爬虫類的な
結局、5階層での初戦闘は何もせず終わってしまった。
特に怪我をするようなこともなかったけど、気合を入れて身構えていただけにちょっと拍子抜けしてしまった。
なぜか桜花さんが「いい絵が撮れました」と言っていたのは謎だ。
特に何もしていないのにいい絵が撮れたとはよくわからない。
次こそは、役に立たないと5階層に来てから全くと言って役に立っていない。
「ふ~暑いな」
水筒を取り出して水分補給をする。
砂漠のフィールドは足下に砂があるだけじゃなくかなり暑い。
本物の砂漠を体験したことはないけど、同じくらい暑いのではと思わされる。
足下からも熱せられ水分補給は欠かせないし、結構体力を削られる。
「りんたろ~大丈夫?」
「なんとか」
ここは全然元気と答えたいところだけど、虚勢を張って、判断ミス等で他の隊員に迷惑をかけるわけにはいかないので、正直に答える。
「ここ暑いよね~わたしも苦手~6階層に行けばこんなに暑くはないんだけど」
「そうなんだ」
6階層は砂漠じゃないって事か。
出来る事なら長居はしたくない所だけど、まだ5階層は序盤も序盤だ。
気を取り直し先へと進む。
大仁田さんが先頭を歩いてくれるが、まったく疲れた様子はない。
若いって素晴らしいとしみじみ感じてしまう俺は自分が思っている以上におっさんなのかもしれない。
「止まってください」
大仁田さんが足を止め声をあげる。
敵?
だけど足下の振動は感じない。
「来ますよ」
やはり敵か。
今度の敵は足下からではなく正面からこちらへと近づいてきていた。
「修太朗さん、やりますか」
「はい」
「この階層は何もないんで火を使っても大丈夫っす」
「煙とかも大丈夫ですか?」
「風があるんで大丈夫っす」
「了解です」
近づいて来るその姿は人型。
ゴブリンに似た体色だが、明らかに姿形は異なる。
表面と顔は爬虫類のそれだ。
「ギイイイイィイ」
こちらを認識して耳障りな声をあげる。
敵の数は5匹。
結構多めだけど頑張るしかない。
「修太朗さん、俺がフォローに回るっす」
「え? そうなんですか?」
てっきり大仁田さんも突っ込んでいくかと思ったら今回は俺がメインで戦う感じか。
それなら先制攻撃だ。
火を使うお許しも出てることだしこれでいこう。
「すべてを焼き穿ち燃やす。火は礫、眼前の敵をその礫で炭となせ。五指にその礫を宿し放て『ファイアバレット』」
この魔法も使うのは初めてだ。
『ファイア』と並ぶ火系の初級魔法だが、『ファイア』とは大きく異なる点がある。
『ファイア』は単発だが、この魔法は一発の威力は『ファイア』には及ばないものの最大10発同時に放つことが出来ると、初級魔法の本に書いてあった。
初めてなので今回は放つのは片手分の5発だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます