桜花の矜持
「花岡、本当に助かった。お前がやってくれなきゃ全滅もあり得た」
「そんな、いえ、自分の役目を果たしただけですから」
「それでも礼は言わせてくれ」
「はい」
明神隊長に続き山口隊長にもお礼を言われて、ちょっといたたまれない感じになってしまったけど,とにかく終わった。
亡くなったのは3名。
遺体の損傷も激しく、連れて帰るのは難しいとの判断でセイバーギアや遺品のみの回収となったが、この状況ではやむを得ない事だと理解できる。
理解はできるけど、人が目の前でなくなるのを始めて見た。
オーガロードの理不尽な力で文字通り潰されてしまった。
こういう事もあるのはわかっていたつもりだったけど、実際目の前で起こってしまうと感情のコントロールが難しい。
怖い。
悔しい。
情けない。
そして純粋に気持ちが悪い。
今にも吐きそうだけど、どうにか踏みとどまっている。
このまま、いつまでもここに留まってるわけにはいかない。
隊長たちの指示で、地上へ向けての行軍が始まる。
身体が重い。
メンタルの影響もあるかもしれないけど、本当に重い。
足が動かない。
腕が鉛のように重い。
「修太朗さん大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「少しペースを落とすよう頼みましょうか?」
「いえ、年のせいですから。本当に大丈夫です」
湊隊長が気を使って声を掛けてくれるが、他のみんなも疲れているのに俺に合わせてもらうわけにはいかない。
俺は、怪我らしい怪我はないけど、他の隊員は結構怪怪我を負ってる人も多い。
無傷の俺が迷惑をかけるわけにはいかない。
それにしても桜花さんはいまだにカメラを構えているけど、疲れたりしないんだろうか。
俺の視線に気が付いたのか桜花さんも声をかけてくれる。
「私の役目は、配信で記録することですから。亡くなった隊員も含めみんなの活動が正当に評価されるようみんなに知ってもらうのがわ私の仕事です。ですから今は修太朗さんを記録するんです。もちろん数字が伸びるとコレも入ってきますしね」
そう言っ手桜花さんが左手でお金のマークを示す。
みんな、それぞれの役目をはたしてここにいる。
わかってる。
亡くなった3人も自分の役目を全うしたという事だ。
俺にだってそういう日が来るかもしれない。
その時に俺は自分の役目を全うできるだろうか。
そんな事を考えていると余計足が重くなってくる。
「でたぞ! 飯尾、根室!」
「はい!」
ただ、こんな状況でも帰路でもモンスターは襲って来る。
気落ちしてる場合じゃない。
他の隊のみんなが戦ってくれている。
今は、目の前の状況に集中だ。
俺達は生きてる。
地上に戻らなきゃならないんだから。
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