第72任務完了
それからしばらく戦闘を続けると、ようやくその場のモンスターを一掃することに成功した。
「りんたろ~!」
「凜」
よほど俺の戦い方が危なっかしかったのか凜は俺へと飛びついてきた。
「りんたろ~心配したよ~。えぇ~ん」
え⁉ 本当に泣いてる?
「死んじゃうかと思った~ええぇ~ん」
そんなに心配してくれてたのか。
ぼ~っとしていた頭が一気に冷えて覚醒した。
この中じゃ俺が一番新人だろうし、やむを得ない部分もあったとは思うけど女性を泣かせるほど心配させるとは。
これは、もっとうまく戦えるようにならないとまずい。
反省だ。
いや、それよりもやらかした俺の事を涙を流すほど心配してくれた凜に感謝しかない。
一瞬、聖女なのではと錯覚しそうになるけど、ここは現実世界。そんなはずはない。
いや、もしかして聖女ってジョブもあったりするのか?
いずれにせよ、これほど心配してれてる先輩に巡り会えたことに感謝しかないけど、そんなに密着されると朝方見てしまった凜の姿が頭を過ってしまう。
俺は、なんて情けない男なんだ。
こんな時に、そんな邪な考えが頭を過るとは。
俺は、必死に雑念を払い凛に応える。
「心配おかけしましたが俺はこの通り傷一つないですから。安心してください」
「ほんと心配したよ~まさか一人でゴブリンキングに突っ込んでいくとは思わなかったし~」
「いや、だって凜が逃がすなって」
「そんなの言うわけないでしょ~」
え⁉ どういうこと?
もしかして俺の聞き間違い?
戦いの最中だったし仕方がない部分もあったと思うけど、凜はあの時なんて言ってたんだろう。
たしかに逃がすなっぽい声が聞こえた気がしたけど。
「修太朗さん、お疲れ様です」
「あ、湊隊長」
「この度は大活躍でしたね」
「ありがとうございます。初めての事だったんで必死でした」
「それにしてはゴブリンキング相手に余裕があった気がするけど」
「まあ、あれは大きいだけのゴブリンでしたからそこまででも」
「大きいだけのゴブリンですか」
「はい、ゴブリンですから」
「修太朗さん……」
え~っと、湊隊長のこの反応はどういう反応だ?
「あっ、すいません。俺支給された剣折っちゃいました。弁償とかした方がいいですかね」
「ああ、大丈夫ですよ。あくまでただの支給品ですから」
あれだけの剣だ。本当はかなりの業物だろうけど、新人の俺のためにただの支給品ということで済ませてくれようとしてるんだろう。
湊隊長も本当に優しい人だな。
再度確認してみたけど、本当に弁償しなくていいらしい。
値段は怖くて聞くことは出来なかったけど、湊隊長が怒られたりはないよな。
しばらく、その場に留まり追加のモンスターが湧いてこないか確認していたが、どうやら本当に収まったようだ。
「終わったようですね。それでは引き上げましょうか」
みんなでその場に残されたドロップを拾い集める。
なんと魔石の数は20。
そして大ゴブリンからは錆びた剣がドロップしていた。
モンスターから魔石がドロップする事にも驚いたけど、アイテムまでドロップするとは本当にゲームか何かみたいで驚きだ。
ただ、残されたのは錆びた剣が一本。
まあ、大きいだけのゴブリンだったしそんなに多くは望めないか。
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1章完結まであと少し。
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