第65話 酔い潰れのヒーロー
「え~っと、りんたろうどうしたのかな~」
どうしたもこうしたもない。
「誠に申し訳ありませんでした」
「う~ん、なにが~?」
「この花岡修太朗、どんな咎めでも受ける所存です」
「とがめ? りんたろうなんで土下座なんかしてるの~?」
「それは、もちろん凜さんにとんでもないことを」
「とんでもないこと~? あ~もしかして~。りんたろ~昨日は強引だったから~」
強引……。
その言葉に一気に全身の血の気が引く。
「申し訳ありませんでした~」
「脱がすの大変だったんだから~」
脱がすの? 俺が脱がしたのか? ああああっ。
「煮るなり焼くなり警察に突き出すなりしてください」
「りんたろ~そんなことするわけないでしょ~。昨日は飲みすぎちゃったね~。ウィスキーなんか飲ませてごめんね~」
「いえ、悪いのはすべて俺です。年甲斐もなく申し訳ありませんでした」
「りんたろ~っておもしろいね。大丈夫、大丈夫。問題な~し」
問題な~しって問題しかないと思われるんだけど。
「あ、もうこんな時間。お風呂にも入らず寝ちゃったね~。良かったらりんたろうも軽くなにか食べない?」
「今何時ですか?」
「今4時半かな~。ちょっと早いけどわたしが作ってあげるよ~」
凜が俺にご飯を作ってくれる?
これってどういう状況?
服を脱がせてお風呂に入らず今は朝の4時。
なぜか凜は怒ってないし、朝食を作ってくれる?
全く分からない。
「怒ってないんですか?」
「怒る? なんで~? わたしがりんたろうに怒るわけないでしょ~」
怒ってない……のか?
俺やらかしたんじゃないのか?
やばい。二日酔いも手伝って頭の中を???がぐるぐる回る。
「りんたろ~それより服着た方がいいかも」
「あ、はい」
四十のオッサンが下着姿でベッドに正座。
これほどシュールな図も無いかもしれないけど、起き上がった凜さんの恰好も薄着すぎませんか。
先程死ぬほど反省したばかりというのに目が釘付けになってしまう。
凜のその姿は刺激が強すぎて俺の中のすべてが停止してしまった。
「りんたろ~できたよ~」
はっ!
再び意識を取り戻すと目の前に凜の姿はなかった。
急いで服を着て声の方へ向かうと、そこには朝食らしき食事が2人分と凜が座っていた。
「失礼します」
「どうぞめしあがれ~」
凜に促されるまま食事を口にするが、手作りの味が染みる。
「ところで、ここは……」
「ここは、わたしのおうちで~す」
「凜の……え~っと家族の方は」
「一人暮らしで~す」
うん、完全にアウトだ。
ひとり暮らしの若い女性の家に酔って上がり込んで、なぜかそのまま美味しい朝食をいただいて。
「凜さん、昨日の記憶があまりないのですが俺はどうしてここに」
「それはね~りんたろうが自分で帰れそうになかったから、ここに連れてきてあげたの~」
ああ……。
何で凜はこんなにライトな感じなんだ。
さっきの恰好といい、一人暮らしの若い女性が無防備すぎる。
「申し訳ありませんでした」
「ぜんぜんいいよ~。いつでもきてくれていいから~。結婚したらずっといてもいいよ~」
うん……。これはジェネレーションギャップからくるものなのだろうか。凜に返す言葉が思いつかない。
「…………」
「なんたって、りんたろ~はわたしのヒーローだし」
酔いつぶれた俺がヒーロー? しかもりんたろ~って誰だ? 俺、修太朗だけど。もしかして誰かと勘違いしてる? いや、さすがにそんなことはあり得ないな。
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