限界突破

オーガキングを包む炎が更に濃くなる。

隊長2人による上級魔法の重ね掛け。

今までみたことのある魔法とは一線を隔す。

これで決まってくれれば。


「くそっ、だめか。ふざけた耐久だな。オーガキングだ? ふざんけんな。なんでお前みたいなバケモンが5階層なんかにいるんだよ」


西岡隊長が声をあげるが、それはオーガキングが健在であることを意味していた。

黒炎を嫌がっている素振りは見て取れるが燃え尽きるような様子はない。

ゆっくりと俺の方へと歩き始めた。

まずい。


「ガアアアアアアアアアアアアアア~!」


オーガキングが大声で吠えると、さっきまでその身体を覆っていた黒炎が霧散して消えてしまった。

気合で黒炎を吹き飛ばした⁉

完全に俺を捉えてる。


「雪原をかける狼。銀に輝くその姿は気高きそして孤高なり。氷を司るは、その蒼き瞳。そのひと息は吹雪を起こし、その疾駆は全てを氷雪の檻へと誘う。ここにその絶対の氷檻を発現せよ『氷狼檻陣』」


一瞬にしてオーガキングが氷に閉じ込められた。


「湊隊長……」

「修太朗さん、長くはもちません。残念ながら私ではオーガキングに致命傷を与える事は出来ません。本来なら逃げてと言いたいところですが、オーガキング相手ではそれも難しいでしょう。修太朗さんなら。お願いですオーガキングを倒して下さい」


湊隊長に頼まれるまでもなく倒せるなら倒したい。

だけど、俺の攻撃は完全に防がれてしまった。

もう一度同じことをしてもおそらくは通用しないだろう。

だけど、ここで何とかしないと全滅もあり得る。

隊長に触発されて上級魔法を使ってみたいなんて思ってしまうが、この状況で使うにはリスクが高すぎる。

北王地さんが教えてくれたもう1人の大魔導士の末路が頭をよぎる。

大仁田さんなら、こんなときどうするんだ。

情けないけど、こんな時でも頼りになる先輩大仁田さんの姿が頭に浮かぶ。


「我は稀代の英雄なり。我の振るう一太刀は空を割り、我が穿つその一撃は海を割る。英雄の鎧、英雄の盾、英雄の剣を我は欲する。我に英雄足り得るその力を! 悪たる敵を破るその力を! 超常の力を我に!『リミットブレイク』」


以前大仁田さんが使っていた中級の身体強化魔法。

もちろん使ったことは無い。

以前大仁田さんが使っているのを見たことがあるだけだ。

上級は厳しいけど中級なら自爆せずにいけるかもしれない。

いずれにしても初めて使う中級魔法だ。絶対に失敗は出来ない。

失敗したら自爆してしまう可能性がある

身体を桜色の気のようなものが包み込む。

それと同時に湧きあがる全能感。

大丈夫だ。コントロールできてる。

俺はこの時初めて中級魔法を発動させた。

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