第66話 休日出勤
「リリィン~リリィンリリィン~リリィン」
あ、そういえばスマホの音で目が覚めたんだった。
こんな早朝にいったいだれだ?
「はい、もしもし……」
通話に出るとそれは防衛機構からだった。
ダンジョンでイレギュラーのモンスターが出てきてしまったらしく近くにいそうな職員に呼び出しをかけたらしい。
「はい、わかりました」
通話を終え凜に事情を説明する。
「え~せっかくりんたろ~といっしょにごはんだったのに~」
「こういうことってよくあるんですか?」
「あんまりないかな~。今までに4回だけ呼ばれたことあるけど~」
「そうなんですね。じゃあ、本当に緊急なのかもしれないですね。俺、まだお酒が残ってる感じなんですけど大丈夫かな」
「他の職員もいるだろうし大丈夫でしょ~。せっかくだからわたしも一緒に行ってあげる~」
色々ありすぎて混乱状態と言っても過言ではないけど、仕事は仕事だ。どうやら警察に出頭する感じでもないし自分の役目は果たさないといけない。
2人で急いで準備を済ませ防衛機構へと出社する。
足がふらつくほどではないけど、結構残ってるかも。
二日酔いが酷い。
休日出勤があるなら、これからは深酒は控えた方がいいな。
いや、休日出勤が無くても控えた方がいいな。
防衛機構へと着くと、既に何人かの職員が集まっていた。
話を聞くと、時間も時間なので実働部隊は、ほとんど事務所には残っておらず管理部からすぐに集まれそうな隊員へと連絡があったとのことだ。
本来俺は近くの寮にいるはずだから呼び出し対象になったんだな。
イレギュラーの影響で地上への氾濫が起きないよう早急に対応が必要とのことだった。
急いで装備を整えなおす。
「りんたろ~さっさとおわっちゃお~」
俺は初めての事で勝手がわからないけど凜はかなり落ち着いているようだし大丈夫なんだろう。
既に先発隊はダンジョンに入っているとのことでその場にいた隊員たちとダンジョンへと急ぐ。
「りんたろ~、ちょっとまって~」
凜が苦しそうにしているけど、実は俺もかなり苦しい。昨日あれだけお酒を飲んでいたんだ。全力で走って苦しくないはずはない。
この緊迫感が無ければ吐いていてもおかしくはない。
何とか遅れることなくダンジョンへと到着したが、入り口周辺はいつもと変わりなさそうだ。
地上へモンスターが溢れた形跡はないので、先発隊の人たちが押しとどめてくれているのかもしれない。
隊員が一団となってダンジョンへと降りていく。
降りた先にはモンスターも先発隊も見当たらない。
もっと奥か?
そのままダンジョンの一階層を進んで行くが、特別変わった様子もない。
「よし、このまま2階層へと向かうぞ」
一団の先頭を歩いている隊員の掛け声で2階層へと降りていく。
「この盾は、すべてを護る絶対の擁壁。あらゆる敵を弾き、我に光の加護を授けよ。我は拒絶し我は決意す。『マジックシールド』」
階段を降りはじめると、隊員達の魔法の詠唱とともにモンスターたちの声が聞こえてきた。
「各自援護に入るぞ」
その声に即座に反応し、詠唱を開始する。
ここからでは敵が分からない以上これが正解だと思う。
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