5ー5

こうして開戦した『エルシード解放戦線』。


攻城側の解放軍と、籠城側の漆黒&エルシード軍。

単純な兵力は、籠城側のが多い。

しかし、攻城と籠城では攻城側の方が戦略的に有利ともいわれる。

条件は5分と5分、そう言ってもいいだろう。


しかし、漆黒の軍勢には『アンデット兵』という不死者の軍がいる。

倒れても何度でも湧いて出てくる兵たちの存在は、解放軍にとって脅威となるだろう。

そして、何より漆黒の軍勢の将はゼルド。

『四将』と呼ばれるアガレス直属の将のひとり。

その力は、言わば一騎当千。

彼をどう攻略するかが、この戦いの鍵ともいえる。



「オラオラオラオラ!!テメェらアンデットなんぞ、お呼びじゃねぇんだよ!!」



そんな戦いで、解放軍の先陣を切ったのは、軍を持つことを望まなかったゼロであった。

次々とアンデットたちを切り伏せ、叩き伏せて一直線に城へと向かう。





「出来るだけ敵の戦力を減らしつつ、こっちの戦力を減らさない。そのためにはいかに少ない兵で多くの敵兵を沈黙させるか、だろ。……いるじゃねぇか、ここに適任がよ!」



ゼロが軍を持たなかった理由、それは先陣を切って進撃するなら、自分についていく兵など少ないほうがいい。

周囲の兵の事を気にかけながら戦うよりは、自分の事だけ考えて戦った方が思い切りやれる。




それはゼロの身勝手な意見などではなく、戦略的に考えた一手であった。




「とりあえず……城門に行くくらいは俺ひとりで充分!!……テメェ等アンデット相手ならな!!」




そして。




「まったく……若いのう。まぁ、若い事は良い事じゃて。せいぜい暴れて敵軍を困らせてやるがよい。……妾はここでひとつ、大きな花火でも上げて援護しようではないか。」




『一騎当千』は漆黒の軍の将・ゼルドだけではなかった。



『英雄』として名を馳せた、大魔導士・ヨハネ。

彼女も解放軍に協力しているのだ。



「聞け!全ての元素を司りし精霊たちよ!妾の声に応え、邪なるものを滅せよ!!」



ヨハネは『魔導士の祖』とも言われる存在。

殆どの魔法を無詠唱で発動できる。

そんなヨハネが詠唱する魔法、それは……



「絶対聖域!!」



『禁呪』と呼ばれる類の極大魔法である。



ヨハネの詠唱により、エルシード城周囲に光の柱が立ち上る。

その柱同士が光の糸を繋ぎ、大きな檻を作り……。



その内側にいる、『全てのアンデット』を消し去った。



「……ったく、こんな裏技アリかよ……。」



ヨハネの禁呪の中に居ながら、『アンデットではなかったので』何も影響のなかったゼロ。



アンデット兵たちが消滅してくれたおかげで、すんなりと城門までやってくる。



「さて、と。そろそろ頃合いか。俺は少し休ませてもらうぜ!」


城門に達したところで、エルシード軍・黒騎士団がゼロを迎え討とうと出撃する。


「こんなん、ひとりで相手してたら命がいくつあっても足りねぇや。頼むぜ~!」




ゼロはそのまま、城門を避け。迂回する。




「さて、妾の出番じゃの。魔導士兵よ、後退しつつ魔法で彼奴等を牽制するのじゃ!!」



そして、ゼロの後方に控えていたのは、ヨハネ率いる魔導士団。

ゆっくりと迫ってくる黒騎士団に向かい、次々と魔法を放つ。


もともと、エルシードは騎士国家。

白兵戦に絶対の自信を持つも、遠距離攻撃をする相手に苦手意識を持っている。

古風な考えの国家幹部、つまり貴族たちのお陰で、『魔法』という新しい風を国内に呼び込まずに現在までやってきたのだ。



その古風な貴族の考え方による軍備が、ここにきて裏目に出た。



黒騎士団の行軍が目に見えて遅くなる。

魔法防御に優れる騎士の鎧・盾も、波状攻撃を防ぎきることは容易ではないのだ。



「攻め急ぐな!!少しずつ後退しながらカミューの軍と合流するのじゃ!」



それでも百戦錬磨のヨハネは攻め急がない。

手柄を急がず、『軍としての勝利』のための戦略的後退。

結果、解放軍魔導士団を追撃しようと前のめりになる前線と、未だ城門を出られない後方軍の間がたちまち間延びする。




「撃ち方……始め!!」


