5発

『ファイアバレット』の5発は右手の5本指に連動している。


5つの動きをそれぞれに意識して誘導しないといけない。


この作業が思いの外難しい。


パソコン操作をしながら、電話をかけ、紙に書きとめながら、食事をして、更にもう一個タブレットで作業しているような感覚だろうか。


サラリーマン時代の切羽詰まった時の経験が活きそうな感じだけど、一発ずつの威力は弱めとのことなので、念のためいつもより多めに魔力を込める。


よし。


『ファイア』同様に蒼白い炎へと変わった。


スピードよりもコントロールを意識して眼前の5匹のモンスターへと放つ。




スピードを重視していないとはいえ、そこは魔法。


そこそこのスピードで飛んで行き順番にモンスターへと着弾していく。


まず一匹。


蒼白い炎がモンスターへと着弾すると胸部に穴を穿ち、空いた穴から炎が噴き出し全身を包んだ。




『グガ……」




よかった。


威力が足りないかと思ったけど、十分いけた。


放った炎は次々にモンスターへと着弾していく。


そして最後の5発目もモンスターへと着弾した。


よかった。


5発とも命中した。


かなり集中してしまったけど、5発でこれか。


10発当てるとなると、冗談抜きで脳みそが2ついるかもしれない。


今の俺では難しいかもしれない。




「湊隊長……」


「大仁田くん気持ちはわかります」




”おおおおおっ、リザードマン5匹が瞬殺”


”なにあれ、蒼白い炎が5発”


”ファイアバレット?”


”リザードマン相手に5発全部当てたぞ?”


”まじか。ファイアバレット5発当てるのなんか初めて見た”


”威力もおかしい。ファイアバレット一発でリザードマン? いやないわ”


”魔力だけじゃなく魔力操作も隊長クラスじゃね?”


”隊長であれできるやついるか?”


”…………”


”まさかホーリー12クラス?”


”いや、まさか。まさかな。いや……あるか?”




「なんとか当たりました。初めて使う魔法だったんでちょっと苦戦しました」


「修太朗さん『ファイアバレット』初めてなんすか?」


「恥ずかしながらそうなんです。学校ではほとんど魔法を使うことが出来なかったんで、本で勉強しただけなんです」


「まじっすか」




5匹のモンスターをうまく倒す事が出来たけど、ドロップはなさそうだ。


まあ、ドロップってそんなにポンポン出るもんでもなさそうだしこんなものかもしれない。




「修太朗さん今日も順調に伸びています。250万いきますね」


「そんなにですか。ありがたいですね」


「修太朗さん、他人事ですね」


「いやぁ、桜花さんそれはいまいちピンと来てないんですよ。カメラの向こうに250万人の人がいるって、ここでは全くわからないじゃないですか」


「少なくとも半分は修太朗さん目当てですよ」


「そんな大げさな」


「これでも少なく見積もったつもりです」




半分って125万人? 桜花さん、それはさすがに冗談が過ぎますよ。


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