと、鈴音たちに聞くのを忘れていた
「妹とその友達も一緒にいいか?いつもお昼は一緒に食べてるんだ」
お昼は決まって智咲とひなと、学校に来ていたら琥太との4人で食べている
俺も琥太も所謂シスコンってやつで、智咲とひなもブラコンってわけだ
仲良しなんだからいいだろう?
決して他に食べる友達がいないわけじゃないぞ?こうして誘ってもらってるんだし
「全然大丈夫だよ!龍夜くんの妹さんって、あの可愛いって有名な子だよね!!楽しみだなぁ!」
いつも妹とお昼ですか?ってシスコン具合を笑われるかなと思っていたが、心配損だったな
「いつも妹とお昼食べてるの?シスコンじゃない」
あ、しっかり笑われました。
なんだよこのお嬢様、俺の事嫌いなの?
そんなこんなで、智咲たちにもスマホで連絡を取って、大丈夫かと聞いてみたが、速攻で「お兄ちゃんのお友達楽しみ、すぐ行くね」とウキウキの返事を貰い、みんなで屋上で食べることになった。
「わぁぁぁ!この子が妹さん!?かんわいぃぃ!」
そう言って、智咲に抱きつく鈴音
女の子は距離感近いなぁ、うらやま、ゴホンゴホンッ 失礼、微笑ましいなぁ〜
「こ、こんにちは。妹の智咲です。兄がいつもお世話になっております。」
「その友達のひなです!今日はご一緒させて貰ってすみません!」
「あの龍夜にこんな可愛い妹がいるなんて信じられない。DNA鑑定とかしてもいいかしら?」
「おいおい、俺と智咲は正真正銘の兄妹だ。鑑定とかするまでも無いわ」
雅め、いつも俺のことどう思ってんだよあいつ
さすがの俺のハートもヒビ入ったぞ?
似てるところばかりだろう?ほら、この綺麗な目、そっくりだろ?
「初めまして!龍夜くんと同じクラスの佐渡鈴音です!」
「伊集院雅よ。2人ともよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします。鈴音さん雅さん」
「よろしくおねがいしっまーす!」
「かわいすぎるーーー!これからたくさん仲良くしていこうね!!」
お互いに自己紹介し合ってて、女子会ムードが出てきてしまった...なんとも居ずらい雰囲気
俺が空気と化してきているので、4人から少し離れたところに座り、母が作ってくれた愛情たっぷりのお弁当を開く。これが俗に言うぼっち飯ってやつか
「お兄ちゃん、なんで離れるの?」
我が可愛い可愛い妹は、ぼっち飯寸前の兄を気遣い、隣に座ってお弁当を開いた。なんと良い子...
お兄ちゃんは妹の優しさに涙が止まらないよ...
「可愛い妹にお友達が出来るのを邪魔しちゃ悪いと思ってなー」
「お兄ちゃんは空気読みすぎ」
「それが俺のいい所さ」
実は女子会ムードを避けていた、なんて知られたら怒られそうなので、それっぽいことを言って誤魔化す
すると、智咲は俺の顔をじーっと見つめて無言で弁当を食べ始めた
え?これバレてる?どういう反応?それ
「そういえば、今日はなんでお昼誘ってくれたんだ?鈴音」
鈴音と雅とは1年からクラスが一緒だったが、お昼ご飯に誘われるのは初めてだったので、なにか理由があるんじゃないかと思い聞いてみる
「あ、あぁ!えっとね!その、」
「鈴音、しっかりしなさい」
なんだ?なんか鈴音の顔がどんどん赤くなっていってるような
「えっとね、今度さ、一緒に映画見に行きたいなーって、誘おうと思って...」
鈴音がそう言った瞬間、なにかを察知したのか、智咲とひなが顔を見合せてその場を立った
「あ、あー、えっと、私たちはちょっと運動場でも眺めてくるね!!」
なんだ?ひなが焦ってるように見える
運動場に好きな人でもいるのか?
「ち、ちがうの!ひなちゃん!大丈夫だから!」
「お構いなーく」
そう言って、智咲とひなの2人は運動場の方に走っていった
「どうしたんだ?あの2人」
「で!!で!!どうかな!?龍夜くん!!」
焦ったような声色で鈴音が聞いてくる
「映画かー、どんな映画?」
最近の映画なんて何があるんだ?
俺の中では、崖の上にいるやつで止まってるんだが
「そ、それはまだ決めてなくて、2人で決めたいなーって」
「そっか、じゃあ、いつにする?」
「え、い、いいの?」
「断る理由がないだろ、どんな映画があるのか興味あるし」
最近の若者の映画事情も知っておかないとな
今では、スマホで映画を見る時代になっているみたいだし、映画館ってのがまた良いな
ついでに映画だけじゃなくて、若者の流行りも教えてもらおっと
「や、やった!!えっと、じゃあ、次の」
いつ映画を見に行くか鈴音が言おうとしたその時
「龍夜!!こっちきて!!」
運動場を見に行っていたひなの大きな声が聞こえた
怒っているような、いや、これは焦っているよな感じか?
どっちにしても、なにかあったのかもしれない
「なんだ?なんか見つけたのか?」
ひなの方を見ると、智咲もこっちを見て大きく手を振って呼んでいる
よっぽどのことがあったのだろうと思い、急いで鈴音と雅を連れて、2人の元へ向かう
「どうしたんだよひな、そんな大声出して」
「お兄ちゃん、あれ....なに....」
震えた声で言う智咲が正門の方を指さした
智咲とひなは指さした先にいるそれを見て固まっている
「なに!?なにあれ!?」
鈴音と雅もすぐにそれを発見して、驚愕した表情で見つめる
「なんだよ...あれは」
そこには、2人組の、小学生位の身長で、肌が緑色の人間らしき物が、正門を殴ったり蹴ったりしながら開けようとしていた。
激しく殴っているからか、正門が形を歪めていっていた、あの体にそれ程の力があるとは思えない
目の前の異様な光景に、俺を含めて全員が、信じられないという表情で固まり、言葉も出ない
だって、そうだろ?
人間のような緑色の小さい生き物って、そりゃあれだろ?みんな大好き異世界漫画に出てくる
「ゴブ....リン....?」
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