4階層

3階層もアクシデントが起こることなく順調に進んできている。


「4階層への階段ですね」


あれが4階層への階段か。

他の隊員にとってはただの4階層なんだろうけど俺にとっては初めての4階層だ。

気合を入れなおして臨む。


「はい、皆さんお待ちかね。初の4階層へと臨む花岡修太朗隊員に今の気持ちを聞きたいと思います」


え?

気合を入れなおしたところなのにここでコメント?

桜花さんが笑顔でこちらへとカメラを向けてくる。


「はい。初めての4階層となりますがしっかりと役目を果たしたいと思います」

「花岡隊員なら問題ないと思いますが、昨日の夜は何を食べましたか?」

「え~っと、それは昨日の晩御飯という意味でしょうか?」

「はいそうです」


なぜこのタイミングで俺の晩御飯。


「昨日の夜はコンビニのハンバーグ弁当を食べました」

「お味の方は?」

「おいしかったです」

「花岡隊員はハンバーグがお好きなんでしょうか?」

「はい、好きです」

「修太朗隊員、今のもう一回いいですか?」

「今の?」

「好きですをもう一回」


桜花さんとのこのやり取りがいったい何のやり取りなのかよくわからないし、これが配信される意味もよくわからないけどこれも仕事だ。


「好きです」

「はい、いただきました。という事で修太朗隊員の晩御飯でした」


そこでインタビューが終わりようやく4階層へと向かう事になった。


”修太朗の晩御飯はハンバーグ弁当。なんかかわいいな”

”修太朗はハンバーグ好き”

”私が愛のハンバーグを作ってア・ゲ・ル”

”修太朗ってコンビニ行くのか。庶民的でいいな”

”きゃあああああああああ~”

”すきですキタ~”

”追いすきですキタ”

”わたしも好き~”

”その顔で好きは反則。ヤバ”

“わたしはハンバーグになりたい”


全くダンジョンとは関係のないインタビューだったけど、また世界に向けて俺の晩飯が晒されたということなのだろうか。

別に恥ずかしい事はなにもない。

コンビニのハンバーグ弁当は最高だ。

だけどやっぱり、人に大きな声で言う事でもない気がする。

桜花さんはこの道の先輩でプロだ。

きっと何かしら意図があるのだろうから俺は信じて任務を遂行するだけだ。

気持ちを切り替えて4階層の階段をおりる。


「湊隊長、この階層で気をつける事はありますか?」

「そうですね。3階層よりもモンスターのサイズが大きくなります。まあ、修太朗さんなら大丈夫でしょう」


やはり、階層を進むとモンスターが大きくなったりするのか。

どのくらい大きくなるのかはまだわからないけど、湊隊長が大丈夫というんだからそれほど気にしなくてもいけそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る