オーク

しばらく4階層を進むとすぐにモンスターの一団が現れた。

たしかにゴブリンとかに比べるとずいぶん大きい。

ただ、湊隊長が言っていた通り、ものすごく大きいということはない。


「あれってオークですか?」

「そうです。あれが、かの有名なオークです。もちろん食べたりは出来ないですよ」

「わかってます。流石にあれを食べる気にはなれません」


その姿は、俺のイメージにあるオークそのものだったので識別はすぐに出来た。

ただ、あんなに太っている2足歩行のモンスターの肉を食べるなんてことは俺には無理だ。


「あれって焼くのが良いですか?」

「それは、やめておいた方がいいでしょう。臭いと煙で大変なことになりそうですから」


たしかに、あれを焼いてしまうと他のモンスターが臭いにつられてやってきそうだ。

臭いなしでいけそうなのはこれか。


「ふ~っ、行きます。「その翼は敵を裂き、その吐息は空を穿つ。幾千の刃を纏いしその気高き咆哮を敵に示せ『ウィンドスピア』」


魔法を発動すると、少し剣に吸われてる感覚はあるけど、意識を集中すればコントロールできそうだ。

発動した風の槍がオークの腹を貫く。


「ブモォ……」


”瞬殺乙”

”でかいだけにただの的”

”オークって雑魚だっけ”

”結構強い。今まで何人も被害にあってる”

”修様~”

”270万”

”おおおおっ、突っ込んだ”

”遠距離最強、近距離最強、花岡最強”


風魔法だけでも倒せそうだけど探索はここで終わりじゃない。

『ギリスマティ』を発動しオークの群れへと駆けていく。

もちろん魔法の効果あってこそだけど、オークの動きはその巨体もあって少し鈍いように感じる。

当たれば痛そうだけど、これだけ視えてれば当たらずに済みそうだ。

錆びた剣で斬りつけると、ほとんど力を込めることなくスパっといった。


「おおっ」


思わず声が出てしまったけど、今までで一番の斬れ味かもしれない。

オークの大きなおなかが、バターかチーズを斬るかのごとくスパっと断ち切れる。

おそらく、風魔法とこの剣の相性がいいのかもしれない。


「隊長、俺の出番が終わったっす」

「そうですか」

「張り切ってみたんですけど一匹しか無理でした」

「まあ、花岡さんがあれですからね」

「オークですよ? なんすかあれ。なんであの剣であんなに斬れるんですか? あれもしかして聖剣っすか?」

「あんなに錆びた聖剣はないと思いますよ」

「わかってますって。じゃあ妖刀マサムネですかね」

「あれは刀じゃなくて剣ですけどね」

「隊長、的確な突っ込みありがとうございます」

「いえいえ、楽をさせてもらってますから」

「それは言えてるっすね。花岡様様っす」



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