絶望

ドオオオオオン




え?


桜花さんから質問されている最中に大きな炸裂音が響き、前を行く隊が割れた。


え?


目の前の光景に理解が追い付かない。


人が。


人が潰された。


隊員の一人が潰された。


え?


なにが。


なんで。




「散れええええええええええええ~!」




おそらく隊長の誰かだろう。


張り裂けるような声が響き渡る。


悲鳴が聞こえる。


近いはずの声が遠く感じる。


目の前で起こった光景に思考が停止する。


人が……。


もう一人引き裂かれた。


なんだこれ。


何が起こってる?




「修太朗さん! やれますか?」


「え? あ、はい」


「しっかりして下さい。この距離です、逃げるのは無理でしょう。修太朗さんの力が必要です」




俺の力が必要。


湊隊長がそう言ってるのか。


そうだ。


闘わなきゃいけない。


あれと。


現れたモンスターは僅かに1匹。


おそらくはオーガ。


通常のオーガより一回り小さく角は一本。


ただその角は今まで戦っていたオーガと違い捻じれるように伸びている。


風貌の特徴だけで言えば通常のオーガに見える。


だけど、通常のオーガ相手に他の隊員が、瞬時にああなってしまうとは考え辛い。


あれはなんだ?


オーガに見えるけどちがうのか?


いや、そんなことより人が死んだ。


目の前で殺されてしまった。




「修太朗さん……」


「桜花さん」


「あれはキング。オーガキングです」




オーガキング。


あれがオーガキング。


オーガロードよりかなり小さい。


それなのに、圧倒的だ。


たった一匹を相手に前を行く隊が散り散りになってしまっている。


このままじゃまずい。


何とかしなきゃ。


現状が理解できたことで徐々に停止していた思考が戻って来る。


あんなの俺にどうにかできるのか?


俺より経験の長い隊員を殺した相手だぞ。


考えろ。


俺に出来る事は限られている。


出来る事をやるんだ。




「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」




「この現世に住まう精霊よ、我が盟約に従いここにその力を示せ。原初の炎よ舞い踊れ! 『ファイア』」




「この盾は、すべてを護る絶対の擁壁。あらゆる敵を弾き、我に光の加護を授けよ。我は拒絶し我は決意す『マジックシールド』」




「大気に宿る悠久の精霊よ、その零下の息吹を放て。我が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」




「その翼は敵を裂き、その吐息は空を穿つ。幾千の刃を纏いしその気高き咆哮を敵に示せ『ウィンドスピア』」




おそらくは今の俺の限界5つの魔法を続け発動させる。

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