帰還

何とか5階層から4階層へと辿り着くとそこからは、それほど苦なく地上まで戻ることが出来た。

途中何度かモンスターと遭遇したけど、万全ではないとはいえ隊長が4人いて、4階層より上の階層のモンスターに苦労するということは無く、足場も砂ではなくなったことで俺も何とかついていくことが出来た。


「りんたろ~~」


2階層で救援の部隊と一緒にいた凜と再会することが出来た。

配信動画をみた本部がすぐに救援部隊を編成してくれたようで凜も地上へと戻る道中で救援部隊と合流して引き返してくれていたところだった。


「凜、戻ってきましたよ」

「うん」

「だから、大丈夫って言ったでしょう」

「うん」

「おっさんの底力ってやつですよ」

「うん」


凜が抱き着いてきて離してくれないけど、これも仕方がない事だろう。

冗談抜きで今回は死ぬかと思ったし、実際に被害も出てしまった。

凜自身も危険にさらされていた。

そんな状況を潜り抜けたんだからこうなるのもわかる。


「もう大丈夫です」

「うん」


凜の震えが服越しに伝わってくる。


「終わった。終わったんだ」


そう言い聞かせながら、凜の頭をなでる。

その言葉は俺自身へでもあったかもしれない。

俺でもこれだけ精神が揺れているんだから凜の小さな身体と心が受けたストレスは計り知れない。

おっさんが頭を撫でてどうにかなるもんじゃないけど、思わず手が伸びてしまった。

そのまましばらく撫で続けていると、徐々に凜の震えが治まってきたのを感じる。


「そろそろ戻ろう」

「うん」


俺が子供の頃に、よくおばあちゃんが俺の頭を撫でてくれた。

なぜか、とても安心して落ち着いた記憶がある。

普段の俺なら絶対にしないと思うけど、思わず凜の頭を撫でてしまった。

だけど、少しは力になれたようだからよかった。

凜の頭を撫でているうちに俺の心も少しだけ落ち着いてきた。

そこからは、特に危険もなく地上へと戻ることが出来た。

いろいろなことがあり過ぎて時間の感覚がなくなっていたけど地上は既に薄暗くなっていた。

目に見える怪我のある隊員から順番に本部内の医療施設へと案内され、俺も一応検査だけ受ける事となったが特に異常は見られなかった。

その後、個別に聞き取りがあり終了したのは23時を回っていた。

当然俺も聞き取りを受けたけど、今日あったことを一通り喋って終了となった。

それ以上の事を聞かれても俺にはこたえようがなかった。

ようやく終わった。

本当に長い一日だった。

達成感はない。

戻れてほっとした気持ちが無いわけではないけど、それよりもショックの方が大きい。

今日はもう帰ってもいいそうなのでこのまま帰ろう。

帰って寝てしまおう。

色々考えてみても、今日はもう終わった。

それしかない。

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