次に合図を出したのはガーネット。

『砦の守備』として待機していたのは僅か一時。

ガーネットは敵軍が砦の襲撃という作戦を取るか、徹底した迎撃に出るかを静かに見極めていた。



結果、迎撃優先だと言う事を悟ったガーネットは、弓兵のみを連れ、エルシード城東側に位置。


間延びした黒騎士団の中央を、側面から狙ったのである。




「仕留めようとは思うな!我が隊の狙いは敵の分断!魔導士団を援護しつつ、敵の中央のみを撃ち続けるのだ!!」



前から、横から……

解放軍の攻撃を受け、前線と後続とで指揮系統に乱れが出てくる。


このまま一気に進撃しようとする前線と、一度籠城しようとする後続。



その意識の違いが、軍の中央に溝を作った。


「弓兵!今度は後方の軍を徹底的に撃て!!」


「魔導士団は前方の軍に一斉放火じゃ!!」




黒騎士団の陣形が乱れたところを、ヨハネもガーネットも見逃さない。

それぞれの部隊を前方・後方それぞれの軍の攻撃に集中させる。




完全に黒騎士団は城門付近で立ち往生してしまった。



「さて、真打登場じゃ。一気に攻めあがるぞ!」



ヨハネがひときわ大きな火球を城門に放つ。

轟音と共に、後方部隊が吹き飛び、門が開く。



「よし、白・黒混成軍、行くぞ!!」



統制が取れず、士気が低下した黒騎士団に波状攻撃をかけるのは、カミュー・シエラの解放軍白騎士・黒騎士混成軍であった。




「どちらが正規軍かなど、この戦いにおいて無意味!我々は愛すべきエルシードを漆黒の軍勢などに蹂躙させないために戦うのだ!諸君らも、己の信念のために戦え!!」



先陣を切るのは、リーダーのカミュー。

リーダーが自ら先陣を切ることを、軍の幹部たちは反対したが、カミューをシエラが援護することを条件に渋々承諾した。



「シエラ様が私の副官など、恐れ多いのですが……。」



それが、シエラがカミュー率いる軍に配属されている最大の理由であった。



「所属など気にしませんわ。今は身分など些細なこと。解放軍の勝利のために、全力を尽くしましょう!!」



そして、ようやくカミュー率いる混成軍と、城を守護する黒騎士団が衝突する。


もともとは同じエルシードの騎士団。

実力自体は伯仲していた。

しかし、両軍の明暗を分けたのは『士気』。


翻弄され、分断された黒騎士団が、『エルシード解放』という共通の意思の元協力し合う解放軍に敵うはずもなかった。



「相手の被害も最小限に抑えるのだ!この国を解放したら、共に手を取り再興する『同志』なのだから!!」



カミューはエルシードの軍に関しては、『殲滅』ではなく『無力化』するよう全軍に指示していた。それが出来る理由は……



「カミュー……あいつ、あんなに強かったのかよ……。」



戦域から離脱し、『別の場所』から戦況を見守っていたゼロが舌を巻く。


気弱なイメージばかりが目立っていたカミューであったが、その剣の実力は『エルシード屈指の剣豪』と呼ばれるほどであったのだ。




「さすがカミュー様。だてに黒騎士団の副長を務めてはいませんね。」



シエラがカミューの雄姿を見て微笑んだ。



解放軍の快進撃は続く。


城門をいとも簡単に破った解放軍は、そのまま城内へと侵入する。


もともと、エルシード・漆黒の軍勢混成軍の求心力は高くない。

よって、士気も高くない。

ひとたび崩されてしまえば、同じ目的のもと一枚岩になった解放軍の相手ではなかった。



「くそっ!!引け!!謁見の間の前で守備を固めろ!」



指揮官が口々に撤退の命令を下す。


『撤退』

この言葉は、戦略的であろうとなかろうと、兵の士気を下げ、体力を消耗させる。



「深追いはするな!!エルシード軍に限っては、投降する者は例外なく受け入れろ!即、戦闘に参加させなくていい!砦に下げ、守備隊に参加を要請してくれ!」



前線に立ちながら、兵に指示を飛ばすカミュー。

もう、開戦当時のような頼りなさは消えていた。



(そう。もともと軍を率いる素質はあったのです。貴方は他の人の事を考えすぎただけ。地位や名誉など、戦う者達にとっては栓無き事なのです。本当に重要視されるべきは……)



