第35話 卒業

「いや~あの時の花岡さんはヒーローみたいでしたよ」

「それを言うなら田淵さんだって」


2人共無事試験を終えたことで気分も上がりお酒がすすむ。


「ここだけの話、私戦うのは苦手なんですよ」

「またまた~」

「いや、まじめな話、適性が無かったから、この年で学校の講師なんです」

「そうなんですか? でも今日は大活躍でしたよ」

「だから花岡さんおかげなんですって」


田淵さんで適性が無かった?

今日三匹のトラモンを倒したのに?

防衛機構はそんなに厳しいのか。

俺がこれから行くのはそういうところだという事だろう。


「防衛機構で五年は働いたんですけど子供が出来てから限界を感じまして、異動願を出して今の職に」

「そうなんですね」

「ええ、十年以上になりますがこんなのは初めてだったんで焦りました」

「なにはともあれ、無事に帰れてよかったですよ」

「そうですね。それはそうと、ダンジョンで途中になってた恋バナはどうなりました?」

「あ~~田淵さん聞いてたんですか?」

「いや~さすがに女の子達が、盛り上がってましたし、いけないとは思いながらも聞こえてました」

「そうですよね」


密閉されたダンジョンで聞こえないはずないよな。


「で、どうなんですか。せっかくだし花岡さんの武勇伝聞かせてください」

「武勇伝なんかありませんよ」

「花岡さんにとっては当たり前すぎる話でしたか」

「いや、いや、いや。そんなバカな。俺独身ですよ。この顔ですよ。ないですよ。本当にないんです」

「やはり、花岡さんともなれば、そういったことを人に話したりはしないんですね。勉強になります」


何やら、盛大に勘違いされてる気がするけど、お酒の席での与太話だし気にすることもないか。

最近、同世代の男性とお酒を飲む機会が無かったので、田淵さんと飲むのは楽しかった。

田淵さんの家族も待っているので1時間半ほど飲んで解散となったけど焼き鳥も美味しかったし当たりのお店だったな。

焼き鳥 鳥男爵。

また機会があったら利用したいお店だ。


                        §


言われていた通りダンジョンでの卒業試験を終えた翌日に早速結果が発表され、俺は無事合格することが出来た。

そして筆記試験に不安のあった陣内くんも合格することが出来た。

そして何事もなく最終日を迎え、卒業式となった。


「え~みなさん、今日で卒業となりますが、今後の防衛機構の職員としての活躍を期待しています。ただ命より重いものはありません。絶対に無理は禁物です。私からの最後の教えは、『危なくなったら逃げろ』です。死んだら次はありません。逃げても次があります。そのことだけは忘れないでください」


最後に北王地さんからありがたいお言葉を頂いて、本当に卒業となった。

俺も北王地さんの心を胸に防衛機構で頑張ろうという決意を新たにした。

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