第70話 聖剣折れる

                       


「くっ、戦えない奴は下がれ! 下がれ~!」


いける。あの大ゴブリンが吠えているせいで周りの音は良く聞こえないけど隙だらけだ。このまま踏み込んで正面から斬りつける。


「ギィアアッ」


あれ、しとめられなかった。

一撃で倒すには大きすぎたか。

いつもはサックっと入る剣の刃が、鈍い抵抗感を覚え切断まで至らなかった。

大ゴブリンがこちらへ向けて反撃してくる。

確かに普通のゴブリンよりも速い気もするけど酔剣中の俺には止まって見える。

振りかぶり殴りつけてこようとする腕を避けながら斬り落とす。


「ガギャッ」


今度はいけたけどやっぱり堅いな。


“ え⁉ どういう事?”

“ゴブリンキングを子ども扱い⁉”

“標準装備でキング倒せるの?”

“動きが速すぎてスマホじゃわからん”

“タブでもわからん”

“PCでもみえん”

“気づいたら腕が飛んでた”

  

「ギガアアアアアアアアアア~」


大ゴブリンが再び吠え、狂ったようにラッシュをかけてきた。

でかいので圧はあるけど、当たらなければ問題ない。

そのでかさのせいで動きは鈍いし、片腕じゃそれほど怖さはない。


“やべえ、やべえ、やべえ。咆哮からのゴブリンキングのラッシュ”

“はえっぇ、キングの本気。にげろ~修太朗”

“修太朗死なないで~”

“これは無理。オワタ”

“いやいやいや、修太朗避けてる”

“イケオジ回避もすげえええええ”

“人間……なのか?”

“それが修太朗”

”魔王の嫁にして“


「ガアアアアアアアアアアアアア~!」


大ゴブリンが三度目の咆哮をあげると、全身の筋肉が隆起し、一回り大きくなった気がする。

咆哮を終えると同時に殴りかかってくる。

なんとなく風切り音が増し、スピードも上がった気はする。

ただ、それだけだ。

よく見ていれば十分躱せるし、当たらなければいいだけなのでそれほど危険は感じない。

むしろ、腕からの出血は増えているようにも見える。

大きくなって血流がアップした上に、こちらにラッシュをかけてきたせいで腕からの出血量が増えたのかもしれない。


“イケオジすげえけどゴブリンキングとまらねえ”

“これ、ゴブリンキングが止まらなきゃ勝ち筋なくね?”

“修様~!”

“スピード全然落ちん。王種桁が違う”

“片腕なくてもこれか”

“怖すぎる”


血を流しているからか大ゴブリンの動きが徐々に遅くなってきた。

もういつでも倒せそうだな。

これ以上時間をかけてもまずいし、そろそろ終わりにするか。

隙だらけの大ゴブリンを袈裟懸けに斬りつける。


「ボギン」


鈍い抵抗とともに皮膚を断ち鎖骨部分に当たった瞬間剣が根元から折れてしまった。


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