第41話 ゴブリン


「花岡さ~ん。間違いでも手違いでもないですよ~。今日から花岡さんもトップダンジョン配信者の仲間入りで~す」


小谷さん、心を読まないでほしい。

だけど心の準備が何もないままいきなりデビューすることになってしまったらしい。

とんでもない出来事に現実感が薄いけど、これも仕事の一環なのは理解できるので、ここは覚悟を決めるしかない。

流石にスライム素通りはニーズがないらしく、もう少し進んでから配信スタートとなるらしい。

ダンジョン探索にはセイバーギア呼ばれる装備が支給される。

その中には剣も含まれてたけど魔法じゃなくてこれで戦ったりするのか?


「小谷さん、俺剣とかは使えないんですが」

「花岡さんは強化魔法使えたりしないんですか~。強化魔法が使えたら技術は後からどうにかなりますよ~」

「強化魔法ですか」


確かに初級、中級、上級それぞれに身体強化魔法というのが載っていた。

使う機会がなかったので試したことはないけど、初級なら俺でも使えるはずだ。


「それにセイバーギアは直接攻撃以外にも魔法の威力も上げてくれたりするから~。わたしのギアはこれ」


小谷さんの手には少し変わった形の短剣が握られている。


「短剣ですか?」

「これはね~陣風の短剣って言って風属性の魔法をブーストしてくれるの」

「そうなんですね」

「うちだと大仁田くんが武器による直接攻撃が多いから、参考にするといいよ~」

「はい、わかりました。大仁田さんよろしくお願いします」

「俺一人だと前衛結構きついんで、花岡さんも一緒に戦ってもらえると助かるっす」


スライムを避けながらダンジョンの奥へと進んで行く。

まだほんの少し進んだだけだけど、卒業試験で臨んだダンジョンよりも随分広い。

東京の地下にこんな場所が広がっているとは驚きだな。

地上にここのモンスターが溢れたらパニックどころじゃすまない。

実際にダンジョンに潜ると防衛機構の存在がどれだけ重要かわかる。


「花岡さん、いましたよ」

「あれはゴブリンですか?」

「そうで~す。人類の敵ともいえるゴブリンで~す」


まだ少し距離があるけど前方にはモンスターが数匹見て取れる。

その姿は映像で見たことのあるゴブリンそのものだ。


「それじゃあ皆さん配信スタートしますよ」

「みなさ~ん、こんにちは~。後藤小隊の配信はっじっまるよ~」


場違いとも思える小谷さんの声で俺の初めての戦闘と配信が始まった。


“おおっ、はじまった~”

“まってた”

“いきがい”

“りんちゃんのこえ~かわええええ”

“ゴブリン?”


「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」


大仁田さんの発動した魔法は初級身体強化魔法『ギリスマティ』だ。

大仁田さんの身体がうっすらと緑色の光を放っている。

大仁田さんの武器は俺のよりも二回りくらい大きい斧だ。

所謂、戦斧というやつだろうか。

若くて体力があるからあんな大きな武器を使えるんだろう。


“陸人く~んがんばって~”

”大仁田いけ~”

”速攻~“


大仁田さんがゴブリンの一団に向け走り出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【作品のフォロー】【評価☆☆☆】で応援してもらえると嬉しいです!

※作品画面の下にある『おすすめレビュー』の『☆で称える』でお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る