第31話 オッサンは強がる
「陣内くん達は逃るんだ」
「は? オッサンは?」
「俺はここに残るよ」
「花岡さん?」
「市川さんも逃げてください。俺は後から追いかけますから」
「そんな……」
「大丈夫ですよ。これでも俺、大魔導士ですから。それにこういう時は年長者が残るものですよ。さあ急いでください」
「無理ですよ。一緒に逃げましょう!」
「いや~恥ずかしい話なんですが、実は久しぶりに長時間歩いたせいか足が痛くて走れそうにないんです。すいません。後からゆっくり歩いて戻りますから大丈夫ですよ」
「花岡さん、バカなことを言ってる場合じゃないんです。私が食い止めますからあなたも早く!」
「いや~~ピンチですね~」
「なにを……」
「ピンチをチャンスに、なんて。失礼ですがたぶん試験官さんも俺と同じくらいの年ですよね。若い人達のためにってカッコよくないですか? ここはオッサンパワーの見せ所でしょう」
「オッサン、冗談言ってる場合じゃねえぞ」
「陣内くん! かわいい奥さんが待ってるんでしょう。運命の人なんでしょう。市川さんも運命の人がきっと待ってます。早くいってください!」
「だけどよ!」
「こんな時くらいオッサンにカッコつけさせてください」
「…………わるい。絶対帰って来いよ」
「大丈夫ですよ。女の子達を頼みました」
「わかってる!」
「花岡さん! 陣内くん?」
「俺達がいても役に立たない。みんな行くぞ!」
「で、でも」
「別所さん、大丈夫ですよ。元サラリーマンを舐めちゃだめです。このくらいの修羅場は何度も潜り抜けてるんです。楽勝ですから」
「花岡さん……」
「大丈夫です。オッサンの意地を見せてやりますから」
自分でも、何を言っているのかよくわからないところもあるけど、今はこれが精いっぱいだ。
精一杯強がって、笑顔で別所さん達の背中を押す。
「花岡さん、わかりました。私が道を開きます! 悠久の大地に座し全ての礎たるその力を貸したまえ。その強固な意志をここに示せ『アースフィスト』」
試験官が魔法を放ちモンスターが左右に割れ、道が出来る。
「行ってください!」
陣内くん達が走って、奥へと抜ける。
「こっちだぞ! こっちだ!」
声を上げトラっぽいモンスターの注意をひく。
名前がわからないので、見た目と違ってちょっとかわいいけどトラモンとしておこう。
初見のモンスターに俺が出来ることは限られている。
ダンジョンでまだ一度も使っていない攻撃魔法はここで使うべきじゃない。
このダンジョンで何度か使用した『マジックシールド』でモンスターの動きを抑える。
「この盾は、すべてを護る絶対の擁壁。あらゆる敵を弾き、我に光の加護を授けよ。我は拒絶し我は決意す
『マジックシールド』」
『マジックシールド』に今まで以上の魔力を込め、前面ではなく陣内くん達の背を護るように展開する。
これで彼らが逃げる時間くらいは稼げるはずだ。
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