5階層

「こ、これは……」


5階層へと降りたそこには、今までとは全く違う景色が広がっていた。

ここは本当にダンジョンの中なのか?

いや、話に聞いた事はある。

だけど、実際に自分が踏み入れると目の前の光景に目を奪われてしまった。

あたり一面が砂。

まさに砂漠と呼ぶに相応しいフィールドがそこに広がっている。


「不思議だよね〜。わたしはもう慣れちゃったけど、最初はビックリしたよ〜」

「これがずっと続いてるの?」

「そうだよ〜。ここから下は普通じゃなくなるから」


今までは、俺のイメージにあるダンジョンだったので特に違和感なく臨んでいたけど、ここは……。


「砂漠って初めてかもしれない」

「だいたいの人は初めてなんじゃないかな〜」


大仁田さんを先頭に歩き始めるが、砂に足を取られて思った以上に歩き辛い。

他の隊員は、慣れているからかそれ程ペースが落ちた感じはないけど、ついていくのがやっとだ。

歩くたびに足が砂に埋まり、重い。

最近ウォーキングしてるけど、それでもこれは足腰にくる。


「りんたろ〜大丈夫?」

「大丈夫と言いたいところだけど、コレはキツイ。凛は大丈夫なのか?」

「だってこの階層ずっとコレだから」

「そうなんだ」


そうだとは思っていたけど、言葉にされるとかなりキツイ。


「修太朗さん、この階層の敵は正面からだけとは限りません。下からくる事もあるので気をつけてください」

「下からですか?」

「はい、砂の中から襲ってきますから足下注意です」


湊隊長からアドバイスを受けるが、歩き辛い上に、足下の更に奥にまで注意を払うとか難易度高すぎないか。

ついていくだけで必死なのに。


「ハァ、ハァ、ハァ」


年齢のせいにしたくはないけど、息が上がる。

他の隊員は平然としたものなので、やはり年齢か。


「りんたろ〜お水飲みなよ。こまめに飲んだ方がいいよ〜」

「ああ、そうさせてもらうよ」


4階層までは戦闘が終わってから飲む事はあったけど、歩いている最中に飲むという事がなかったので、そういう意識はなかった。

水を飲むと、自分の喉が渇いていた事に気がつく。

ふ〜。

自分の体調にも気が付かないとは、思った以上に余裕がなくなっていたのかもしれない。


「大仁田くん、少しペースを調整しましょう」

「ああ、すいません。早すぎましたか」

「修太朗さんは、初めてですからね」

「修太朗さん、申し訳ないっす」

「いえ、こちらがです。足を引っ張ってすいません」

「いや、これは俺が悪いっす。ダンジョンは環境に慣れるのも重要なんで。ペース間違えました」


みんなの足を引っ張って申し訳ないけど、今はみんなの気遣いが助かる。

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