第11話オッサンは大魔導師

翌日、登校すると中塚さんたちが元気に挨拶してくれた。

やっぱり、朝から元気に挨拶されると気持ちがいいものだ。


「オッサン、今日から本格的に授業だな。俺はストライカーだから攻撃魔法に適性があると思ってるんだけど、オッサンはどうなんだよ」

「どうって?」

「オッサンの適正はなんなんだよ」

「いや、適正って言われてもよくわからんが」

「オッサンもしかして全然予習してきてないのかよ」

「予習、いや、まあ」


陣内くん、予習してきたのか。

俺は中塚さんたちとカフェして気分が良くなって缶酎ハイを飲んで寝てしまった。やばいな。


「ジョブによって適正があるんだよ。俺はストライカーだから攻撃魔法に適正があるはずなんだ」

「そうなんだ」

「ところでオッサンのジョブはなんなの?」

「え……ジョブ?」

「そう、ジョブだよ。別に隠すようなもんでもないだろ」

「あ、そ、そうか、え〜っと、だい……」

「え? 悪い聞こえなかったぞ」


これ言っても大丈夫なのか? まあ仲間だし、講義が進めば遅かれ早かれ知られるよな。


「えっと、大魔……」

「はっ? なに?」

「大魔導師だけど」

「は⁉ 俺の耳がおかしくなったのか? もう一度頼む」

「だから大魔導師」

「いやいや、オッサン。俺のことからかってるんだよな。冗談はいいから本当のことを言えよ」

「いや本当に大魔導師」

「…………マジ?」

「うん、マジ」

「そんなジョブあるのかよ」

「うん、あるみたいだね」

「なんかすごそうだな」

「そうかな」


やっぱり陣内くんでも大魔導師のジョブのことは知らないみたいだ。たしかにすごそうな名前ではあるけど名前負けしてないといいけど。


「教科書にはそんなジョブのってなかったぞ。一番近いので魔法使いか? いや近くもないか。魔法使いは、ほとんどの魔法に適正のあるオールラウンダーらしいけど」

「魔法使い? 俺のご先祖様がそうだったみたいだけど」

「それはそれですごいな、オッサン。魔法使いはレア中のレアだぜ」

「陣内くん、俺オッサンには違いないけど花岡ね」

「ああ、わかってるってオッサン」


陣内くんには言うだけ無駄かもしれない。まあオッサンでもいいか。十九歳からみたら本当にオッサンだしな。

陣内くんと話しながら最初の授業が行われる運動場へと向かうことにする。


「それじゃあ、さっそくだが魔法の実地訓練だ。まずは基本中の基本。火の初級魔法だ。その名も『ファイア』だ」

「そのまんまじゃね〜か」

「誰だ? 今突っ込んだやつは。魔法に名前をつけたのは俺じゃないんだから俺に突っ込んでも無駄だぞ」

「ははは」


先生とのやり取りで笑いが起きる。

この先生、生徒とのコミュニケーションをとるのがうまい。

和んだ空気の中、初めての魔法による訓練が始まった。

防衛隊の仕事は基本的にダンジョンの魔物を狩るのが主な仕事だが、溢れた魔物を地上で殲滅することもあるらしい。

俺はよく知らなかったけど、色々と制約はあるものの魔法は地上でも普通に使えるらしい。


「基本、集中して教科書に書いてある詠唱をそのまま唱えれば、適性さえあれば発動する。昔と違ってちゃんとしたマニュアルがあるから楽なもんだ。それじゃあやってみるぞ」


そういうと先生が的に向けて詠唱を開始した。


「この現世に住まう精霊よ、我が盟約に従いここにその力を示せ。原初の炎よ舞い踊れ! 『ファイア』」


『ファイア』の詠唱が終わると同時に的の周囲に炎が発し、そのまま的が燃え上がった。


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