砂は岩となる

「5階層は、さっきのモンスターがメインなのかな」

「あれ以外にもいるよ〜。砂の中からくるの以外もいるし」

「砂の中以外ってどこから?」

「普通に砂の上」

「ああ、そうか」

   

凛との会話、自分でも馬鹿な事を聞いてしまったとは思うけど、さっきのモンスターの印象が強すぎて意識が完全に砂の中に向かってしまっていた。

当然、砂の上から普通にモンスターが現れる事もあるだろう。


「湊隊長、さっき砂の中のモンスターの位置を把握していたようでしたが、どうやったんですか?」

「勘ですね」

「勘ですか」

「はい」

「大仁田さんもですか?」

「もちろん勘です。だって砂の中なんか見えないじゃないっすか」


二人とも完全に砂の中のモンスターの動きを察知していたように見えたけど、勘なのか。

所謂、経験からくる戦いの勘というやつなのだろう。

経験の足りない今の俺では真似できそうにはない。


ダンジョンを先へと進むと、また先程と同様に足下が微かに揺れている。


「修太朗さん」

「はい」


徐々に振動が大きくなってきた。

近付いてきているのは間違いない。

大事なのは下からやられない事だ。


「命を育む大地よ。その力を世界を隔てる壁となして我の下へと示せ。その壁は全てを隔絶し大地の子を慈しむものなり。『アースウォール』」


ここは砂のフィールド。

なら、ここは親和姓が高いと思われる土系。

俺は魔法を使い、自分のいる足下へ岩の壁を発現させた。

魔力を少しだけ多めに込め、少し大きく、少しだけ厚めを意識して発動させる。

この魔法を使うのは初めてだけど、足下が硬くなっているのでちゃんと発動してくれたようだ。

あとは、モンスターがこの岩を砕いて現れた所を待ち構えてしとめればいい。

いくらモンスターとはいえ岩を砕くのには時間がかかるはず。


 「きます」


湊隊長が、モンスターの襲来を知らせてくれる。

足下の揺れが強くなる。

何度か突き上げるような振動が伝わってくる。


「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」


強化魔法を発動しモンスターが顔を出すのを待ち構える。

剣を持つ手にも力が入る。

ある意味モグラ叩きのようなものだが、これは命懸けのモグラ叩きだ。

何度も突き上げる感じが伝わってくるので、だいたいの場所はわかっている。

モンスターもこちらを警戒しているのかなかなか顔を出さない。

早く出て来い!


「湊隊長、もしかして」

「ええ、そうなのでしょうね」

「えぇ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る