カミューの指揮のもと、解放軍は統制の取れた進軍を見せる。




「……その人望。人を動かすのですから、人の心を充分に持ち合わせていないとそれはかなわない。カミュー様、貴方は……上に立つべき人間だったのですよ。」



そんなカミューの後ろ姿を、シエラは誇らしげに見ていた。




そして、解放軍は一気に謁見の間へと進む。

しかし、そこには……



「退却に次ぐ退却は、ここに兵を集めるためだったのか。」



広々とした謁見の間の前・ホール。

そこには、残されたエルシード軍が集結していた。



「……コレ、こんな密集した中で戦うっていうのか?」


カミューが苦笑いを浮かべる。


守る方は、とにかく密集して目的地を守り続ければいい。

しかし、攻める方は、密集していればいるほど武器が振るいづらく、また同士討ちや接触による事故の恐れもある。



「……退いてくれ。君たちだって……このままでは無傷では済まなくなるんだぞ!!」


カミューが大きな声でエルシード軍に撤退を要求する。



「で……できません。そんなことをしたら……。」



しかし、守る側のエルシード軍には、退けない理由があった。



「家族が……いるんです。我々が退いたら……家族は、私はこの国で生きていけない……!」


貴族たちが指揮を執るエルシード軍。

上官の命令は文字通り『命を懸けるべき指令』なのだ。



攻防というよりは、『もみ合い』。




もともとは同じエルシードの国民同士。

ましてお互いに、いがみ合い対立したわけではない。

突如現れた『暴君』強制されただけ。


本当は誰も、『殺したくはない』のだ。


殺したくはない。

しかし、彼らはカミュー達解放軍を足止めしなければならない。


自国の象徴であり、槍聖アイラの血筋である、白騎士団長エルザの処刑が行われる、その時まで。




「頼む!!通してくれ!!」


「なりません!!どうか……どうか我々のために諦めてください!!」




エルザを救出し、エルシードを解放したい解放軍と、家族のために阻止しなければならないエルシード軍。



どちらも、『譲れない戦い』なのだ。




膠着状態の続く、謁見の間前。



「これでは……埒があきませんわね……」



シエラが、この進まない時間を惜しむ。


その時。




「……開けてやれ!!」



謁見の間の中から声がした。

両軍の動きが止まる。



「……ゼルド、か。」



カミューの背に緊張が走る。



「オラ、さっさと入って来いよ。……面白いもん、見せてやるぜ?」


歪んだ笑みを浮かべているのが分かるような、そんな声。




「……開けてくれ。」



カミューがもう一度、静かにエルシード軍に言う。

今度は抵抗せず、まるで海が割れるように道が出来る。



「……行こう。」



カミューとシエラ、そして解放軍たちが謁見の間に入る。





荘厳な造り。


国王が客人と謁見するには、あまりにも広すぎる、その部屋。

本来なら、入り口から玉座までに白・黒両騎士団が並ぶのだが……



玉座までの間に、騎士は一人もいなかった。




「よぉ、やーーーーっと来たか。遅いぜ?」



そして、国王が座るべき玉座には、ゼルドがいた。



「早くしねぇと、コイツ……死んじまうぜ?」




そして。

本来、白・黒両騎士団長が国王を挟むようにして立つ、その場所には……


鎧ではなく、純白のドレスを着たエルザが、騎士に支えられ、かろうじて立っていた。




「……エルザ!!」




駆け寄ろうとするカミュー。

その前に立ちふさがるゼルド。



「……連れていけ。」



ゼルドは騎士に合図をすると、騎士はエルザを連れて玉座後ろの階段を上がっていく。


「待て!!」


「……テメェが待てよ。」




ゼルドは、カミューの前でにやりと笑った。



謁見の間の階段を上がると、エルシード上の最上部・バルコニーにたどり着く。

広く壮大なバルコニーは、民にも開放され、『恋人の聖地』などと言われ人気だった。


そんなバルコニーへ連れ去られていくエルザ。



一刻も早く追いたいカミュー。

通すわけにはいかない、ゼルド。


様々な思いが、そこには渦巻いていた。




「どけ!!」


「だーから、通す気はねぇって言ってるだろうが。どうしても通りたければ俺を倒してから行くんだな!」



ゼルドが大剣を構え、立ち塞がる。



実際、ゼルドにとってエルザの命など、ましてこの国の行く末などどうでも良いことなのだ。

なぜ、ゼルドがカミューの前に立ち塞がったのか。




『面白そうだから』



一般兵士より、カミューが強そうだったから。

そんなカミューがエルザを追いたがっていたから。


立ち塞がれば、怒りや焦りで実力以上の何かが生まれるかも知れないと、そう思ったから。


だからこそ、目の前にある『玩具』で、ゼルドは遊んでみたくなったのだ。




「……望むところだ。」



カミューは意を決し、長剣をゼルドに向ける。


「……ほぅ。」



ゼルドの口元が、歓喜に歪む。


ずっと主張することこそなかったが、カミューの剣技はエルシード屈指。

副団長に甘んじてきたのは、『立場を本人が重要視していなかったから』。

この騎士団国家エルシードが、本当に騎士の実力で団長。副団長を選任していたとしたら……。


「……お前ぇ、エルシードで一番強いな。」



そう、黒騎士団長の座は、カミューにあったといっても過言ではない。




「それでも、おそらくお前には勝てないだろう。……たとえ勝てなくとも、私は進む。負けても進まなくてはならないんだ!」



珍しく意気込むカミュー。

そんなカミューに、ゼルドは笑いながら言った。



「言ってることが滅茶苦茶じゃねぇか!!負けても進むって……、死んじまったら、進めねぇぜ?」



そして、大剣を担ぐように構える。



「大丈夫だ、苦しまねぇし、痛くもねぇ。なんせ頭が一撃で弾け飛ぶんだ。痛いも苦しいもねぇだろ。」



その大剣。

ゼルドの身の丈ほどもある大きなもの。

そしてゼルドの巨体、鍛え上げられた筋肉。


あの体格で大剣を振られたら……



「一撃で致命傷……確かにそうだな。」



当たった時点で戦闘不能。


カミューの背筋に、冷たい緊張感が走った。


「なぁにビビってるんだよ。これから『お姫様』を助けに行こうってのによ。俺なんて単なる門番、そう思えばどうにでも戦えるじゃねぇか。」



攻撃開始のタイミングをうかがっていたカミューに対し、余裕綽々なゼルド。


戦闘力だけ考えれば

どう転んでもゼルドのほうが上。

しかし、ここでゼルドを倒すか足止めをしなければ、これからどんどん、芋づるのように

不幸は重なっていくであろう。



「く、くそ……」



下手に飛び込んでいったら、おそらくすぐにカミューは命を落とすであろう。



しかし、いつまでも様子を見ているわけにもいかない。

時間の経過は、エルザの死に直接つながっていくのだ。



(倒せなくてもいい。数分だけでもゼルドを足止めできれば……)



カミューの心の叫び。



無理にゼルドを倒せなくとも良い。

エルザを救出する時間さえあれば、エルザさえ助けられれば、カミューにとってゼルドとの戦いの勝敗は些末事であった。



無駄に流れていく、時間。




(仕方ない……こうなったら、私がゼルドと戦っている隙に、私ではない誰かにエルザを助けてもらおう……)



