インタビュー3
湊隊長が話をしてくれて、剣を折ってしまった俺がとりあえず使わせてもらうこととなった。
ただ、錆びた剣だし、支給されていた業物のような切れ味は望むべくもないかもしれない。
いずれにせよ、大事な剣を折ってしまった俺が悪い。
この剣って研いだら錆が落ちるんだろうか。
明後日からの探索が少し心配だけど、、湊隊長たちもいる事だし、まあ心配はいらないか。
その場を後にして、全員で地上へと向かう。
「凜、ちょっと近くないですか?」
「全然近くないです~。死ぬところだったんですよ~」
「そんなことはなかったですよ」
「りんたろ~は、昔から自己犠牲が過ぎるんです~」
昔から?
どういう意味だ?
よくわからないけど、心配からか凜がぴったりと横についてくれて、気恥ずかしい。
お母さんのような気持ちでいてくれてるのかもしれないけど、俺の方がお父さんでもおかしくないのに。
そのまま歩いていると、カメラを携えた隊員が俺へと声をかけてきた。
「え~っと、新人さんですよね」
「はい、そうですが」
「よかったらインタビューいいですか?」
「インタビューですか?」
「はい、ゴブリンキングを退けた新人さんに是非」
「わかりました」
桜花さんにもインタビューを受けたばかりなのに、またインタビュー。
みんな俺のインタビューを見ても仕方がないと思うんだけど、頼まれれば仕事なので断るという選択肢はない。
「え~っと、それでは所属とお名前からお願いします」
「はい、今月から後藤隊に入隊しました新人の花岡修太朗です」
「はい、今日はすごい活躍でしたが、お年をお伺いしても大丈夫ですか」
「はい。四十歳になります」
「これだけ強くてこれまで防衛機構に所属されていなかったのは何か理由が?」
「いえ、魔法を使えるようになったのが最近なので」
「そんなこともあるんですね。これまでに武道か何かをされてたんですか?」
「いえ、まったく。普通のサラリーマンでした」
「そうなんですか⁉ ゴブリンキングをはじめ、モンスターを倒す姿はまさに英雄そのものに映りました」
「え、英雄ですか? そんないいものじゃないですよ。たまたまです、たまたま。たまたま私が倒す事になっただけで、加減が分からず出しゃばってしまいました」
「ゴブリンキングはたまたまで倒せるようなものではないと思うのですが」
「そうなんですかね。なにぶん初めての事だったのでよくわからないです」
「ちなみに花岡さん、ご結婚は?」
「え……」
これって、防衛機構のメインチャンネルだよな。
日本はもちろん世界に向けて発信しているはず。
そんなチャンネルでこの質問か。
くっ……抉られる。
俺はダメージを隠し答える。
「いえ、独身です」
「え⁉ そうなんですか」
え~っとこのリアクションは何でしょうか。
何で質問した人がそんなに驚いたようなリアクションを。
そんなに四十歳独身が珍しかったのか。いや珍しいのはわかってるんだけど。
それでも、そのリアクションは結構クル。
「それじゃあ、彼女さんとかは」
「……いません」
世界に向けて俺のプライベートが……。
視聴者は俺に彼女がいてもいなくてもどうでもいいのはわかってるけど辛い。
「え~~っ、そうなんですか⁉」
この驚きよう。
まるで世界の珍獣を前にしたかのような驚き方だ。
「わたしも独身なんですけど、どうでしょうか?」
「え~っと、どうでしょうかとは?」
「彼女としてはどうでしょうか?」
「それは、大変すばらしいと思います?」
「本当ですか?」
いや、これはいったい何のインタビューなんだ?
インタビューへどうこたえるのが正解なのかが分からない。
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1章完結まであと少し。
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