第43話すごい剣
次は俺の番だ。
話を聞いてみるとゴブリン程度なら初級魔法で十分いけるらしい。
魔法も火系は意図的に外していたらしい。
火系は威力は望めるけど、燃え広がったりしてダンジョンでは使い勝手が悪いそうだ。
よほどダメージを与えたい敵の場合は使用することがあるらしいけど、使用頻度は高くないとのことだ。
これも実戦の場数を踏んでいる皆さんだからの金言だ。
俺は普通に『ファイア』を使おうかと思ってたので危なかった。
それに卒業試験では『マジックシールド』ばかり使っていたけど、あれも経験不足としか言いようがない。
今思い返してみると俺も攻撃魔法を使った方がよかったのかもしれない。
探索を再開するとまたすぐにゴブリンの一団に出くわした。
ダンジョンにモンスターがいるのはわかってたつもりだったけど、明らかに卒業試験のダンジョンよりも密度が濃い。
定期的に間引かなければ溢れ出るのも納得だし、改めて防衛隊の活動に感謝だ。
今まで普通の生活は、無条件に享受できていたわけではないのを痛感してしまう。
「花岡さん、俺が先に行きましょうか?」
「いえ、とにかくやってみます。ダメだったときはお願いします」
「まかせてください」
いくぞ!
今まで魚より大きな生き物を殺生したことはないけど、ここでやれなきゃ防衛機構に入った意味がない。
「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」
気合で高ぶっているおかげで厨二的な詠唱も全く躊躇なく口にすることが出来た。
使えるのか心配だったけど、身体が濃い緑色に発光しはじめ、全身に力が漲ってくるのが感じられる。
確実に『ギリスマティ』が発動している。
「あれ? 花岡さん?」
大仁田さんがなにか言おうとしてみたいけど、もうすでにゴブリンがこちらを認識してる。今は目の前のゴブリンに集中だ。
支給された剣を手に取り先ほど大仁田さんが見せてくれた立ち回りを頭に思い描きながら、ゴブリンへと駆ける。
普通に走るのとは全く違う加速感、周りの景色が高速で流れていきゴブリンとの距離は一瞬でゼロになる。
速い!
大仁田さんの動きを見て速いのわかっていたけど、自分で使ってみるとあまりの速さに感覚が追い付かない。
「花岡さん、速すぎっ」
それでもモンスターは待ってはくれない。ゼロ距離から手に持つ剣を振るう。
『ギリスマティ』の効果で手に持つ剣が軽い。
普通に包丁でも扱うかの如くスパっといった。
一瞬刃がゴブリンの肉と骨を断ついやな感触が手元へと伝わってきたが、あっさりと両断することに成功しその感覚もすぐに消えた。
モンスターを倒すことに成功した!
いや、まだ一匹だけだ。
残りのモンスターも倒さなきゃいけない。
すぐに視線を周囲へと向け、他のゴブリンへと迫り先ほどと同じように斬り伏せていく。
こんなに本格的な剣を振るうのはもちろん初めてだけど勢いにまかせて振るうだけでゴブリンを両断することが出来ている。
この剣すごい。
この剣があれば素人の俺でも剣豪のごとく立ち回ることが出来る。
さすがは防衛機構の支給品だ。
とにかくゴブリンからの反撃にだけ意識を集中し、どんどん斬り伏せていく。
どうやらこの剣に『ギリスマティ』があれば、ゴブリン程度なら問題なくいけるらしい。
「ふ~、なんとか倒せました」
終わった。
もう周りにゴブリンの姿はない。
緊張と高揚感からか、ゴブリンを殺したことの罪悪感よりも、ほっとした感情が勝っている。
一人でやれたし、初めてとしては上出来なんじゃないか?
“いや、いや、いや、いや、いや、いや”
“えっ? どういうこと?”
“なにいまの”
“え⁉ 早送り?”
“一人で瞬殺”
“俺、瞬殺って意味を知ったかも”
“イケオジやべ~!”
“もしかして剣聖⁉”
“カメラ追い切れてなかった”
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