第44話 剣聖?


「大仁田さんどうにかなりました。ありがとうございます」

「…………」

「え~っと、何かまずかったですか」

「いや、まずくないっす。全く問題ないす。いや、問題ないというか……」

「花岡さん、すご~い。あっという間に~。それに花岡さんの『ギリスマティ』ってすごくないですか~。わたしあんなに濃い緑に発光してるの見たの初めてですよ~」

「初めて? あ~もしかして」


やってしまった。あれほど北王地さんと訓練したのに、初めてのゴブリンを前にして高ぶってしまって魔力の調整を怠っていた。

ただ、自爆した感はないので無意識下で多少加減はできたのかもしれない。

あぶない、あぶない。

いきなり爆死とか怖すぎる。

テンション上がりすぎて自分の事が見えなくなってた。

次からは絶対に気を付けないと。


「すいませんでした。以後気を付けます」

「いや、いや、いや。全然謝るようなことじゃないですよ。むしろこのまま行ってください」

「えっ? そうなんですか?」

「そうですよ。俺たちの目的はモンスターを倒すことですから」

「なるほど」


たしかにさっきは上手くゴブリンを倒すことが出来たと思う。

次からは意識して、さっきと同じか、少し抑えた出力で魔法を発動できればいいのかもしれない。


「花岡さん……事前の情報通りというか、想像以上ですね」

「隊長、どうかしましたか?」

「いや、なんでもないですよ。ふふっ」


“ちょっとまって、なんで謝ってんの?”

“なんかここだけ新人ぽくない?”

“まさか、演出でしょ。あれで新人はない”

“謙虚、紳士キャラ”

“だけど、あんなの他の隊の配信でも見たことないし、本当に新人じゃないか?”

”剣聖、イケオジ、紳士キャラ。情報濃いな“


今回、大仁田さんに倣って剣を使ってみたけどまだ、他の魔法は使ってみないと勝手がわからないので可能であれば次に使ってみたいな。


「花岡さん、さっきの戦闘は素晴らしかったんですけど」

「喜田さん、なにかまずかったですか?」

「いえ、問題といいますかカメラで追うのがギリギリでした」

「すいません。俺が突っ走ったせいですね」

「花岡さんは何も悪くないんです。ちょっと規格外……」

「え~っと、なんですか?」

「いえいえ、がんばってくださいね」

「ありがとうございます」


やっぱりこの隊の人たちはいい人ばっかりだ。慣れない俺にやさしい声をかけてくれるし、やりがいを感じる。


「隊長、花岡さんって身体強化特化ってわけじゃないっすよね」

「そうね、たぶん違うと思います」

「マジすか。大魔導士ヤバいすね」

「ええ、ヤバいですね。ふふっ」


モンスターを求めて探索を再開することになったけど、相変わらず喜田さんはカメラをこちらに向けている。

多分新人紹介の意味を込めてこちらを撮ってるんだと思うけど、視聴者数が減るんじゃないかと心配になる。

新人の四十男のデビューに需要があるとは思えない。特に俺だし。

それにしても、ダンジョンっていうのは本当にゲームのダンジョンみたいだ。

座学で習った知識によるとダンジョンには階層があるそうで、基本的には下に行くほど強いモンスターが生息しているらしい。

倒しても倒してもその数がゼロになることはないようなので生息という言葉が正しいのかもわからない。

さっき戦った影響で体温が上昇はしているけど、太陽がないせいかダンジョン内は地上の温度よりも少し低い気がする。

装備を身に付けているので丁度いいくらいだ。

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