時間の経過により、カミューは『自分をおとりにして、エルザを救出する作戦』を選択した。



カミューの足に、グッと力が入る。

あとは、自身の決意、それだけ。



「やめとけよ。『その役』、適任がちゃんといるじゃねぇか……。」



少しだけ呆れたような、そんな言葉はカミューの背後から聞こえた。

カミューが振り返ると、そこには……




「このデカブツの相手、俺が引き受けようじゃねぇか。」




ゼロが立っていた。




城門に向かって突撃したゼロは、途中で本体に場内への進行を任せて一旦離脱。

自身は体力の回復を試み、『来るべき時』に備えた。



その、『来るべき時』それは……



「デカブツの足止め、俺はその時のためにずっとここで息を潜めてたんだよ。似合いもしねぇ。」



それはシエラの助言だった。

戦いの中で必ずゼルドはカミューの行く手を阻むだろう。その時、ゼルドの足止めをして少しでも長く時間を稼ぐ。それが出来るのは解放軍ではゼロ以外にあり得ない、と。




「なんだぁ?お前……死にたいのか?お前ごときが俺に勝てるわけがないだろう?」



笑いながら、ゼロに鋭い視線を向ける、ゼルド。


平凡な兵士なら、その視線で一気に戦意を失いそうな、そんな視線。

しかし、ゼロは……


不敵に笑った。



「ぜ、ゼロさん……」


思わぬ助っ人の登場に、嬉しさよりも驚きの方が増してしまったカミュー。



「こっちはストレスたまってるんだ、さっさと行けって。うちの軍の大将が、たかだか『門番』ごときにやられたんじゃぁ、カッコつかねぇだろうが。……任せとけって、この『一兵卒』によ。」



不敵な笑みを浮かべたまま、ゼロはゼルドに対して挑発的な言葉を並べる。



「ほう……テメェ、『一兵卒』にしては大層生意気な口を利くじゃねぇか。まぁいい、さっさとかかってこい。お前を消したらすぐに後追いかけてやるからよ。」



漆黒の軍勢。

あまりにも強大な勢力故、その将である男に、安い挑発など通用しないと思っていたカミューだったのだが、思いのほか、『ゼルドという男』は頭に血の上りやすい男だった。

ゼロの挑発が効いたようだ。


カミューから視線を外し、ゼロのほうに向き直るゼルド。



(……行け!!)



ゼロとカミューは、このタイミングを見逃さなかった。

アイコンタクトで同時に動き出すゼロとカミューは、まるでずっと前から一緒に戦っているかのような絶妙な動きの連動を見せた。




「……ちっ!」



ゼルドがカミューが先へ進んだことに気づき、舌打ちをする。



「おいおい……よそ見してると……」



ゼロが手にした魔剣に魔力を込めていく。

魔剣は淡い紫色のオーラをまとい、妖しく輝いた。




「……死ぬぜ!!」




そして、まるで弾けるように、一気にゼルドとの距離を詰めた。



「!!!」

「速い!!!」



ゼルドが驚きの表情を見せる。

そして、驚いたのは先に進もうとしていたカミューも一緒だった。



「早く行けって!!」


「あ、あぁ……」



一瞬動きの止まったカミューをゼロが急かす。

カミューはもう、迷わなかった。



(あれほどの力を隠し持っていたなんて……これなら、ゼルドに一矢報いることが出来るかも知れない……)



カミューと出会ってから、ゼロは本気で戦う機会がなかった。

カミュー自身、手練れの剣士だと思ってはいたが、部隊長クラスであろうと思っていたのだ。



そんなゼロの力を垣間見たのは、エルシード城への突入。

彼は一人で城門を突破して見せた。そして、ゼルドとの戦い。



「私は……一番頼りになる剣士を過小評価していたのかもしれないな……」



視界の端のゼロは、今は誰よりも……


……ゼルドよりも大きく見えた。

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