花岡修太朗40歳独身彼女なし

「はい、は~~い、そこまで~~。りんたろ~は疲れているのでインタビューはここまでで~す。視聴者のみなさ~ん、ネクストりんたろ~は後藤隊チャンネルで~」


凜がインタビューを強引に終わらせてくれた。

メインチャンネルのインタビューをそんな終わらせ方して大丈夫なのかとは思ったけど、それより俺の為にそんな行動をとってくれた凜に感謝だ。

ただ、ネクストりんたろうってなんだ。

ちょっと意味不明のワードが飛び出していたのは気になる。


”花岡修太朗四十歳独身彼女無し”

”おいおいおい、これ大丈夫か? ゴブリンキングキラーだぞ?”

”修太朗彼女いないの? 遊びまくってるだけ?”

”修太朗万歳。新たな英雄誕生だ。しかも独身、彼女無し”

”英雄には褒美で姫がマストね。修太朗にはワタシ”

“これ、ゴブリンキング討伐より花岡修太朗独身彼女無しの方がニュースなんじゃ“

”もうトレンド載ってる。しかも世界トレンド”

”世界トレンドってヤバいな。世界の修太朗。四十歳独身彼女無し“

“修太朗様~今この文香がまいります~”

“さいごのリンたん? りんたろ~ってだれ?”

“これ、後藤隊ヤバイな。動画の再生数もヤバイ。修太朗もヤバイ“

“世界が修太朗に惚れる”

“男の俺でもあれは惚れる”

“まさか修太朗、どっちもいけるのか?”

“地味にドロップ拾ってたな。錆びた剣”

“ゴブリンキングのドロップってあんななの?”

“あのクラスのドロップは属性持ちとかが多いんじゃないか?”

“それじゃあ、あれは錆び属性の剣?”

“錆び属性WWW”

“錆びもしたたるいい男”


「りんたろ~、ちょっといい?」

「はい、ありがとうございました。助かりました」

「そうじゃなくて~、インタビューにそんな正直に答えなくていいんだからね~」

「そうなんですか? だけど嘘はまずくないですか?」

「嘘じゃなくてごまかすとかできるでしょ~。世界中にりんたろ~が独身なのがバレちゃったし」


ぐっ……改めて人から言われると抉られる。世界中にか。


「まあ、それは結婚しちゃえばいいだけなんだけど」

「いいだけって、そんな簡単に結婚出来たら苦労しないんですよ」

「だ~か~ら~わたしがいるから~」


凛、本当にジョブ聖女だったりしないか?

酔っぱらった俺を家に泊めてくれて詰るどころか、こうやって優しく慰めてくれるなんて。


「その言葉だけでじゅうぶんです。本当にありがとうございます」

「本当にわかってる~? 本当なんだからね」


凜の気遣いが心に染みる。

時刻を確認するともう十一時を回っている。

 朝が早かったから、結構な時間ダンジョンにいたことになる。

大ゴブリンとの戦いはそれほど疲れなかったけど、そのあとのインタビューでどっと疲れてしまった。

仕事だから仕方がないけどインタビューは当分遠慮したいな。

インタビューというものがあんなに疲れるとは思わなかった。

いや、俺のインタビューがそうそうあるはずもないし考え過ぎか。

いずれにしても、ダンジョンでのイレギュラーを無事に切り抜ける事が出来てよかった。

これが俺のやりたかったこと。

モンスターから世界を護る。

俺の知り合いを、周りの人達を護る。

まだただのルーキーだけど、周りの人たちのおかげで、今この場にいる防衛機構の隊員の一員である事に充実感を覚える。

前職を辞めてでも防衛機構に入ってよかった。



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