隊長の意地


眼前で繰り広げられる光景に足がすくむ。


「りんたろ~は強いよ」


頭の中を凜の声が巡る。

俺は強い。

大丈夫だ。

いける。

オーガロードでもいけたんだ。

同じことをすればいける。

自分にそう言い聞かせ、脚と蒼白く炎を上げる剣を両手で構え、オーガキングに向け駆ける。

大丈夫だ。

この動作も既に3度目。

一度目よりも確実にスムーズだ。

すぐに距離は詰まる。

オーガキングこちらに気が付くが、もう遅い。

既に『マジックシールド』は発動済みだ。

オーガキングの動きを『マジックシールド』で制限しさらに踏み込む。


ドン!


重く低音の打撃音が聞こえ、その瞬間目の前で展開されていた『マジックシールド』が砕けた。

こっちが速い。

剣を振るいオーガキングに斬りかかる。


ガンッ。


俺の渾身の一撃がオーガキングに届くことはなかった。

完全にこちらが先だったのに完全に止められてしまった。

とんでもない圧力が伝わってくるがまだだ。

『アイスバレット』と『ウィンドスピア』をほぼ同時に打ち込む。


ドオオオオオン!


俺と斬り合っていたおかげで、確実に当てる事が出来た。

炸裂音が響き、手元への圧力が緩んだけどそれは一瞬だった。


グウウウウッ。


押し込まれる。

必死で全身に力を込めるが、ダメだ。

圧倒的ともいえる力で押し返され、そのまま押し込まれてしまう。


「うおおおおおおおおおおおおおおお~!」


おそらく今まで生きてきて初めてかもしれない。

腹の底から雄たけびを上げ、全身の力を振り絞りひねり出す。


「があああああああああ~!」

「ガアアアアアアアアアアアアアア!」


俺の雄たけびも、オーガキングの咆哮にかき消される。

気合ではどうにもならない力の差。

こんな時大仁田さんなら力技で押し返してくれるだろうか。

だめだ。

これ以上はもたない。


「花岡~ひとりじゃないぜ。隊長の意地を見せてやる。冥府の奥底に眠る獄炎よ。黒くそして深く、すべてを塗りつぶし、すべてを黒く燃やし尽くす。わが命を燃やし、その種火としよう。冥府の王が操りしその漆黒の力、ここに示し我が敵を焼き尽くせ。『ダークインフェルノ』」

  

相対しているオーガキングが漆黒の炎に包まれる。

明神隊長が放ったのはおそらく炎の上級魔法。

見るのは初めてだけど、オーガキングにも通じているのか俺を追って来る様子はない。

このまま消滅してくれればいいが。


「一発じゃ足りないか。明神だけにいい顔はさせない。『冥府の奥底に眠る獄炎よ。黒くそして深く、すべてを塗りつぶし、すべてを黒く燃やし尽くす。わが命を燃やし、その種火としよう。冥府の王が操りしその漆黒の力、ここに示し我が敵を焼き尽くせ。『ダークインフェルノ』


今度は西岡隊長が2発目の獄炎を放った。

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