おじさんの役目
「今日は大仁田くんが体調不良とのことでお休みです」
「風邪かなにかですか?」
「最近、張り切ってましたから疲れが出たのかもしれませんね」
出勤してみると大仁田さんが休みとのことだ。
今まで隊の誰も休んだことはなかったのでちょっと心配ではある。
「え~っ、めずらし~。病気とかしなさそうなのに」
凛、その言い方はちょっとどうかと思う。
「修太朗さんがいれば、いける気もしますが今日は3階層までにしておきましょう」
「わかりました」
隊の前衛である大仁田さんを欠いては、流石に5階層は厳しい。
湊隊長の判断で今日は3階層迄となったけど、男が俺一人になってしまったので大仁田さんの代わりを務めるべく、今日は前衛を頑張りたいと思う。
早速、4人でダンジョンへと潜ることにする。
”今日は大仁田休みだってよ”
”まあ、隊員も人間だからな。そういう日もある”
”今日は修太朗が前衛。それはそれでアリ”
”陸人大丈夫かしら。おかゆとか作ってあげたいわ”
”陸人くん、みてたら連絡して。夫をおいてでもすぐに駆け付けるから”
「ふっ」
ゴブリン相手に剣を振るい順番に倒していく。
『ギリスマティ』さえ使っていれば近接でも全く問題ない。
最近5階層で体力強化に励んでいるからか、それとも探索のたびに『ギリスマティ』を使っているからか、当初よりも身体が動くようになってきた。
魔法の馴染みが良くなり、強化もスムーズになり探索後の筋肉痛もだいぶん減ってきた。
今まで運動不足だったのが解消されたからか、かなり調子がいい。
ちょっと前には老化を感じていたのに40にして身体機能が向上するとは思ってもみなかった。
今はゴブリンの動きを余裕をもって見極める事が出来ている。
「りんたろ~おつかれ~」
「うん、ありがとう」
「修太朗さん、いい感じです」
桜花さんがこちらへカメラを向けて話しかけてきた。
「今日はもう修太朗さんメインで撮っていきますから。3階層迄とのことだったので、少し心配したんですけど杞憂でした。むしろ視聴者の人は修太朗さんがいっぱい見れて満足度高めみたいです」
「そうですか。それなら嬉しいんですが」
流石に、俺にも少し免疫がついてきたので桜花さんの声に動揺することはなくなってきた。
未だに信じがたいが世の中には一定数、オジ専と呼ばれるオジサン好きの人がいるらしい。
そういう人が、おっさんのいる後藤隊の配信を見て集まってくれているんだと思う。
そうだとすれば、その人達に満足してもらえるよう頑張るのもおじさんである俺の役目だ。
お知らせ
本日24時からHJ文庫モブから始まる探索英雄譚10の電子書籍解禁です。
紙は明日以降店頭に並びます。
よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます