第71話 王を狩るもの

「あああああ~!」


支給品の剣が折れてしまった。

やってしまった。名刀と思しき切れ味を見せていた剣が折れてしまった。

完全に俺のせいだ。

俺の技量不足。

それに尽きる。


「りんたろ~~~!」

「修太朗さん!」


“やべえ、剣が折れた”

“標準装備じゃ無理だった”

“良く標準装備でここまで”

“おわた”

“終了のお知らせ”

“さらば修太朗”


とにかく手持ちの武器が無くなってしまった以上魔法で倒すしかない。

大ゴブリンの動きは見えてるし問題ないな。

周りに迷惑かけないようにしとめるには氷かな。


「大気に宿る悠久の精霊よ、その零下の息吹を放て。我が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」


剣が折れたとはいえ、かなりのダメージを与えたのは間違いなく、さらに動きの鈍った大ゴブリンの反撃をかわしながら超至近距離から氷の弾丸を放つ。

さすがに動きながらの上、酷い二日酔い状態での詠唱は魔力の制御まで意識を割くことが難しく、発動した弾丸は学校で的を壊してしまったそれと同等程度まで大きくなってしまっていた。


「ボンッ」


巨大化してしまった氷の弾丸が大ゴブリンの頭に触れると、破裂音とともに大ゴブリンの頭がはじけた。


「なっ!」

「あっ⁉」

「うそっ」


問題なく倒すことが出来たけど、周りから声が上がったのが聞こえる。

もしかしてだけど『アイスバレット』が大きくなりすぎて悪目立ちしてしまったかもしれない 。

それよりも、やり過ぎて俺が弾けなくてよかった。


“あ”

“は”

“お”

“え”

“ええええええええええええええええええ”

“たおした? 倒したよね”

“なんか氷の爆弾がさく裂したように見えた”

“キングの頭が……”

“超級魔法?”

“初級。間違いなく初級魔法『アイスバレット』だけど威力は超級”

“ごめん。頭が悪いのか理解できない”

“ゴブリンキングをワンパン”

“おおおおおおお~!”

“すげえ、すげえ、すげえよ修太朗。いや修太朗さん”

“もう好きにして”

“うおおおおおお。俺は歴史の目撃者に!”

“これはCG⁉ いやCGを超える現実”

“同接500万超えてる。統合チャンネルでもこの数字はやべえ”

“500万人が勇者修太朗誕生の目撃者”

“あれ? 魔王修太朗じゃなかったか”

“勇者で、魔王で、イケオジでとにかく最強!”


しぶとく動いていた大ゴブリンも頭をなくして動くことはなくそのまま消滅した。

大ゴブリンは倒したけど、まだそれだけだ。

たかが大ゴブリン一匹倒したからって戦況が変わるわけもない。

俺はすぐに周囲のモンスターへと意識を移す。

理由はわからないけどモンスターたちの動きが鈍り、浮足立っているようにも見える。

そのすきを突くように隊員たちが攻撃をかけ盛り返していく。

俺もみんなに置いて行かれないよう、魔法を連発してモンスターを倒して回る。

さっきは魔力を込めすぎたので意識して魔力量を抑えて放つ。

やっぱり剣とは違い、自分のペースで放てる魔法は戦闘が楽だ。

おかげで大ゴブリンとの戦いで使った体力も結構戻ってきた。

本来、運動不足気味の俺に剣での戦いが向いてるかと言われればかなり微妙だ。

ただ、スニーカーを買ったにもかかわらずまだジョギングには行けてないし、健康のためにもダンジョンでも身体を動かした方がいいのかもしれない。


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