剣と杖のウィスキー
湊隊長と大仁田さんがトロールに向けて駆ける。
敵は3匹。
どうするんだ?
「うおおおおおっ!」
先に大仁田さんが突っ込む。
完全な近接戦闘。
大丈夫なのか⁉
大仁田さんは標準の日本人男性よりは大きめだ。
それでも大人と子供いや、象と子供くらいの差がある。
『リミットブレイク』の威力がどのくらいあるのかはわからないけど、トロールの一撃を喰らえばただでは済まないはずだ。
「ブルルルルシュウウ」
危ない!
大仁田さんをターゲットと認識したトロールが拳を振り上げ一撃を放つ。
巨大な岩が降ってくるのと変わらない一撃が大仁田さんを捉える。
ガガンッ!
「くううっ、舐めてもらっちゃ困るっす。うおおおおおっ!」
なんと大仁田さんがトロールの一撃避けることはなかった。
手に持つ戦斧でトロールの一撃を受け止め、そして弾き返してしまった。
すごい。
すごすぎる。
大仁田さんがすごすぎる。
人間とは思えないくらいすごい。
いくら中級の強化魔法がかかっているとはいえ、巨大なトロール相手に正面からやりあえるとは。
”陸人~やっちゃえ~”
”脳筋大仁田、お前には回避という言葉はないのか”
”これが大仁田流。強化魔法は大仁田の脳の筋肉も強化する”
”マッスル~~!”
大仁田さんが戦斧を使いトロールに圧をかけ押し込んでいく。
そうしている間にも湊隊長がもう一匹のトロールと接敵した。
トロールが拳を振り上げるが、湊隊長には当たらない。
速い!
湊隊長は華麗にトロールの一撃を避けると同時にその手に持つ刀のセイバーギア【宵闇】でトロールの脚を斬りつける。
サイズが大きく致命傷ではないが確実にダメージを与えている。
3匹目のトロールは組みやすいと判断したのか湊隊長の方へと向かっている。
「大気に宿る悠久の精霊よ、その零下の息吹を放て。我が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」
湊隊長は目の前のトロールと相対しながら、もう一匹のトロールに向け魔法を放った。
氷の弾丸がトロールの足を止める。
初級なので倒すことはできないが、ダメージを与えトロールをその場に留めている。
すごい。並行詠唱。
目の前のトロールと戦いながら、他の魔法を同時発動する。
俺も、止まった状態からなら二度魔法を発動する事はできる。
だけど、目の前のモンスターと戦いながらというのは難易度が全く異なる。
魔法と剣の両方を同時に使いこなす湊隊長はすごい。
”湊隊長~かっこいいい~”
”さすがだ。これが剣と魔法のウィスキー”
”みなちゃんいけてる〜”
“ウィスキーってなんぞ”
“ウィスキーはウィスキー”
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