第33話 オッサンは男前
「私も負けてられません。「大気に宿る悠久の精霊よ、その零下の息吹を放て。我が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」
氷の弾丸が、先ほどダメージを与えたモンスターの頭を撃ち抜く。
やった。さすがは田淵さんだ。
これであと2匹。
「田淵さん、さすがです」
「いや、本来こんな楽にはいきません。すべては花岡さんのおかげですよ」
俺は魔法の盾で攻撃を防いでるだけだし、どう考えても田淵さんのおかげだけど。
2匹減ったからと言って、まだ余裕があるとまでは言えない。
それでも3匹から2匹に減ったことで視野が広がった。
魔法の盾も一枚余っている。
意識を集中させ、魔法の盾を動かしモンスターの1匹を二枚の盾でその場へと留めおく。
「そう使いますか。さすがです。「大気に宿る悠久の精霊よ、その零下の息吹を放て。我が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」
再び発動した氷の弾丸が正確にモンスターの頭部を捉える。
「ギャン」
「もう一発! 『アイスバレット』」
おおっ、すごい。これで残るは一匹。
これっていけるんじゃないだろうか。
死を覚悟して臨んでみたけど、田淵さんが優秀だからかトラモンを普通に倒せている。
見た目はトラっぽいけど、その悲鳴は犬っぽい。不思議だけど、これがモンスターたる所以か。
まだ三枚の盾は有効だ。
魔力を多めに注いだからかまだ消える様子はない。
三枚を動かして最後の一匹を囲んで動きを完全に封じる。
「はは、イビルキャットが、成すすべなしですか。「大気に宿る悠久の精霊よ、その零下の息吹を放て。我が求めに応えて、ここにその姿を現せ! 『アイスバレット』」
動きを止めたトラモンの頭に氷の弾丸が命中する。
トラモンの正式名称はどうやらイビルキャットらしい。
「これで終わりです」
二発目の氷の弾丸が正確に頭を撃ち抜きモンスターが消滅した。
さすがは田淵さん。
命中精度が凄い。
「終わりましたね。これで終わりですよね」
本当に倒してしまった。
「はい、もうだめかと思いましたが、すべては花岡さんのおかげです」
「いや、いや、俺は攻撃を防いでいただけです。しとめたのは田淵さんじゃないですか」
「花岡さん、あなたって人は……。花岡さんやっぱり男前ですね」
「急にどうしたんですか?」
俺が男前? 同世代の男の人にそんな風に言われたのは初めてかもしれない。なんで急にそんな話になるのかはわからないけど、なんとなく気恥ずかしい。
「いや、本当に花岡さんに命を救ってもらいました。助けるつもりが助けられましたよ」
「いや、いや、さすがにそれは言い過ぎです。田淵さんがいてくれてよかったです」
結果として、無事だったけどあの状況ですべての試験官が田淵さんと同じ行動をとれるかと言われれば、それはわからない。田淵さんがいてくれたから俺も助かったんだ。
「いえ、それより約束通り、帰って一杯やりましょう。私がおごりますよ」
「じゃあ、遠慮なく」
戦いを終え試験官である田淵さんのマップを手に、地上への道を戻ることにする。
何度かホーンラビットが出現したが、田淵さんが優秀なので二人でも問題なく倒す事ができ、少し時間はかかったけどスタートから五時間ほどで地上へと帰ってくることが出来た。
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