先輩
トロールの腕からは血が吹き出しているが、興奮や怒りがそれを上回っているのかラッシュがおさまる気配はない。
ただ、湊隊長を相手にしては、その事が更にトロール自身のダメージを深める結果となり、拳を振るう度に流す血の量は増え、その腕は次第に動く機能を失っていき、遂には腕が上がらなくなってしまった。
「もう終わりですか? 思ったよりも頑丈でしたね。今度はこちらからいきます」
攻撃を止めたトロールに向けて湊隊長が攻勢にでる。
そこから先は一方的だった。
“終わったな”
“トロール乙”
“華麗、そして美しい”
“湊さん、やっぱ映える。人類の希望”
“湊最高。湊しか勝たん”
“湊隊長、俺もちょっと叩いて〜”
脚を刻み、続いて上半身を削りトロールは消滅した。
そして、大仁田さんも、戦斧でトロールを削り切り倒す事に成功した。
“大仁田興行も頑張った”
“陸くんの汗が光ってる。至高”
“これが後藤隊。久々だけどやっぱ最強“
”いや、最強は岡野隊だろ“
”岡野隊は、暑苦しい。観るの辛い“
”湊ちゃんのとこが1番“
「終わりましたね。しばらく修太朗さんに任せていたせいで少し鈍ってしまっていました」
あれで鈍ってた?
嘘でしょ。
トロールが相手とはいえ、ノーダメージ。
完勝だ。
「いや〜、最近俺の存在薄〜くなってましたからね〜。ここら辺でしっかりアピールしとかないと。桜花ちゃん観てくれたっすか?」
「はい、バッチリ撮れましたよ」
「いや、そういう意味じゃないんすけど、まあバッチリ撮れたならいいっす」
2人ともすごかった。
ここがまだ4階層に過ぎないのを差し引いたとしても、2人とも達人。いや、超人と呼んで差し支えない戦いっぷり。
ただ、俺が想像してた魔法使いの戦い方とは随分と異なる。
魔力に限りがある以上、ダンジョンではこういう戦い方が正解なのだろう。
遠距離から、魔法をバンバン放ってたら、長時間ダンジョンに潜る事は難しいのかもしれない。
「それじゃあ、ドロップもないようですし先に進みましょうか」
「そうっすね」
2人とも小休止も挟まず、先へと進む気らしい。
他の2人も特に気に留める様子も無いし、これがいつもの光景だという事がわかる。
これまで新人の俺に気を遣ってペースを調整してくれていたのかもしれない。
俺だと、あんなに動いたら少し休憩したいところだけど、若さなのか、それとも経験なのか、後藤隊の先輩達は強くて心強い限りだ。
「隊長、ちょっと張り切り過ぎたっす。ゆっくり目に歩いてもらっていいっすか」
「わかりました。私もですから、問題ありません」
「あ〜隊長もですか」
「これでも隊長ですから」
「そうっすね。新人が優秀すぎるのも考えものっすね」
「まったくですね」
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