第61話 氷の支配者


その後も3階層のモンスターを倒しながら探索を続ける。


「修太朗さん、出ましたよ」

「わかりました。今度は氷でいってみます」


眼前に現れたブロンズゴーレムに向けて魔法を放つ。


「大気に宿る悠久の精霊よ、その零下の息吹を放て。我が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」


氷の弾丸がブロンズゴーレムを捉え、そのまま抉る。


「ガ、ガ、ギ、ギギ」


胸に大穴を開けたゴーレムが機械音のような断末魔を上げ消滅する。


「どうでしょうか。結構うまくいったと思うんですけど」

「はい、修太朗さん。さすがですね」

「ありがとうございます」


やっぱり魔法って常識では測れないものなんだな。

固定観念に縛られず魔法を使うことが肝要なのかもしれない。


「た、隊長。あれ……」

「そうですね」

「氷でブロンズぶち抜きましたよ」

「そう見えましたね」

「いやいやいや、おかしいですって。氷ですよ。水から出来た氷でなんでブロンズ撃ち抜けるんすか」

「花岡さんですから」

「そんな、花岡さんは世界の常識すら凌駕するんすか?」

「そうかもしれないですね」

「もしかして、風とか水でもいけちゃうんじゃ」

「花岡さんならあるかもしれないですね」

「…………無茶苦茶っす」


“ええええええ~氷でブロンズぶち抜いた”

“やばい。意味が分からん”

“氷の支配者”

“え? 氷ってそんなに硬いのか?”

“氷を超速で飛ばせば銅をも穿つ……のか?”

“いや、ないないない”

“修太朗属性相性完全無視”


「修太朗さん、いい感じです。カメラ映え最高です」

「そうですかね」


桜花さんはカメラ映えとか言ってくれるけど、俺がカメラ映えするとは思えない。まあ2体をスムーズに倒せたのがよかったのかな。


「修太朗~どんどんいくよ~」

「はい」


特に消耗もないのでそのまま先へと急ぐ。

急ぐといっても、和やかな雰囲気で会話を楽しみながら歩いているので、ちょっとした散歩といった感じだ。

危険なはずのダンジョンをこんな雰囲気でいけるとは後藤隊がいかに凄いかという事だろう。

本当に俺は恵まれてる。

優しい上司に先輩。

あれほど憧れていた防衛機構は俺が思っていたよりずっと楽しい。

それは、きっとこの後藤隊に入ることが出来たからだ。

顔だけはどうしようもないけど、人生は何が起こるか本当にわからないものだ。


「はい、は~い。修太朗~。ゴーレムさんですよ~」

「あれ? ブロンズゴーレムと少し色が違うっぽいですね」

「あれはね~アイアンゴーレムで~す」


たしかに鉄っぽい色をしている。

あれがアイアンゴーレムか。

見た目はブロンズゴーレムと色が違うくらいで大差ないようだ。

初見とはいえブロンズゴーレムとはもう戦ったし問題なさそうな気もする。


「修太朗さん」

「陸人さん、どうかしましたか」

「よかったら、今度は水か風系魔法で倒してみてくれませんか?」

「風か水ですか? わかりました。やってみます」


なんとなく、水と風はアイアンゴーレムと相性が悪そうに思ってたけど、陸人さんが言うなら大丈夫なんだろう。

やっぱり、まだまだ固定観念に囚われてるな。

魔法は、固定観念に囚われずに自由にだ。


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