第7話 退職日


「花岡さん、頑張ってください。応援してます!」

「ああ、野口さん今までありがとうな」

「辛くなったらいつでも戻ってきてくださいね。待ってます」

「はは、音を上げないように頑張るよ」


今日が勤務最終日だが、同じ部署の野口麗花さんがこんなに別れを惜しんでくれるとは思わなかった。

四十歳独身男なんか若い女の子には奇異の目で見られてるかと思ってたけど、どうやら嫌われてはなかったらしい。


「それじゃあ、お疲れ様でした」

「はい、いつでも連絡くださいね」


社交辞令だとしても、そんなふうに言ってくれると気持ちよく退社できる。


「花岡、いつでも戻ってきていいからな。それに嫁さんの件も俺にまかせとけ。お前が戻ってきた時にまだ独身だったらどうにかしてやるよ」

「はは……ありがとうございます。帰ってこなくても済むようにがんばります。最初から帰ってくるつもりじゃ心が折れちゃいそうなんで、不退転の気持ちで行ってきます」

「おう、向こう行ったら急にモテて変なの掴むなよ。お前女慣れしてなさそうだから俺はそれが心配なんだよ」

「心配かけてすいません。だけどそんなことあり得ませんよ。今までモテなかったのに急にモテたりするわけないじゃないですか」


課長も相変わらずだけど、あいさつに行ったとき部長も同じようなことを言ってたな。

あるはずないのにやっぱり上長からすると四十男の独身は心配になるんだろうな。

そういう意味では迷惑かけたかも知れないけどいい会社だったな〜。

この会社を辞めて行くんだから、防衛機構では石にかじりついてでもやっていくしかない。

俺は会社のみんなに挨拶を済ませてから会社を後にする。

別れ際、野口さんは体調がすぐれなかったようで奥に下がってしまっていた。それだけが心残りだけど、女の子達が付き添ってくれていたようだし心配いらないか。


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「麗花、いいの? このままじゃ、なにも伝わってないんじゃない」

「いい。花岡さんみたいな大人の男の人にとってみれば私なんて。だって花岡さんモテるでしょ」

「確かに渋いもんね。クールで女にデレデレしたりしないところとか、大人の男って感じよね。あの風貌で結婚してないんだもんね。理想が高いのかプライベートでは選び放題なのかもね」

「でしょ。それが防衛機構で魔法使いって、もう違う世界の人になっちゃった感じで、手が届きそうにないから」

「そうね。それじゃあ今度二人でコンパにいきましょうか」

「そうしよっか。絶対いい男捕まえてやる~」


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周りは結構転職を繰り返しているやつもいるのに、二十年近く勤める事が出来た。今になって思い返すと俺は会社にも同僚や上司にも恵まれたな〜。

唯一の心残りは、できることなら一度はオフィスラブとかしてみたかった。

それであわよくば結婚とかも夢見ていたけどかなわなかったな。

まあ、明後日から俺の人生が変わる。

俺の長年の夢がかなうんだ。

もう、オフィスラブだの結婚だのと言ってる場合じゃない、俺は魔法使いになってみんなを護れるヒーローになる。

でも、正直なところ一度は女性とお付き合いとかしてみたかったな〜。

防衛機構の人たちは、俺と違ってエリートばっかりだろうからモテるんだろうな。

きっと女性もモテる人ばかりだろうから今まで以上に相手にされないだろう。

また婚期が遠のいたか。

いやもともとそんなのは無かったな。

家に帰ったら缶酎ハイを飲むか。

うん、そうしよう。


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本日2話目

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