そこにはカメラ

「ガアアアアアア」


もしかしたら威圧してるのかもしれないけど、この場においてそんなもの何の意味もない。

先に攻撃してきたのはオーガキング。

距離を詰めた俺に向かい手に持つ剣を振るってきた。


「遅い」


『リミットブレイク』の効果で、さっきまで追うことが困難だったオーガキングの動きがはっきりと見える。

オーガキングの一撃を避け、剣を持つ手に力を込め振るう。


「ギイイイイイイアアアアアアア」


俺の一撃によりオーガキングの右腕が落ちた。

いける。

痛みで動きが鈍ったオーガキングに剣戟を浴びせかける。


「グアアアアアアアアア」


いける。

強化された俺の膂力はオーガキングの肉を削り骨を断つ。


「ガアアアア」


はじめて使う中級魔法に身体が振り回されてる感はあるけど、この一戦だけなら無理やりにでも抑え込めばどうにかいける。

オーガキングの命を絶つ一撃。

無防備となったオーガキングの胸を貫く。

剣が纏った蒼炎が周りの肉を焼く。

剣を引き抜き一歩下がる。


「アア……」


オーガキングの目から光が消え、その場に倒れ消滅した。


やった。

倒した。

中級魔法は俺が考えているよりずっとすごかった。

あれほど脅威だと感じていたオーガキングをあっさり倒す事が出来てしまった。

『リミットブレイク』すごすぎないか?


「修太朗さ~ん」

「え?」


オーガキングを倒した余韻に浸ろうとしていた俺だったが、余韻に浸る間もなく抱きしめられてしまった。

その相手は湊隊長。


「湊隊長?」

「修太朗さん、よかった。本当に良かった」

「はい」

「身体は大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「本当にオーガキングを。よかった」


あぁ、本当に心配してくれたんだな。


「修太朗さんに……。私隊長失格です」

「なにを言ってるんですか。湊隊長のおかげでこうして生き残ることが出来たんです」

「私にもっと力があれば」

「湊隊長、隊長は強ければなれるんですか?」

「いえ、強さだけでは」

「そうでしょう。力は俺みたいな下っ端が頑張ればいいだけです。隊長は湊隊長です。湊隊長じゃなきゃ俺はとっくに折れてました。俺は後藤隊に配属されてよかったです。湊隊長でよかったと心からそう思っています」

「修太朗さん……」


この場面で、こんな事を言うのは正直照れてしまうけど、どうしても今感謝を伝えておかねばと思って口にしてしまった。


「あ~湊隊長そろそろ」


俺としては、役得というか女性に抱きしめてもらえる機会なんかそうある事ではないので名残惜しい気持ちもないと言えば嘘になる。

ただ……。


「すいません、思わず」

「いえ、私は大丈夫なんですが、カメラが」

「あっ……」

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