第12話 花岡ですけど
マジか……。
周囲は炎の発現に沸き上がっている。魔法という超常的な力が発現するのを目の当たりにして、周囲からは感嘆の声が上がるが俺は別の意味で声を漏らしてしまった。
これが『ファイア』の詠唱か。
俺がこれを。
四十歳の俺がこれを。
たしかにこれは俺が心より望んでいた魔法だ。
俺が小中学生の頃にイメージしていた魔法そのものだ。
詠唱の文言が、小中学生のイメージするそれだ。
正直言って恥ずかしい。
もしかして魔法って全部こんな感じの詠唱文があるのか?
たしかにカッコいいけど、詠唱している自分をイメージしてみると全身が熱くなってきた。
「オオオオオ〜スゲ〜カッケ〜」
陣内くんは純粋に感動しているようだが、俺は年齢と共に純粋さを失ってしまったのかもしれない。
だが、これを乗り越えなければ魔法を使うことができないのであればやるしかない。
こうなったら魔法を発現することだけに集中するしかない。
「こんな感じだ。『ファイア』は基本的な魔法だからジョブに関係なくみんな使えるはずだ。威力に差はあるかもしれんがな。それじゃあ、順番にやってみるか。意識は的に集中しながら詠唱だ。間違っても人に向けて放つな。大事故が起こるぞ! 詠唱中は絶対に意識を逸らすな!」
たしかにあれを人に向けて放とうものなら大惨事となるだろう。とにかく集中だ。
メンバーが出席番号順に『ファイア』の詠唱を開始していく。
「やった!」
「おお〜」
「これが魔法……」
「すげ〜やったぜ!」
生徒たちが順に発動させてみんな成功していく。
緊張してきた。まさか俺だけ発動しないなんてことはないよな。
だって魔力999だもんな。頼むぞ。
俺の順番が来たので、羞恥心を捨て祈るような気持ちで詠唱を始める。
「ん、ん、んっ。この現世に住まう精霊よ、我が盟約に従いここにその力を示せ。原初の炎よ舞い踊れ! 『ファイア』」
俺が詠唱を終えると、魔法が発動して的の周りに炎が現れ的が焼け落ちたが、他の生徒とは大きく異なる部分があった。
「へっ……」
「なっ……」
「あ……」
周囲の生徒が一斉に息を呑むのがわかった。
俺の発動した『ファイア』の炎がデカすぎる。
他の生徒たちの炎はだいたいサッカーボールぐらい。それに対して俺が発動した炎の大きさはゆうに一メートルを超えている。
しかも炎の色がおかしい。
他の生徒たちのの炎はオレンジ色の炎なのに俺の放った炎は蒼い。
文系の俺の知識によると蒼い炎の方がオレンジの炎より高温だったような……。
一メートルを超える蒼色の炎が的と共にそれを支えていた台と支柱まで完全に消し炭にしてしまった。
「あ、あの〜。俺悪くないですよね。言われた通りに詠唱しただけですよ。もしかして弁償とかしないとダメなんですか?」
「あ、ああ。それは、大丈夫なんだが。花岡さん、あんた何者?」
「いや、何者と言われて花岡ですけど」
「それはわかってるんだけども、本当にあんたただの生徒か? 今のがただの『ファイア』ってありえないぞ。『フレイム』でもあんな色にはならん。上級の『メルトファイア』並だぞ。生徒が使えるレベルを超えてるぞ? いやマジであんたなんなんだ?」
「なんなんだと言われても、一生徒の花岡ですとしかいいようが」
先生の口ぶりからしてやっぱりあの炎は異常らしい。
だけど、なんで……。
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